緊急地震速報

 携帯電話で連絡するサービスがあるらしい。というわけで、あちこちで独特の警告音が鳴った。

 そういえば日中は初めてだなあ。自宅であれば「火を消す」とか、一番落下物が少ないところに避難する、とか子供が寝ているときは布団をかぶって上から覆いかぶさるとか、それなりの手順は整備されているが、オフィスでは特に担当ということもなく気にしていなかった。が、まてよ。
 例えば机の下にもぐりこむ、という定番の手順。これは緊急地震速報が生まれる以前からあるなあ、これは緊急地震速報があってこその対策を考え直さなくては。

 まず、作業中のファイルのセーブ。停電に備えてワンタッチで作業ファイルをローカルにリネームして保存し、サーバーとの接続断に備えるソフトを書いたらどうだろう。仕様を5分ばかり考えたところで、・・・と思ったが見渡せばみんなノートパソコン。バッテリーがあるから大丈夫という当たり前のことに気がついた。なに、作成中の電子メールを保存するのが一筋縄ではいかないことに気がついたので、やらなくてもよい言い訳を考えたら理由が見つかったということだ。
 でも端末のロックはやっといたほうがいいかもしれない。落下物に備えてフタを閉めておこうか。

 セキュリティエリアの電子ロック。停電で開かなくなると避難が大変。場合によっては、グラッと来る前にドアをあけておかないと。えーとこれは物理的に大丈夫なようだ。

 よく考えると椅子にキャスターがついている。これが揺れにあわせてごろごろ動くと怖いなあ、ということで、滑りにくいように倒す、という対策を考案。前に倒したほうがいいか、横のほうが安定するのか少し実験。横のほうがマシみたいだ。あとキャスターつきのキャビネットとかもあった気が、ロックされているか確認できればしときますか。これだけやればそろそろ余裕時間オーバーだ。

 が、だなあ。緊急地震速報ならではの対策がもう一つあった。「本社に電話をかける」。
 専用線がないところでは必須だろう。インターネットで電子メールという手段もあるが、基本は電話。つまりこういうことだ。  地震が収まったあと、安否確認の電話が一斉にかけられ電話網がパンクする。ならば、前もって本社との間に回線確保をしておいたほうがベターである。
 問題は、電話をかけるとしてもそんな時間は1回分しかない。だからといって確実につながる電話番号を非常時に備えてキープしておくのももったいない。なにしろ拠点数分いるのだ。
 というわけで「非常時にしか使わない代表番号」を作って、ワンタッチダイヤルに登録しておくのが有効ということになる。本社は大変かもしれない。鳴ればとにかく受話器をとる必要がある。相手を確認する暇のないまま机の下に避難。が、かかってくる電話は拠点からのものだけとは限らない。たまに何も知らないお客さんからの普通の電話だったりして。相手からすると受話器をとってくれたらしいが、どんなに「もしもし」と呼んでも返事はない。うーん。あとで謝り倒すしかないなあ。「緊急地震速報が出まして」という理由であれば、そう事を荒立てられることはなかろう。
 携帯電話は緊急地震速報メールでいっぱいいっぱいだろうから、やっぱり固定電話なんだよね。改めて知る固定電話の強さ。FAXができて電話は不要といわれた、が、FAX送ります/送りました、の電話はなくならない。電子メールが出来て、必要性は激減するといわれたが、電子メール送ります/送りました、の電話はなされている。インターネット電話・テレビ電話(会議)が生まれても、これからつなぐから、の電話は残っている。
 まあようするに電話のキモは「ベル」なのだ。いきなりこちらの都合で相手のところに騒音を撒き散らし、仕事その他を中断させても失礼に当たらないというものすごい社会合意。これだけでグラハム・ベルは電話のベルの発明者として名を残す権利がある。ベルの功罪は相半ばし、ともに大きい。

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