IT時代のム所内労働

 珍しくも朝日新聞を読んでいると、変わった記事が。なんでも景気が悪くなって刑務所の受刑者にやらせる仕事が受注できないんだそうな。「懲役」というからには、1日8時間は仕事させないといけないそうで、刑務所の職員が受注のために営業しているとか。
 最近はサイバー犯罪も増えてきただろうから、旧態依然たる手工業の仕事だけでなくプログラミングの仕事とかも受注するようにすれば良いのに、ちゃんと産業の構造改革をフォローしないと仕事を取るのは難しいだろう、Mellisaを作ったと疑われた人はあちこちの企業から求人が殺到したということだからサイバー犯罪者の仕事というのは結構需要があるかもしれない。
 でも、やっぱり駄目だろうなあ。更正中とはいえ、犯罪者が作ったプログラムをそのまま素直に使うというのは気持ち悪いだろうし(こっそりと妙なルーチンが入っていたとしてもチェックできないだろう)、最大の問題はアフターサービス。このプログラムを修正してほしいのだが、という要求が出たところで「担当者は出所しました」となると、まさか呼び戻すわけにもいかない。

 この辺の問題を詰めてゆくと、プログラムを外注に出す、というときのリスクが浮き彫りになってきそうな感じなのだが(作り上げられたプログラムが要求仕様や設計と相違がないことをどうやって保証するか、とかアフターサービスが出来るようにするためにはドキュメンテーションやノウハウの伝授をどうすればよいか、といった問題)、まあそれはおいておくとしよう。
 では、現在の産業構造に照らし合わせて、受刑者の皆さんにどのような仕事をやっていただくのがよいかを考えてみる。
 代行入力が最適ではないかと思うのだ。これはセキュリティを考えると非常なメリットがある。コンピュータへの入力を外注した場合、渡したデータが外に漏れないかが問題となる。守秘義務契約で縛ったところで責任の所在を明らかにすることでしかない。
 これに対して刑務所の方々はある時期がくるまで娑婆に出てこないことを考えるとその間は確実に秘密が守れる。時限的にではあってもデータの漏洩がないということが構造的に保証されている。しかも労賃は安い。更に日本語入力が必要となれば、コストがいかに安かろうと海外に発注するわけにはいかないのだ。

 このセキュリティの高さゆえに、例えば入試問題の印刷は塀の中で行われている。ある時限までは決して漏れてはならず、それ以降はオープンという典型的なものである。

 代行入力のため、であればリース落ちのPCでもさほど問題はなかろう。機器のコストも安く済みそうだ。キーボード操作に習熟すれば出所してからも仕事にありつきやすいであろう。悪くないアイディアと思うがいかがだろうか。

 残る問題は、どうやって皆さんにタイピングをマスターしていただくかである。タイピング泪橋、あしたのジョーとか人気が高そうだがどうかなあ。例文もカスタマイズしてはどうかという話も出てくるだろう。「izokunokotowokanngaete」とか「hannseisiteimasu」などにすればと一瞬思ったが???是非についてはちょっと判断に迷うなあ。

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