高校かぜを笑い飛ばす

 うちのガキが持って帰った問題。理科。
 地球の自転軸は公転面に対して傾いているがそれが45度になったらどのような影響が出るか。
 ガキの回答「四季がなくなる」。どうやら間違いらしいが親ばかは正解としたくなる。そこで聞いた「四季がなくなってどうなるの?」もしここで「春と秋がなくなる」と答えれば正解としてあげたのに。
 正解は四季の変化が極端になる、という旨のようだがやはり理科の問題らしくグローバルな視点が欠けている。地軸が45度になるということは、分かりやすくいうとこういうことだ。
・北極圏が北緯45度まで降りる。
・北回帰線が北緯45度まであがる。
 正確なところは大規模シミュレーションをやってみなければわからないが、これでは温帯が消失するではないか。太陽が真上から射すとはいえ、日本の最北端まで亜熱帯というのは直感に反するけど。
 更には、緯度による温度差を和らげている海流がなくなるのではないか?偏西風が安定して吹かなくなるだろうから日本海流やメキシコ湾流は消えるか弱まる。温帯をなくする要因は更に増える。
 一年のうちで、気温が中間的な時期は残るだろうが、安定した季節としての「春」や「秋」はなくなってしまうだろう。というわけで「四季がなくなる」は正解。
 たいした親ばかぶりだが、間違いではあるまい。さらには小学校5年生のときの自分でも、これくらいのことは気がついたであろうと思う(偏西風の生ずる理由は「科学と学習」で知っていた)。なんとやりにくい生徒。でも私にはこの主張をじっと聞いてくれる親がいたのは幸運だった。で親の知り合いが多かったせいで教師に排除されずに済んだ。
 ウチのガキのいまの環境ならキチガイ扱いされるかもしれんな。少なくとも大がつく問題児だろう。  なんでこんなことを言うかというと、社会環境によって変と言われる奴のパターンは変わるということ。うちのガキは社会の授業、地域の農産物として「おばーちゃんちでとれる野菜」を列挙して変な子と見られたらしいが、2世代前ならそれが当たり前だったろう。

 と無理やりな導入部、いいたいことは「精神異常は社会的に規定されるもの」。
 まあ当たり前ですな。フーコーを持出すまでもなく。

 しかし「病気は社会的に規定されるもの」とは今回初めて知った。
 新型インフルエンザは、学校でしか発生しないのだ。感染が広がっている大阪・神戸でも感染者は高校生とその家族に限られている。
 この説にはいろいろ突っ込みたいだろうが、次のフレーズなら苦笑しながら納得してくれると思う。
「新型インフルエンザの発生は、ウィルスのDNAが鑑定できる国や地域に限られている。」

 神戸市がたまたま見つけたから日本で発生しているわけであって、ほおっておけば季節はずれのインフルエンザ流行、で続くだろう。どうやら風邪程度の症状しかないようだ。というわけで学校で集団発生したからコストのかかるDNA鑑定をやって、発生、となったわけだ。というわけで企業では発生してない。
 しかし、ポートピア(1981)の大成功以来「株式会社神戸市」といわれた行政能力健在!ですな。コンテンジェンシープランが出来ていて、それに沿って迅速な対応。まさか神戸まつりとぶつかるとは予想せず、テキヤさんはシノギに苦労したろうが、きっちりと実施したところはさすが。
 大阪府知事は何かと勇ましいことを言っているくせに、ここでは国が何とかしてくれないと何も出来ないと泣きつくし、舛添大臣は当初かっこいいこと言っておいて今ではチラッと出てくるだけ。

 症状が軽いもんだから技術的にDNA鑑定が出来なかった時代に本インフルエンザが発生したのであれば「今年の風邪はたちが悪い」で終わっていただろう。多分、スペイン風邪、アジア風邪、香港風邪以外にも弱いのがいろいろあったんだ。たいしたこともなく種の寿命も短かったから特に記録されてないというだけなんだろう。こういうのを呼ぶのにサイレントパンデミックって使いやすい用語と思うんだけどなあ。(別の意味で使った例が2つほどあったということで、完全に私の造語ではないようです。いずれにせよ著作権は主張しませんが。)

 というわけで風邪と区別がつきにくいので、学校の集団感染ででもないとわざわざDNAまで見ないんだろう。というわけで学校でしか発生しない、と。医療機関の効率的な運用がもたらしたんであろう理解は出来るが不思議な現象だ。これが日本だけなら私の思い過ごしだが、ニューヨークでも高校で大発生!ということは世界的に高校でしか発生しないのか?
 であれば他のことも説明がつく。「高校」というカテゴリのない国では発生しないか、低く抑えられているわけだ。アメリカ、カナダ、メキシコ、日本では拡大するがヨーロッパでは押さえられており、アフリカでは発生しない。なんと社会的な病気だろう。
 病気は、ましてやインフルエンザなら人類皆平等に影響!と考えたいがそういうことらしい。なぜかつじつまが合ってしまう。というわけで学制改革をするとおさまることが分かった。中高一貫教育機関では発生しているので法律で規定された学制の問題だ。ただし今後高専で発生するかどうかは注目している。

 実証はむずかしいかもしれないが、この「高校でしか発生しない」という特性が証明されれば対策も立てやすく経済的損失も防げる。このままでは、1000円の理髪店が値上げをするじゃないか。いちいち消毒薬で手や道具を洗いながらお客さんをさばくのはコスト的にも苦しい。薬屋の店頭、マスクのあるなしでトラブルが起こることもない。これも国があわてて備蓄のため市中に出回るべきマスクを抑えているからという噂もあるから自民党としては収めておきたいことだろう。となると病気は政治的なものになるのかな。

 高校生が感染拡大のキーになることは考慮しなければなるまい。すると、夏の高校野球は中止するという意見も出るだろう。問題はアルプススタンドだ。汗やつばを飛ばして応援する。次の高校の応援団が入ってくるまでに消毒ができるだろうか。マスクをして応援しようにも暑い。ついつい外してしまうのではないだろうか。無理につけさせる方法もある。カラーのマスクを配って「マスクで人文字」。しかしどうしても面積が狭い。やはり感染予防ができない以上中止は仕方がないだろう。
 ならば死のロードを免除された阪神タイガースの活躍に期待だ。新型インフルエンザで心が沈んだ兵庫/大阪の人たちの希望の星としてがんばってほしい。

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