少子化対応担当大臣

 スペースシャトル、ディスカバリーに乗って宇宙に行った山崎直子さん。将来は国会議員じゃなかろうか、自民党と民主党で奪い合いがあるだろう。誘いの言葉はもちろん「少子化対策担当大臣のポストを用意します」。

 一度扉ネタで揶揄したことがあるが、少子化対策担当大臣、いかにもお座なりである。「子どもがいる」という理由で「何の実績も経験もない」一年生議員を大臣を抜擢したものであることだけでも十分わかる。子どもがいる女性であれば大臣になれる、ということは、国会議員の中での少子化は押さえられるかもしれないが日本全体ではいかがなものか。

 少子化対策担当大臣、がシンボル的な存在でもいいとするならば、山崎さんはまさにうってつけである。宇宙飛行士に選ばれてから出産。それでも夢をかなえた、という実績は日本中の働く女性に力を与えることであろう。

 ただし、緊急に必要なのは少子化対策担当大臣、ではなく少子化対応担当大臣、ではないかという気はしている。人口が減ってもなんとかしていくにはどうすればよいかというのが問題だろう。
 とりあえず今のところ日本の人口は減り続ける。国内市場は狭くなる。教育制度も問題だ。人口が多ければその中から優秀な人が出てくるだろうという前提で専門家教育を怠ってきたのを何とかしなければならない。(分かりやすい例が高校野球だ。盛んだから強い選手が出てくる、という前提で各校の努力に任せていたところ、そろそろ専門化教育に優れた韓国相手に負けそうである。)
 企業だって鉄鋼メーカーが沢山あるから競争でどっかは勝ち抜くだろう、自動車会社も沢山あればどこかは時代の波に乗るはずだからそれに追随すればいいや、で放任していたのを、護送船団方式で育成しなければならなくなるかもしれない。(育成、だぞ。保護、じゃないぞ。)
 少子化反対!と言っているだけでは駄目だ。少子化を前提にどうするかの政策を打ち立てないと。これが「少子化対応担当大臣」の役割と思うがどうだろう。とても国会議員一年生に任せてよい仕事ではない。

 だからといって少子化対策担当大臣が不要なわけではない。ものすごく重要な任務がある。とても言いにくいことを言えるだけの説得力のある人が必要だ。「猪口邦子の経セミフォーラム」で部数に貢献した程度の実績では駄目だ。でもある程度政治家としての経験を積む、という条件はあるが山崎さんなら何とかなるんじゃないかと思っている。
 というわけで言いにくいことの例。もちろん他人が言ったのを引用。20年位前のシンガポールの少子化対策担当大臣のような人の演説だ。
「高卒2名からは3名の高卒が生まれます。しかし大卒2名からは1名の大卒しか生まれません。」
 なんと露骨な。しかし人口の少ないシンガポールはこれをはっきり言わなければならないほど、優秀な人間を(専門家に育てる元となる優秀な人間のタネを)必要としたのだろう。たしかに優秀な女性はとても忙しい。だから複数の子どもを産んだり、子どもを産むこと自体、場合によっては結婚さえあきらめねばならない状態になっているのも事実。だから一般的に女性の出産を支援する、ではなく優秀な女性の出産を特に支援する、というのがものすごく大事な、ホントは大事な問題になっているはずだと思うのだ。これが少子化対応の次にくる少子化対策の骨子にならないといけないと思う。
 特にコンピュータ業界なんぞにいると、一人の個人の影響が決定的であることを目の当たりにするんだ。レイ=オジーとスティーブ=ジョブスを考えてみてよ。セイモア=クレイを入れてもいい。ダグラス=エンゲルバートがもしいなかったら。。。業界の風景が全然違うだろ。コンピュータがたまたま基幹産業となり新たな市場を生み出したことを考えると、結果論ではあるが、優秀な一人の人間を育てて活かすことが、いかに大事かと分かる。彼らとキッシンジャーを比べてどうか、というのはおいとくとしても。

 問題は山崎さんがあまりに優秀で「山崎さんみたいな人もいるんだから、一人ひとりががんばればいいじゃないか」という突き放した感想を持たせるかもしれないこと。

 なんとなく分かった?もうスペースシャトルは飛ばない。山崎さんの経験とノウハウの使い道はあまりないんだ。あちこち講演をしたり陳情をする仕事はあるだろうけどね。
 だったら卒業後の進路として「国会議員」というのは悪くない。芸人やスポーツ選手よりはいい仕事をしてくれるはずだ。さすがに「宇宙からの選挙活動」はやってはいけないと思うが、その気になれば夏の参議院議員選挙にだって参戦できそうだ。宇宙飛行士と首相との交信、は前例がある。首相が「一人の人間としてはもちろん、母親として素晴らしいことだと思う。帰還してから是非その経験を生かしてもらいたい」と申し入れるのなら全く問題ないよね。

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