必修単位未履修問題解決策

 困ったことになった。高校の必修単位をカットした問題。いじめ問題とともに今更ながら取り上げられたのは、教育基本法を変えないと、というムードを高めるためだったんだろうが、国民の関心および波及範囲が予想を大きく上回っていたらしい。もう「愛国心」を盛り込むかどうかなんてレベルのことではなくなった。
 単位未履修者は、すでに卒業した人の場合は不問に、これからの人は上限付きで補習を、という救済策を導入し、ということで決着しそうだが、これでは安部首相の言う「努力した者が報われる社会」がのっけから躓くことになる。受験と関係なくてもまじめに世界史をやった人間が馬鹿を見る。従ってたとえ補習が350時間となろうともきっちり受けさせないと安部首相は困ったことになる。

 まあこういう事を言うと「生徒に罪はない」という反論が出てくるが、たとえ罪はなくとも「運が悪い」。運悪く事故にあったり、勤務先がつぶれたりしてどうしようもなくなった人間はたくさんいる。それと同じじゃん。(私の運の悪さはかなりのモノなので他人の運の悪さには同情はするが「助けてもらえると思うな」。人は自分の運の悪さの責任をとらされるものなんだ。)
 逆にこのような運の悪さで沈んでしまった生徒たちもきっちりと履修すれば胸を張って卒業できる、という仕組みを作ることが「再チャレンジ可能な社会」ということになり、安部首相のお気持ちに沿うことになるだろう。

 というわけで現代の日本の方向性からすると、補習はきっちりと受けてね/今年で終わらなかったら落第してね、が結論なのだが、あまりにも分かりやすくておもしろくないので少々ひねる。僕だって鬼ではない。それなりの救済策を考える。でも甘くはないぞ。忘れないでね。必修科目をカットした分、君たちは受験科目をよけいに勉強しているんだよ。受験だけを考えれば有利な立場なんだ。

 まず最初に考えられるのが「今年度の受験に間に合うように大検を臨時で実施しよう!」○○高校卒と履歴書には書けなくなるがこれは仕方がない。必修科目を削って受験勉強に励む人たちにとっては、特に問題となることでも無かろう。

 未履修の授業時間をセンター試験の点数と交換するというのはどうだろう。70時間受けていなかったら70点引く。学生に自由意志を与えているところがミソ。点を減らされるくらいなら喜んで授業を受ける、という人も多いのでは無かろうか。さすがに350時間受けていない人から350点引く、というのはあんまりだ、という意見が出るかもしれない。この場合は「引く点数は70点を限度とする」という上限を設けるのもよかろう。その場合、350時間の履修漏れの人は5時間の補習で+1点となるのよ。

 では、卒業した人はどうなるんだ、という意見が出ようが、これはよくあるパターンで解決可能。「不足した必修科目の授業時間だけ社会奉仕活動をする」(堀越学園は芸能活動で出席が足りない人が窓ふきをすれば単位として認めていた)。さぞ町はきれいになるだろう。問題は大学が都市部に集中し、不足単位を出した高校は地方に多いということ。そりゃ富山県としては地元の高校(仮)卒業者は地元で奉仕活動をやってほしかろう。奉仕活動労働力の移動を地方交付税交付金の移転で埋め合わせることが出来れば、どこからも文句はこないだろうが。

 さて、これで「今運の悪い」人はいくらかでも救われるだろうか。必修科目になったということで採用が増えるだろうと世界史の先生を目指していたが、就職できなかった人。世界史の参考書に力を入れたが在庫の山となった出版社。

 安部首相の公約のために、これだけ生徒に負担を強いるんだから、少しは生徒の言うことも聞いてやろう。というわけで教育基本法の焦点「愛国心」。センター試験とともにアンケートをとる。「あなたが愛国心に疑問を持つときはどんなときですか?」回答の選択肢「政治が悪いと思ったとき」、これの割合が内閣不支持率を上回れば、総理大臣は内閣総辞職を実施する義務がある。(憲法の関係から「総辞職する」とは言えない。)

 春休みに世界史集中講義をリラックスムードで受けて「世界史っておもしろいじゃん、大学入ったら勉強してみよう」という気になってくれた生徒が何人かでも出てきてくれると多少は救いがあるんだけどなあ。

社会問題ネタ、目次
ホーム