Google中国撤退の真意

 来年のエープリルフールネタにしようかなあと思ったんだが、ひょっとしてそのときには本当になっているかもしれないので思いついたところで書いておく。

 中国は「中国でモノを売る場合、そのソースコードを開示しろ」と要求しているらしい。
 合衆国政府の「暗号化キーを公開しろ」に比べると正当な要求のように思える。セキュリティにかかわる部分を外国企業に握られたまま非開示というのは安全保障上問題がある。従ってソースを政府には渡せ、無理のない発想だ。では渡そうか、という決断を素直に出来るほど中国に信用がないというのは否めないが。

 ただし、中国政府は何もこそこそとソースを「民間」企業に流す必要はない。「グローバルスタンダード」に乗っかって堂々と流せる。

 ここで登場するのがGoogleである。Googleの書籍全文検索プロジェクト、いまひとつ全体像が掴めなかったが、「毎日小学生新聞」で初めて分かった。合衆国には公共の役に立つものは、公開してもいい、という法律があるらしい。というわけで図書館の本の内容は公開していいとか。これが基本にあるらしい。
 このグローバルスタンダードを中国が採用するとする。プログラムソースは著作物には違いないから「公共性がある」と断じれば公開可能である。その際Googleが合衆国内の著作者と合意したのと同じ条件をつけて中国国内の著作権者と合意すれば著作権料の支払もクリアになる。ついでにGoogleの理屈を援用すれば、国外の著作権者とも合意したことになる。というわけで、格安の「著作権料」でプログラムソースを参照することが可能となる。後は知らん。
 この場合、少なくともスキームの前例を作ったGoogleは文句言えない。それどころか「妙なもん作りやがって」と矢面に立つことは必至である。ついでに中国政府へのソースコード提供の範囲が適当に広められて、Googleのサービスも対象にされるかもしれない。

 この辺のゴタゴタを避けるためには、今のうちに中国撤退を決めて、後は知らん顔をするのがベストの選択だ。大市場になるはずの中国撤退を株主が納得したはずである。表向きは検閲をするな、自由を守れ、実際にはソースを取られたくない。
 また、検閲反対に中国政府が耳を貸してくれれば、ソースを守る交渉を行う余地があったかもしれないが、平行線では駄目だ。いくらGoogleといえ国家権力には太刀打ちできない。

 いくら図書の電子データ化&(実質的に)公開を合法化するスキームを作った本人とはいえ、これに気がついて、表現の自由という大義名分の下に、中国市場を切り捨てる判断をした。あいつらやっぱり頭いいんだ。決断力あるなあ。当方は素直に感心した。


2010年5月2日付け、毎日小学生新聞 NEWSの窓より引用。実に分かりやすい。

 グーグルというアメリカの検索エンジン(みんなもインターネットで使っているかもしれない)が、その著作権を無視して、アメリカやイギリスの大学図書館にある本を片っ端から電子データにしてしまった。もちろんその中には、日本を含めて世界中の人が書いた本が含まれている。
 もしグーグルが、街の本屋で本を買って、そんなことをすれば著作権法違反だ。しかし、アメリカには、みんなの役に立つ目的のためなら、図書館がいいと言えば、直策件を持つ人の許しがなくてもデータ化してかまわない、という考え方がある。フェアユース(公正な使い道)と呼ばれている。
 グーグルは、これを使って大学図書館に「いいよ」と言ってもらった。
 しかし、世界中の著作権を持つ人々や、本を出す会社は怒った。しかも、アメリカの著作権を持つ人々の団体はグーグルと、本の値段の63%のお金を、著作権を持つ人にわたせばいいなどと約束して、この約束は世界中に通用すると言い出した。

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