デジタル・マトリックススピーカー登場

 この手の展示会、私は疫病神かもしれない。
 暇に任せて蓄積した知識量と、脳の処理速度がツッコミを量産する。
 なるほどおっしゃるとおりだ、広告に一文追加しよう、という気になってくれた人がいないのは残念だが。

 それこそ何十年ぶりかで「オーディオ」関連の展示会、東京国際フォーラムに行ってまいりました。
見たいものがあったのですよ。
 鹿島建設のスピーカー、というかサウンドバー。
 担当の方が、提灯記事を書くのが得意そうな人のインタビューに答えて25年前くらいから始めたということを言っておりました。

 だからちゃんと教えてあげたよ。
「似たようなものが35年前に出ていて、アナログ方式ですけどね、自分でも作ったのですがアンプの形式が変わってしまって鳴らせなくなったんです。デジタルで信号処理して作れないものかと期待していたのですが、なかなかでなくて。ネットの記事でこれじゃないかと思って聴きに来ました。」
 「35年前」でかなり驚いた様子で「どこのメーカーですか?「アイワです。」
 何となく納得してくれたように見えたのは気のせい?

 「自分でも作った」がハッタリではないことは、視聴ソースとしてリクエストしたもので明らかだと思う。
「さっきの人、マネー聞いてましたが、同じピンクフロイドのTimeありませんか?」「ぜひ、BeatlesのA Day In The Lifeを聞きたいです。2分48秒から。」
 この鹿島が作ったのは要するにマトリックススピーカーなのだ。本人自覚なかったかもしれないがデジタルマトリックススピーカーである。
 ただし、側面部のスピーカーは明らかにチューニング不足。左右の適当な距離に壁がないとうまく音場が展開しない。説明員の方に「左右で壁が均等な距離にないので、どうしても右に寄りますね」と言うと意外そうな顔をしたので「この人たち、あまり耳は良くないな。」(音が寄る、どころか上下方向の位置が変わる。)
 うん、チューニングがうまくできてないはずだ。ついでと言ってはなんだけど、スピーカーそのものの音はあまりよくない。ピアノって、こんな音しないよ。
 しかしマランツも開発に協力していたということなのに、みなさん何をやっていたのだろう。
(長岡鉄男氏は左右のスピーカーの取り付け角度をどうするか、試行錯誤を繰り返した。だから鉄瓶氏が設計したマトリックススピーカーは壁の影響が少ない。かつ動画再生と組み合わせるにはマトリックススピーカーが最適とか、マトリックススピーカーだとレンジの狭さがあまり気にならないとか、今更ながらその先見性には頭が下がる。)

 それでもクラウドファンディングには応募した。適当な距離に壁があれば、Timeの時計は耳元までやってくる。ではどういう距離がいいかというと、比較したわけではないけどコワーキング用のカプセルくらいかなあ。ということは・・・
「ひょっとしてDVD鑑賞の個室」ベストフィットでは(行ったことないけど)?提灯ライターっぽいのは「ホテルに需要が」とか提案(?)していたが、もっと狭い部屋の方がよくないかい。ひょっとしたらリアルな音場感が受けるかもしれない分野だ。うん、これをきっかけに爆発的な需要が。

 ということを考えつくから、私は疫病神かもしれないというのだ。
(売り上げをどうやって伸ばすか/どう普及させるか、という目標が見えると、倫理観というか通りの良さというか、そんなの第一義的にはどうでもよくなる。)

 でもきっちりと言っといた。
「発表にあるアルミボディの写真を見て心配だったんです。カンカン鳴るんじゃないかって。アルミ単体は振動しやすいですからね。だから銅メッキなんかして振動を打ち消しあうようといったことをします。ところがこのスピーカーの実際にボディを叩くと、コツコツというだけで響かない。オーディオマニアには振動に神経をとがらせる人が多いですから、」そこを突けば効く。
「鹿島建設の制震技術を投入し、不要振動を極限まで排除しました!」
 意識してそう作ってなくたっていいんです。鹿島の技術者が設計したんでしょ。無意識的に地震に耐えて/受け流すように作ってますよ。

 おまけ、今回得た豆知識。
 展示会ではアナログレコードがとても多い。ハイエンドの世界ではまだまだアナログなのかな、と思ったが、実は
「ストリーム音源を使うと著作権料がすごく高くなる」
からなのだそうだ。アナログは既得権的に安く済む。再生件数は報告しないといけないけど、追加料金は不要みたいだね。

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