「全国最大規模の地ビールメーカー」という矛盾極まりない紹介のされ方で、銀河高原ビールの破綻(会社更生法適用)が報道された。社会問題ネタ、目次へ各ビール会社のがんばりで、発泡酒が増えお値段ちょっと高めの地ビールは押し込まれているのであろう。特に「地ビール」といいながら規模の大きな銀河高原ビールは、本体を維持するだけの売上を計上しつづけることが困難だったと思われる。気が付いてみるとビール売り場自体、どんどん発泡酒に侵食されて減っている。
数年前からウィスキーの売上が無残にも落ち込み、今度はビール。どんどん麦から作られた酒が少なくなっている。これでいいのか日本人の味覚、と怒る前にちょっとこのWebページを参照。(作者の方が励ましのお便りをくれたので読んだ。どうもありがとう。)
要するに発泡酒がどんどん値下げになっている(この前ダイエーで350ml缶106円などというものもあった)。一般の清涼飲料と変わらないレベルになっている。ということは原材料費、酒税の分、清涼飲料は暴利をむさぼっているのではないかという主張である。ううむ、やはり同じようなことを考えた奴がいたか。
ほんまカイナと同系列のビール会社・清涼飲料水会社の財務諸表を見てみた。 アサヒビールの損益計算書から計算すると、2000年度というのはちょっと古いなあ、と思いながら計算すると、アサヒビールの売上高総利益率は24.3%。これに対してアサヒ飲料の損益計算書を見ると、売上高総利益率は55.8%。売上高に対する製造コストは確かに清涼飲料水の方が低い。
ふむふむ。北浜や兜町にいかずとも有価証券報告書が見れるとは便利な世の中になったもんだ。(なお、キリンビールのホームページには財務諸表が無かった。公表できないほどあぶないのだろうか、あの会社。シェアトップをアサヒに取られたしなあ。←一方ではこんな邪推を呼ぶのもネットの怖さである。)しかし変だぞ、これが販売費一般管理費を含めて売上高営業利益率で計算すると、アサヒビール6.7%、アサヒ飲料0.7%とものの見事に逆転するのだ。(しかも2001年度になるとアサヒ飲料は赤字に転落する。)
なんでこがいなことになるんやろか。
まず同じアサヒでもビール会社と清涼飲料水会社は規模が違う。売上高にして5倍(もちろんビール会社のほうが大きい)。
そんでもって、酒税を売上原価に求めない場合、売上高総利益率は77%などという凄い額になる。ビールって案外安く作れるものらしい。
それにしても清涼飲料水の利益が低すぎる、と販売費及び一般管理費のうちから、売上高に対して清涼飲料水メーカーの支出が過剰なのを探してみると。
なんと販売促進費に販売器具費(ひょっとして自動販売機のこと?)を加えるとビールメーカーの販売奨励金及び手数料を超えてしまう。運搬費も、ビールは清涼飲料の1.5倍にとどまっている。ビールの価格は同じ重量の清涼飲料水の倍!であることを考えても重さにして清涼飲料水の2.5倍はあるはずなのに。なんでかなと考えると、うーんビールは免許制度で制限された酒屋に持っていけば済むのだから配送先が少ない。それは運搬費減るわな。製品の種類も限られるから販売促進費も売上に比べて少なくて済むのね。
これに対して清涼飲料水は多品種、販売窓口も多い。販売網の維持に並々ならぬコストがかかるということだろう。研究開発費もばかにならない(アサヒ飲料の研究開発費は毎年増えている。それに対してアサヒビールの損益計算書には研究開発費の項目すらない。となると、定番商品を持っている清涼飲料水メーカーのコカコーラとカルピスの収益構造を見たくなるなあ。)この辺まで見てくると、ビールメーカーが発泡酒を作って製品の種類を増やすと、確かに酒税分コストは減るかもしれないが、その分広告宣伝費や販売促進費がかかって仕方なくなって、逆に利益率は下がるんじゃねえのか、という予測が成り立つ。であれば、発泡酒に手を出さず、高品質の製品に絞って利益率を維持してゆくという選択もありそうなもの。アサヒビールはむしろそうするつもりだったのかな。DRYのブランドを押し通せば何とかなるかも、という目論見は当然あったろう。
もっとも、その路線が失敗してきたのは、エビスビールがサッポロに買収されたことからも明らか。で、今回は銀河高原の破綻、である。
結論!発泡酒の税率をもっと上げてもとの状態に戻してくれ。で、美味しいビールをメーカーに作るよう仕向けてほしい。何?ビールの税率を発泡酒と同じレベルにまで下げるべきだろうって?
そうだね。そういえば消費税導入の際、酒税は無くすとゆうとらんかったかのう。
最初にビールに消費税を払ったとき、非常に奇異な感じを受けたものだ。この缶の値段。半分以上税金なのに、それを基準に3%乗せるの???結論:発泡酒の税率をビール並にあげるという財務省の方針に対するビールメーカーの反対がお座なりな気がしたのは、こういう理由があったと思われる。