開かずの踏切公害論

 私はいたずら好きである。それもできればみんな喜ぶようないたずらが好きである。
 傑作というとこれか。毛筆の上手い人に「信頼/創意」と書いた紙をもらったので、素知らぬ顔で会社の執務室の壁に貼っておいた。特に誰も違和感を感じなかったようで、数ヶ月の間そのままであった。ある日偉い人が「なんだっけこれは」と気がついて、どうやら私が貼ったのであることを知り、さらに上役に確認し、それ以来その紙は公式な掲示物となった。(「信頼/創意」というと我が社の社訓だ、という方がおられましたら社長室を覗いてみてください。だいたい同じものがあると思います。)

 いってみれば「はりせんかまし」もいたずらの固まりである。ネタになった人にとっては多少気分が悪いかもしれないが、当方が被害を受けた場合を除き(例、ヤマダ)、極力真正面からバルカン砲をぶっぱなすということはやっていないつもりである。できるだけ側面から、笑いをとろうと努力はしている。(口を極めてののしったように見えるイラク人質相手ですら、マージンをとっている。あそこまで書いたのは「法律で海外渡航制限をかけなくても民間に自浄作用があることを証明するため」。海外渡航制限は現行憲法下でも実績あり。)

 直近の文章も誰か気がついてくれるとおもしろいなあ、と思って書いたところがある。「(2007-1)年問題を警告」といいながら2007年問題解決の予算どりの口実を提示しているのだ。2007年問題対応として業務のドキュメント化を行うといっても予算はとりにくかろうが、SOX法対応ならなんとかなるでしょうという部分である。「2007年問題」は自分の定年を記念してCSKの役員が作り、マスコミが乗っかった流行語なんだけども、SOX法対応は日本政府も乗り出した「制度対応」、説得力が違う。
 というわけで、あちこちでこんな言い回しが見られるようになるかもしれません。「SOX法(ないし日本版SOX法)をクリアするために現在行われている業務について内部統制充実のために文書化をおこないます。副次的効果として、蓄積したノウハウの共有が期待できます(その分SOX法で要求される最低ラインをクリアするよりお金がかかるけど出してね)。」別に無茶な要求じゃないでしょ。

 が、そのしゃれっ気のために警告が警告として機能せず、死者が出てしまったことを考えると、多分どうしようもなかったとはいえ、多少心が痛む。だから「まじめにバルカン砲撃ち直そう」。

 問題は「開かずの踏切である」。これに対して扉ネタでこんなことを書いた。

開かずの踏切、立って待っている方は大変である。夏や冬は特に。
そこで踏切に待合室を設けてはどうだろう。
冷暖房完備、遮断中はフリードリンク、当然トイレもある。
「次の通過可能時刻まで、○○分」の電光掲示板は必須ですね。
(2005.3.20)

 しかし、1時間12分遮断機が下りたままの踏切を渡ろうとして死者が出た。

 警告しておきたかったのは「開かずの踏切」というものを作ってしまう、その感覚である。なぜ公道を会社の利益のために45分も閉鎖して許されるのか、普通に考えると許されるわけがない。
 それは10分に1度、2〜3分踏切を閉鎖するなら理解できる。そこまでとやかく言うつもりはない。(3割の時間、公道を閉鎖しても我慢すると言っているのだから、私の心の広さはなかなかのものだろう。)が、30分とか45分閉鎖するのは絶対におかしい。
 鉄道が開通した当初は、多分1時間に数分だったのだろう。が増発になると閉鎖時間がどんどん増え、複線化・複々線化(東海道本線+京浜東北線と言ったのも含む)が進むと互いに干渉し合って、いつの間にか踏切が開いているのは1時間に数分ということになったのだろう。とすれば、問題は「踏切の閉鎖時間を伸ばしてもチェックがかからなかった体制」にある。
 この死傷事故、「故障中」の表示が不適当かもしれないからそれを直さなければという呑気な再発防止策を考えている人がいるようだが、実際に問題としなければならないのは「公道を閉鎖する時間をどうやって短くするか」であろう。社内からの声でそれが達成できるわけがないから(できるのならこんな状態になっていない)、公道を閉鎖するとペナルティが課せられるようにするのが正しい再発防止策である。

 そこで、のどかな再発防止策として「待合所を作る」ということを提案したのである。必要性はだれもが理解してくれると思う。長い間立って待っているのはしんどいし、雨の日や雪の中は特に大変だろうし、真夏なら日射病で倒れるかもしれないし、少なくともトイレに行きたくなることはあるだろう。当然待合所はいるよね、ということ。
 「不良のたまり場になる」とか反対意見があるだろうが、ならば監視者を置けば済むこと。昔は信号守の人がいたのだから、それを復活させるようなもの。奇抜な発想かもしれないが、無理な発想ではない。
 もし、そんなものを作る必要はない!と主張する人がいるかもしれない。しかしそういう人でも、改札と反対のホームに移動する際に線路を横切らせるような構造の駅があって、横切るときの踏切自身が開かずの踏切になっていれば、放っておかないだろう。多分陸橋くらいは付ける。最近のはやりでエレベーターを置くことも考えるだろう。なのにどうして一般の人を踏切で足止めしておいて平気なのだろう。
 それは、運賃を払ってくれている乗客と一般の通行人を同列に扱うのは・・・と思った人いるかな?そう、開かずの踏切は外部不経済なのだ。で、外部不経済を規制せず、放置するとどうなるか知っているかな。ちなみに鉄道会社はJR民営化のおかげでほとんどが利益追求の私企業だよ。
 私企業が自社の儲けのために無関係な人に悪影響をおよぼしても知らん顔していいということは・・・そう、排水の浄化装置をケチって有機水銀を垂れ流すのと同じ、つまり公害を野放しにしているということ。
 開かずの踏切は、構造的に公害と同一だということ。

 従って、何らかの規制は必要。
 その中で一番平和なのが、ダイヤへの影響が少ないのが、そしていかにもサービス向上に見えるのが「待合所を作る」ということだろう。実は鉄道会社に都合の良い解決策を提案してあげたのだ。

 ところが、この公害による死者がついに出た。当然まじめに規制すべきである。
 直接的なのは、踏切の連続閉鎖時間、1時間あたりの閉鎖時間に規制を設けて守らせること。
 財政再建の観点からは、公道の踏切内の部分に対して、閉鎖時間に応じて借地料をとること。鉄道に近い一等地だ。かなりの額になるだろう。
 絡め手として、二酸化炭素排出量。踏切待ちの車が出す二酸化炭素は、その排出責任と削減義務を鉄道会社に負わせる、なんてどうだろう。当然減らすための計画を出させて、結果をトレースするのよ。
 以上は条例の範囲で十分できることである。石原都知事、やんないかな。

 いや、やはりこれは国家に法律としてやってもらおう。郵政民営化法案が可決されたところで、衆議院は解散になるはずだから、次の選挙の争点にならないかなあ。都市部で票を落とした民主党ががんばって主張してくれそうだ。
 え、衆議院解散という話は出ていないって?そんなの変だよ。だって自民党は郵政民営化のみを争点にして「国民投票だ」とまで言ったわけでしょ。で、自民党単独の得票率は過半数行かなかったけど公明党を含め過半数となったから郵政民営化法は可決。ここまで、国民投票の結果は反映済み。ならばこれで今回の選挙結果はチャラにして再び解散、総選挙。今度は郵政民営化以外が論点となる、が筋なんだけど。

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