受益者負担の限界

 受益者負担、と聞いて不快なのは、その偏りである。
お前らは受益者なんだからその部分はカネを出せ、と言われるのは分からなくない。
しかし、税金を納めた先、本当の受益者の顔が見えないというのが嫌である。

 いるだろう受益者、
 「たとえ無駄といわれても公共工事がないと、我々は仕事がなくて干上がってしまいます。どうか公共工事を」と竹中工務店がテレビCMで流せばいいのだ。
 「補助金がないと食べていけません」と農協がCMを出す。まあこの場合は「国の政策に従って減反を進めていたところ、思いのほかいい値段で土地が売れていい気になっていたら、気がつくと農業を続けるだけの農地がなくなっていました。今更言われても困ります。実は政府のせいなんです」とイイワケがつくかもしれないが。

 テレビCMというのは悪くない。ネット広告が伸びた分、テレビ局の収入は頭打ち。ここで主張をCMで流す。主張を流すルート、これまでは電波利権を持たないものにとってはネットであったが、ここで逆転させよう、ということだ。これをネグロポンテスイッチと呼ぼう。
 CMを流すお金のない人は、ニュースソースになってもらおう。派遣村の人がカメラに向かって「納税者の皆さん、ありがとうございます。おかげで年が越せます」と涙ながらに感謝する。あっていいシーンだろう。

 更には、オリンピック、育成費の増額を、というなら、ここは浅田真央さんに
「選手強化費増額のために、消費税を10%に。大切にします、あなたの10%」
とテロップで流し
「金メダルへ、ジャンプ!」と4回転を決める。
 選手育成費って疑問なんだわ。基本的に個人を利するもんだろう。

 政府もかわいそうなんだ。税金を使うほうからは陳情・圧力やってくる。かといって増税しようとすると、票が逃げる。気の毒な板ばさみである。税金を使う人に、有権者を説得してほしいことだろう。そういう受益者負担は推進すべきだと思う。

 多分「いのちを守る」という発想が間違っているのだろう。この場合政府の仕事は所得の再分配を中心とした福祉政策が中心になる。公共工事も大きくみれば建設会社への福祉である(だから費用対効果は二次的な問題となる。)
 どんどん住みにくくなる地球においては、また世界システム論的に言えば、どんどん過剰利益の元となる周辺部が少なくなる現代においては、いかに食料や必要物資を確保するか、競争力の強い産業を育成するか、が国家の基本戦略としてあるべきなのに、それをしないで、国内の再分配だけ考える。再分配の原資がないもんだから国債に頼る。とうとう引き受けられない限界まで見えてきた。(日経新聞でさえ1面に持ってきた。)

 いのちを大切にすることと、生き残りを模索することは違う。そこが見えないから、原資として消費税増税を、とやっても納得できないのだ。所得の再分配であれば、持ってる奴からとって足りない奴に渡す、この原資に広く浅くの消費税ははじめからそぐわない。
 受益者負担を前面に出すのであれば、得する奴から取り上げる。極端な話「金メダルへの先渡し金として強化費を出し、取ったメダルの所有権は国家に帰属させる(選手が保管するのは可)」くらいにしなければならない。よく考えてみろ、それでも大サービスだぞ。自治体が経営困難なJリーグチームを支援しているんだから無償援助が当たり前と思っているのかもしれないが。

 そこまでやるなら、聞く耳持つぞ。
 それともうひとつ。鳩山首相は、倫理的に反対できない「いのちを守る」を持ってきて、「具体性がない」以外の反論を封じたつもりかもしれないが、上のようにきれいに反論できるんだ。忘れるな、世の中の人間はお前が考えるほど馬鹿じゃない。
 谷垣もそうだ。自分の事を棚に上げての主張ばかりしてもこちらは退屈するだけだ。お前が勝手に想定しているレベルの国民に合わせるな。お前、自民党の総裁にまでなった人間なんだろう。優れているところを見せてくれ。

 こっから先は半分だけ本気だが、今なら軍事費の増額に応じる。シー・シェパードのテロ行為を支援しているという理由でオーストラリアをテロ国家に認定し、防衛のためと称して征服。復興費用のために石炭と鉄鉱石の輸出代金を当てるという名目で資源の利権をゲット。
 少なくとも日本はこういうこともできる、という可能性は見せておかねばならない。捕鯨船の安全のためだ。これって「いのちを守る」ということじゃないですか?
 合衆国ならやる。イラクでやったもん。そしてありとあらゆる地下資源に恵まれたはずの合衆国も、ただひとつ鉄鉱石だけはないのだ。そして恐ろしいことに、オーストラリアは数少ない都市部に人口が極端に偏っている。広大な国ではあるが、わずか核爆弾5発で滅亡するのだ。

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