ロシア芸術狩り

 名古屋フィルがショスタコービッチの8番を演奏したところ、テレビニュースでは
「ロシアの戦争交響曲を演奏」と見出しが付けられ、指揮者に釈明させていた。
 しかもNHKが、である。
 その他国外で活躍する音楽家その他も、ロシアの体制を自分の言葉で批判したうえで辞職するのが当然視されており、日本の学生運動の「非妥協的対決」を思わせる「それ違うでしょ」感漂うものとなっている。

 まだチャイコフスキーの1812年のプログラムを差し替える、ならわからなくもない。短い曲だし色物だからなんとかなるだろう。フランスの侵略に打ち勝ったロシアを表現している曲だから「侵略戦争反対」のメッセージは込められているから、フランス国歌の部分をロシア国歌に置き換えればどうか、という妥協案も面白そうだが。
 しかしながらスポーツ大会からロシア人が締め出されているのはドーピング疑惑とセットとして納得いくが、名指揮者ゲルギエフを解雇するのは心情的には理解するものの、ゲルギエフ、オセチア人(ジョージアとかあの辺)だろ。ワールド・オーケストラ・フォア・ピースの指揮者としては解任されてないようだが。

 この調子で「ロシア文化全部ダメ」となり、チャイコフスキー、ラフマニノフ、プロコフィエフその他の演奏も「自粛」することになれば、それはもはや芸術の破壊だろう。ナチスドイツの後、ベートーベンとモーツァルトは禁止になってないんじゃないかな。ワーグナーは国威発揚に意図的に使われたからしばらく冷却期間を置く必要はあったかもしれないが。

 でもロシアの作曲家でも、ムソルグスキーは許されそうだ。プーチンの頭の一部分を連想させる「禿山の一夜」という曲はやばいが、代表作「展覧会の絵」の終曲のタイトルが素晴らしい。
 「キーブの偉大な門」(ウクライナ語の発音はむしろ「キエフ」に近い)と日本語題が変えられる可能性はあるが、それは大したことではないだろう。

音楽ネタ、目次
ホーム