冗談半分で「コリオリ力を利用した球状物体輸送時の経路制御」という特許を出願したら通ってしまった。(すみません、「マグナス力」の間違いでした。)社会問題ネタ、目次へ
どういうものかというと、球体ないし、それに近い物体を任意の一点から別の任意の一点に移動させるときに、物体を回転させるとコリオリ力が働き経路の制御が行える、というものである。
一応生産ラインでの球状物体輸送を想定したように出願したが、実際使えるかというとまず実用にならない。しかしこの特許は莫大な金を生み出すはずである。(これで今後の生活に苦労しなくて済む。)つまり、野球の変化球のうち、カーブ、シュート、スライダー、シンカーあたりがこの特許に抵触するのである。これらはボールに意識的に回転を与え、投手から捕手にゆくまでのボールの起動を制御するものであるから。
つまり今後、投手は私の許可がないとこれらの変化球を投げられなくなる。まあこれは交渉次第だが、特許の使用料をいくらに設定しようか。
アマチュアの場合は、無料にしよう。オープンソース運動に肩入れしていることから分かるように私は結構話の分かる男である。プロの場合も練習時は無料にしよう。問題は変化球を投げて金を取っている公式戦の場合である。
細かく計算していないが、1球1万円くらいは請求してもいいんじゃないかと考えている。高い?そうでもないよ。昔、江夏が1球6〜7万円という話を聞いたことがある。彼の年俸は現在の基準からして決して高くもあるまい。それこそ桑田なんか1球いくらもらってるんだろ。1球1万円が高いとすれば、それはプロ野球投手の年俸が高すぎるのよ。で、1球1万円で妥結したとする。当然、各投手が何球特許に抵触する変化球を投げたかは把握しないといけないから、全投球のビデオを(分かりやすいようにホームベース側からとったもの)送ってもらわねばなるまい。カウントはこっちでやらなければならない。結構大変だなあ。
問題は守秘義務なんだ。各投手からは全球の球筋をビデオでもらうわけ。投手にとってはトップシークレット。当然、ビデオは特許に抵触する変化球の数をカウントする以外には使いません、という守秘義務契約が必要だろう。
ところがプロ野球の試合は通常1日6試合行われる。1試合当たりの投球数は250〜300球以上。全部で1800球!これを一球一球見てゆくと・・・気が遠くなる。やっぱり人を雇って会社組織にしなければならない。すると守秘義務を守っているという客観的証拠を示すのが大変。通常のセキュリティルームを作って、、、という方法では弱いのよ。だって他球団の投手の球道を知りたいというスパイが入社してくる可能性があるから。この人たちは何が何でもデータを持ち出そうとするだろう。これに防ごうとするとコストが跳ね上がるし、それでも完全に防止できるというわけではない。またビデオの輸送中/廃棄時の問題もある。なわけで、例えばプロ野球協会と「年間特許使用料1億円」くらいの定額で妥結させようかなとという気になってきた。
でも、1億(選手の年俸を考えると安いと思うんだが)というと先方は裁判に訴えてきそうだし、でもこちらは受けて立つ体力はない。結局いいように押し切られて終わりだ。出願料すらモトが取れないかもしれない。うーん。では特許権ごと売却しようかなあ、誰か買ってくれるかしら。前読売巨人軍オーナーのナベツネさんなら結構いい額で買ってくれただろうけどね。でもこの人は「巨人のピッチャー以外の利用を禁ずる!」なんて平気で言いそうだ。さらには「伸びのあるストレート(これもコリオリ力で説明できる」も特許のカバー範囲にしそうだ。すると野球はつまんなくなる。ファンとしてはやりたくない。
というわけで結局休眠特許になってしまいそうなのでありました。特許は取得するよりも、使う方が大変です。個人じゃどうしようもない。企業に守ってもらわないと。というわけで職務発明の対価を計算するときには、特許権行使における企業の役割も計算に入れましょう。
Kurdamm作ったとき、会社のサポートがあれば特許になったかもしれない。でも個人ではそんな七面倒くさいことイヤだったから、まあ発表すればひょっとしてついてくる名誉で十分だと思ったわけだ(まさか発表も出来ないとは思わなかった)。今回の教訓:特許が特許であるためには、特許が成立するまでと、特許を行使/運用する際の手間とリスクを引き受けてくれる母体が、特にソフトウェア特許のようなどうにでも解釈できそうなものについては、必要じゃないかということ。
エープリルフールネタが思考実験になってしまった。