LPをバージョンアップ

 LPはCDよりも音がいいと主張する私であるが、そろそろ逆転するかな、と考えている。ポイントはアナログ再生技術の向上である。
 アナログのマスターテープをCD用にデジタルリマスタリングする際には、当然再生機器でマスターテープを再生する。このときの再生機器の性能向上が関係しているのだ。その昔、カッティングのためにマスターを再生したときの機器の性能よりも、デジタルリマスターのために再生したときの機器の性能が十分に高ければ、A/D変換、D/A変換の音質劣化および超高音の詰まり、微小レベルの歪みをはねのけて、LPよりもCDの方が音質がよくなる、ということが起こっても不思議ではない。
 はっきりわかる実例は、The BeatlesのA Day in the Life。最後の和音、CD化されるときに長さが変わった。オリジナル盤をカッティングしたときに比べ、更に小さい音がマスターテープから取り出せるようになったので、その分残響が伸び、演奏時間が長くなったそうだ。

 というわけで、グレン=グールドのCD。もちろん全部揃っているが、更なる高音質を求めて買い換えたいな、という気はしている。更にはLDも全部持っている、それらがDVD化されたと聞くと当然気になる。
 しかし実際に買うことはない。何故、定価を払わんといかんのだ。80枚組35,000.-。私は既に持っている。冒頭に上げたリマスタリングによる音質の向上を認めるとしてもだ、原価とは言わんが廉価版の料金で売ってくれ。どんなに高く払うとしても、ボックスセットのバッハ全集155枚組み14,536.-の半額だろう。原価に多少のロイヤリティを入れてもそんなもののはずだ。

 まあ、確実に高音質化が図られているのであれば、もう少し出してもいいかな・・・ピンときませんか?このパターン。つまりソフトウェアのバージョンアップに似ているのだ。メディアが変わるだけなのであればメディアの原価で売ってください、が本音であるが、そちらも多少努力して高音質化を図るならバージョンアップ料は払いましょう、で妥協しても良いぞ、ということだ。
 著作権ビジネスは強欲の典型で、マトモな理屈が通用するところではないがそのくらいならと思ったのだ。(それは著作権の保護期間を70年にしないと恥ずかしい、と言ったり、かといって地デジのコピープロテクトがここまで細かいのは日本だけだ、と言われても蛙の面に〜だったり著作権にもいろいろな面があるんだなあと感じますが。)

 でも彼らは言うだろう。ソフトウェアはライセンス番号を発行しているし、ユーザー登録というのもやっている。だからバージョンアップができるんだ。音楽はそれができていないぞ、と。
 ネット販売したものについて、ユーザー登録ができていないとすればそれは君らの怠慢だが、ためしに「誰かやってくれませんか?」と尋ねてみればいい。びっくりするほど安い値段で確実にやってくれるところがある。まあ条件は出される「そちらで把握しているユーザー情報も一元的に管理します。また集まったユーザー情報はマーケティングに活用します。」you know what i mean. そう、これで音楽寄生産業は壊滅する。
 昔のLPの登録をどう保証するかって?必要ない。
 なんで保証が必要ないかって?ここに登録したということは新しいメディアが出たら買いますよ、と表明したということ。ユーザー登録は新バージョンが出れば買うことを条件としてもいいと思う。そうなれば売るほうとして悪い話であるわけがない。ついでに言うとLPの録音にかかったコスト、償却済みのはずである。とにかく売れればまるもうけ。

 一方、サーチエンジンでキーワードを叩いた人の傾向でさえマーケティングの資料になるのだ。メディアを実際に買った人、かつ新たに買う意思のある人の一覧、なかなか価値がありそうだ。格安でユーザー登録を引き受けてくれる企業もいそうでしょ。このデータを元に音楽ダウンロード販売を、ほら音楽寄生産業の行く末が見えるでしょ。だから、音楽寄生産業は自力でバージョンアップ経路を構築せねばならんのだ。

 ユーザー登録も、それほど悩む必要なさそうだ。LPではできないが、CDであればインターネット接続されたPCにCDを入れて登録、なんて方法を使ってもいいかもしれない・・・そのサイトにcookieかなんか仕込んどきますか?レンタルCD突っ込まれたらどうかって?CDのレンタル料(かつレンタル用CDの価格)に著作権料上乗せされているんだから全く問題なし!友だちから借りてきたCDなら?バージョンアップ制度がなければ、友達に借りて聞くであろう人が自ら買ってくれるというのだから大歓迎。
 むしろユーザー登録で問題となるのは、正当な権利者と保証できるか、ではなく。LPを買って売った人、中古を買った人の双方にユーザー登録をしていいか、という問題でしょう。LPを滅失/紛失した人もいるかもしれない。もう聞けないと思って捨てた人はどうするか。
 先ほど、LPの登録は必要ない、と言い切った理由はこのへんにもある。LPの物理的所有は必須条件とはできないから。すると声を上げた人間にいくつかの質問をして、つじつまが合っていれば一律に権利者と登録するしかない。主張すれば認められるというのはどうかと思うが、これまでの消費者全体としての既得権とするしかなかろう。そのくらいの妥協はしなければいけないと思うが。社会保険庁だって主張すれば保険料支払いの実績を認めると妥協したんだから。
 正当な所有者かどうかの質問、こんなのどう?The BeatlesのABBEY ROAD。ジャケットにクレジットされている最後の曲名は?(正解はThe End、ただしオリジナル盤だけはHer Majestyと聞いたことがある。もっともこれも異説があり・・・なんとマニアックな問題。というわけで、この質問をした相手がにやっと笑ったら、この人は相当のビートルマニア。当然、正当な所有者だろうということで。)

 回線が細い時代は、MP3のダウンロードで我慢したが、ブロードバンド時代になって既に購入した同じ曲の高ビットレート分をダウンロードしたくなった。これはバージョンアップとこの人は考えているのかなあ?という疑問を持たれる方がおられるかもしれませんが、具体的にはどうなっているのか分からないので、今回は言及してません。当然無料で再ダウンロードになるべきだよね、と思っているし。

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