テンポとリズム

 もし私が軽音楽部の顧問だとして、入部してきた未経験者の適性を測るとしたら、
 縄跳びをやらせるだろう。

 ピッピッピッピと歯切れよく、体のバランスも良ければ、間違いなくドラム。
 歯切れが悪くともそれが「タメ」によるならベース。
 下手ならギター。(露骨に言うと適性がないということだ。)
 キーボードは、さすがに未経験者はありえまい。

 上手いがゆえにリズムセクションに回されてしまったギター希望者には申し訳ないと思うが、そこは思考実験。勘弁してくれ。ようするに高校サッカーでセンスのいいのをFWに回すようなものだ。人材が限られている場合、ボールは一度キーパーに戻して、前線にロングボールをけりこみFWに何とかしてもらうのが効率が良い。MFをやりたくてもFWをやっていただかなければならないこともある。

 かくして体の中にテンポもノリもない人がギター要員として残ったわけだが、実際にバンド組む段階には切磋琢磨していただくとして、パート練習くらいはまじめにやらないとね。
 というわけでトランペット隊を見ていて気が付いた練習を応用する。

 いやさ、トランペットと言えば「マイルス・デイビス」。なので「マイルス・デイビス」ごっこをさせればいいと思っていたのよ。なりきればそれは上達だ。といっても全盛期のマイルスは無理なので、引退直前のマイルスよ。ペットを下に向けてトボトボと歩きながら、ときおり「プッ、プッ」と音を出すマイルスだ。なんてったってまねしやすい。

 真似と言ってもそこはマイルス、あんなタイミングのいい音は出せっこないので、まあ譜割の練習でもしましょう。四分音符=テンポ60あたりで一歩一歩歩きながら一拍ごとに「プ」。飽きてきたら八分で「ププ」三連で「プププ」十六分で「ププププ」。バリエーションつけて「プーププ」「プププー」「ププープ」。付点リズムで「プップ」「ププッ」。これでメトロノームを囲んで輪になって歩きます。おっとギターのパート練習の話でした。「プ」の代わりに「ピン」ですね。ギターはうつむいてはダメですが、トランペットはマイルスのマネして下向いてね。
 するとだな、腹が凹むか実感できるはずなのだな。つまり自分が腹式呼吸をやっているかわかる。さすがマイルス。衰えても後進のことをよく考えている。マイルススクールと言われるほどに有名ミュージシャンを次々と育てた手腕はこんなところにも表れていた。

 なんで歩きながらか、だがようやっとこれを言葉で説明できるようになったのだね。
 「テンポ」と「リズム」を分けて意識する、ことを実感するためなのだわ。
 足がテンポ、息がリズム。(ギターの場合は息でなくて指ね。)
 なので、四分音符でも、歩くのはテンポで吹くのはリズム。これを峻別してないと、リズムがヨレる、ということになるし、他に合せるのができない。(たまたまリズムセクションとテンポがあった時に限られる。)

 かなり無理のある論旨だが、実は私の弱点なのでね。16分が刻めないので体の中でテンポを倍にして8分で刻んでいた。小節の初めから、ならこれでも通用することもあるが、途中からだと確実にヨレるし、テンポをロストする。

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