「周知の事実」の確認法

 私は特許関連の仕事は向いていない。回ってきた申請に「この程度のことで特許がとれるかあ」と突っ返したり、「ここをこう変えて、適用範囲が広がった・・・どうせなら別の方法にすればより効率的に・・・おお更に特許一件、って誰が社内審査するんだ」と組織枠を壊したり、まあろくなことをしそうもない。特許関連部署は自分で考えてはいけないのだ。(昔はこれが分かっていなかった。アイディアなんて出してはいけないのだ。気がつかなかった人が著しく傷ついて反感を買う。)

 というわけで、仕事では特許関連のことを気にしていなかったのだが、研修くらいは受けないといけなくなった。聞いていると雑念がふつふつと湧いてくる。AIBOの顔に表情が映し出される部分が部分意匠として登録されているのか・・・WallEのイブはどうなるんだろう。同じようなデザインだぞ。映画の間はまあいいとしておもちゃになると立体になる。黒い透明なプラスチックを通してLEDで表情を浮かび上がらせるんだろうな。こうなると知的所有権侵害かな?訴訟問題に発展しかねないがどう調整したのだろう。なるほどディズニーはブルーレイディスク陣営に付いたからSONYは文句言えないか、しかし表情の部分をディスプレイにするというの、松下の独居老人監視用ロボットで既に使われていなかったか?(これは液晶表示。)
 講師はさぞおもしろかったろう。

 さて一番気にしていたのは「周知の事実」と認定される要件。「周知の事実」だと特許にならないらしい。論文/雑誌はもちろんとして、どうやらWebサイトに書かれたのも「周知の事実」とみなされるらしい。それを前提に自分のアイディアを書き散らかしてきた私は「あ、勘が当たった」。これがあるから、きわめて読みにくい、変換ミスもあり、と分かっても修正/再アップしていないものもある。ファイルのタイムスタンプが変わるからね。Vectorのサイトを使っているのもファイルの管理とかしっかりしてるだろうし、OSはUNIXみたいだし、というのもある。もちろん「フリーソフト提供者へのサービスとして提供」というのが最大の理由です。今となっては無料でスペースを提供してくれるところもあるが、ここは広告主に気兼ねすることもないというのがでかい。

 特許関連の仕事に、他社特許の動向確認とか、他社特許への反論を作るというのがあることを聞いたうえで、質問。従来は特許調査というと特許広報や論文、せいぜい雑誌をウォッチしていればよかったが、インターネット時代になってWebサイトに書き込まれたアイディアをチェックする必要が出てきたと思われる、これに対応した調査方法は確立されているのか?
 分かったことは、この分野にGoogleが進出すれば特許事務所は太刀打ちできないということ。
 逆に言うとGoogleのAPIを使うなどして、既知のアイディアかどうかを調査できればビジネスになるということ。おお、これでビジネスモデル特許一件!(なわけねえだろ。)

 ただし、何月何日に発表されたかを確認するのは大変だろうなあ。自分のサイトであればFTPソフトでしっかり分かるが、他の人のところは普通、例えばGopherでのアクセスを許可していまい。つまり外部からタイムスタンプが分からない。
 ついでに言うとブログという形態だと、コメントが付くと表示形式が変わってしまうので、タイムスタンプがあてになるまい。それは何月何日に書き込んだと主張はしているが、客観的に証明できるか?サーバーを管理している会社自体が、タイムスタンプを信用できるほどしっかり業務をこなしているか?(言っちゃ悪いがライブドアは信用ないですな。)WayBackMachineが案外決め手になったりして。

 ともかく、ファイルのアップされた日付を確定する必要、というのが今後生まれてきそうだ。
 このWebページがライバル企業の特許出願より先にアップされていると確定できれば、その特許は無効という事になり、わが社は年間数百万の支払いを免れうる、という事態〜十分考えられる事態だ〜になればその会社はWebMasterに連絡を取って何とか証拠を探したいと思うだろう。面白いことになりそうだ。例えばWebMasterによっては、そんなに大事なことなら当方にも少々よこせ、と言ってくる可能性もある。そのリスクはどう予測する。(発表会場のスイスまで招待してくれたので十分でしたのに>SONY殿。)
 こうなると面倒なのでやはりサーバーの管理会社に問い合わせるのかな?でも他社特許権をつぶそうとしている会社が作者に知らせずアイディアを使用するというのは、どうかね。逆に特許権に文句をつけられた会社が作者に連絡を取って、口裏を合わせ、というのもあるかもしれない。少なくとも作者としては、自社の利益の論証に無断で自分のサイトの内容を使った会社よりは、丁寧に問い合わせてくれた会社に好意を持つだろう。

 というわけで、最近旗色の悪い著作権協会、WEBページのアイディアを流用した場合の支払要綱を定めた作者の協定を作ったらどうかね。そういうものが必要になりそうだ。もちろん皮肉です。仮に著作権協会にそういうマネジメント能力があっても信用がないだろう。既得権にしがみつきすぎた結果、新しいビジネスチャンスを自分で排除してしまったのだ。

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