ギターの基本はキャッチボール?

 野球の基本はキャッチボール、という話があるらしい。そうではなくて素振りだ、という意見もあるだろうが今のところきいたことがない。ではなぜ「キャッチボール」であって「素振り」ではないのか、すこしばかり考えてみた。
 キャッチボールはいくつもの基本動作の組み合わせです。ボールをよく見て、軌道を想定し、その場所に移動して、高さに合わせてグラブを出し、軌道に直交するようにグラブを構え、ボールがグラブに入った時点で、早すぎず遅すぎずグラブを閉じる。そのとき利き腕を添える。受けるだけでもこの程度の基本動作の組み合わせなのだ。
 普通に考えると「ボールを見る」練習、「軌道を予測する」練習、と分けて教えて、マスターする必要がありそうだ。しかし個別に注意することはあれ、とりあえず「基本」としてキャッチボールをやらせてみる。なぜそれが可能か。構成する基本動作ができないと「ボールが受けられない」という現象が現れ、つまり「どこかが悪い」とすぐわかるからである。問題があると分かれば改善するのは比較的簡単だ。教わる方だって素直に従うし、独学であっても、試行錯誤がやりやすい。
 これにたいして「素振り」は、たとえ軸がぶれていようと、ドアスイングになっていようと「とりあえず振れる」というところに問題点がある。少なくとも独学では見逃してしまうポイントがたくさんある。また改善点もよくわからないものだ。よくあるパターンが「金属バットなら打てているからこれでいい」。ボールを打ってさえこう思われることがあるのだ、素振りだけでは何もわかるまい。かといっていきなりボールを打たせると、始めはユルイ球で練習しようねえ、すぐに手打ちになってしまうだろう。(なので「基本」として素振りに時間をかける。)

 というわけで「基本」の大切さをわからせるには「素振り」よりも「キャッチボール」が良い。かくして「野球の基本は」と言われると「キャッチボール」となるわけであろう。

 ギターの話をするつもりが野球の話で終わりそうになってしまった。

 ギターの基本というとき、キャッチボールにあたるものはなく、素振りに近いような気がする。
 というのは、とりあえずギター持って、弦をはじけば音は出るからだ。このときキャッチボールのように「できてなければボールを落とすし、まっすぐ前に投げられない」という分かりやすい現象が出ることはない。それでも素振りくらいフォームが大きく、見てわかりやすければ「空を見て振ってるよ。それじゃボールが見えんだろ」と反省を促すこともできるだろうが、ギターではパッと見てもどこが悪いかわかりにくい。
 なので、バットの握り方。バットの構え方。足の踏み出しに続く腰の回転。まずはわきを締めてからバットを振りだして・・・手首の返しからフォロースルーまで、その間軸はぶれないように、きちんとあごを引いて〜素振りであればこれに相当するものを、ギターのフォームについては、一つ一つ、分かりやすく、丁寧に教えてからでないとホントは素振りもさせられないわけだ。なので独学は危険なのだよ。

 先日書き上げたギターの教則稿「とりあえず弾けるとこまで面倒見ます」(譜面含めてA4五十枚弱)をどういう意図で誰を対象に書いたのか、ようやく分かりやすいたとえが見つかったような気がする。基本的には独学用の本なのだが、ギター講師が知らない/気が付かない基本動作を細かく書いているので、自省する心があれば大抵の講師が教えるよりも優れていよう。
 書いてないことも多いし、実際に見せないと分からないこともあるが、とりあえずやれることはやったという実感はある。その証拠に、書き上げてから今まで、ギターに触れたのは弦を変えるときだけである。つまりもう弾く必要が無くなったと思っているようだ。
 なにしろ正しいチューニングの仕方まで書いてあるのだ。(以前書いていたのは不十分だったので書きなおした。)なぜこうするのか、書いてあるのはこれしかないよ。

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