核融合の燃料である重水素は海水中にほぼ無限にあり・・・というのは理解できる。が、燃料となる水素は海水中に無限にありというのは、「だからどうした」である。と思っていたら、理系の大学の大学祭で、水素エネルギーの活用を熱く語っている人がいたが、どやら最初の水素取り出しは、水素吸着合金というのを水につければ済むと思っていたらしい。あれはあの大学の学生ではないよね。社会問題ネタ、目次へ
と、聞き流していたら、火星の大気にはCO2が含まれており、ここから炭素を取り出せば帰りの燃料がまかなえる、という話が堂々と日経新聞に出ていた。どうしてここで「ならば地球上でやろう、CO2は削減できるしエネルギー問題は緩和できるしいいことばかりだ」という論調を張らない。張らないところを見ると日経新聞もこの記事のナンセンスさには気がついているようだ。言うまでもないが、CO2から燃料を取り出す、という発想のおかしいところは、永久機関を作れると信じているところだ。CO2から炭素を取り出すには、炭素が燃焼するときに相当するエネルギーを加えてやらねばならない。そのエネルギーをどこから持ってくるか、という問題を無視している。同様に海水から燃料となる水素を取り出すという発想も、水素燃焼にあたるエネルギーをどこからもってくるかという問題を無視している。
火星の大気中のCO2を炭素と酸素に分離する、できなくはない。宇宙船に原子炉を積んでゆき、原子力エネルギーでCO2を分解するのだ。ポイントは「火星だったら使用済み核燃料および原子炉を放置して帰っても知らん顔していれば済む」というところにある。地球上ではこうはいかない。だから、CO2のエネルギーをどこから持ってくるか、という問題を記事でふれてはいけないのだ。地球上でやろう、という主張がないのもそれなら分かる。
もし地球上でやるとすると、風力とか太陽光エネルギーを使ってCO2を分解(そういや地球温暖化の文脈で二酸化炭素を語るときはCO2と表記するなあ・・・ナゼダ)するだろう。もったいない話だ。多分一回電気エネルギーを経由するから変換ロスが起こる。ロスされたエネルギーは熱に変わるから地球温暖化が進む。でもメリットはある。炭素は貯蔵できるし、運べるからだ。
つまり冒頭の「燃料となる水素は海水中に無限にあり」は思い切り長い導入部をつけると理解できる。
風力や太陽光という自然のエネルギーは、密度が低く、かつ不安定でそのままでは使用しにくい。帆船で航海する場合、いかに乗組員の技術を磨こうが結局は「風まかせ」である。従ってこれを安定的でかつ持ち運べる形にすることが考えられてきた。これまで、それは「電池/蓄電池」という形で実現されてきたが、電池という機器が必要である上に体積・重量あたりで取り出せるエネルギー量が少ない。従って化石燃料由来のガソリンや重油にどうしても頼ることになってきた。では、自然エネルギーを電力に変換するのではなく、化石燃料すなわち炭化水素に還元することに使うことを考えてはどうだろう。つまり化石燃料からエネルギーを取り出したときの廃棄物、つまりCO2や水に自然エネルギーを加えて炭化水素に還元するのである。確かにCO2はいくら増えたといっても大気中の0.3パーセント、取り出すのは困難である。しかし水素ならどうだろう。水という形で地球上に、特に海水中にほぼ、無限といっても良い量で安定的に存在する。という事だと思うんだが、これって全人類の共通理解だからあえて誰も口にしていないんだよねえ。でないとあまりにも無視されている。
マグネシウムをエネルギー通貨に、と研究を続けているこの人が特に口にしないのは、そりゃそうだろうけど。
エネルギーは塊にしないと使いづらいのだ。ただし当然の事ながら塊にすると爆発しやすい。石油というのがいかに優れているかよく分かる。火の気を避けただけでよい。これが水素や電力だと容器が大変。マグネシウムは・・・いけてるかもしれない。