復興への寄付金を効率的に集める方法

 東日本大震災。えらい苦労をして帰宅した。もっとも鉄道属性もある当方としては、ルートの選定については苦労することもなく「とりあえず帰れるところまで帰る」などとは毛の先ほども考えず最適解を踏んで戻ってきたつもりである。極力シングルベンダーで(つまり電車に乗るとき駅員に聞けば、終着点までの運行情報が確実に得られる)、かつ終着点で他の会社線に乗り換えうる(そこに着いたときには更に先が復旧している可能性がある)。実はその先歩いてゆく道も分かりやすかったりする。
 しかし通常、定期券でカバーされるはずの通勤経路が、ウン百円の出費となってしまった。追加支出には変わりないからこれをナントカ総研が分析すると「通勤客全体で○○億の経済効果」ということになるんだろうなあ。これが既存の鉄道が破壊されたがために、であれば破壊分をマイナスしなければならないのだが、たいした復旧作業が必要であったわけではないようなので、まるまる経済効果と言ってよかろう。・・・そんなバカな?そうだよ。「経済効果」というのがいかにしょうもない言葉か分かるだろう。

 というわけで、鉄道会社、今度は「節電」のために電車を思い切り運休させている。これで更に「経済効果」が高まっているはずである。にもかかわらず、電鉄会社の株価が軒並み下がっている。ナゼダナゼダナゼダ。あ、ガス会社は寄り付きはともかく上がってますね。燃料電池設備がこれで爆発的に売れるかもしれない。ガスで爆発、縁語ではあるがあまり気持ちのいいもんじゃないなあ。

 この元凶は「計画停電」みたいだ。どれくらい元「凶」かというと計画停電の発表自体があくどさに満ち満ちている。
 首相や官房長官の発言によると「1日3時間ずつ輪番で」停電するということだったはずが、直後の東電の発表によると「1日7時間」の区域がある。つまり「首相をだましてOKをもらった」わけだ。ここは皆さん追及しよう。
 で、輪番の資料、記者会見の場で読売の記者が突っ込んでいたが、ようするに平成の大合併以前の地名で書いていたようなのだ。さすがに「浦和市」くらいは読み替えたようだが。
 ここで2003年の電力不足時の計画をそのまま使っているということが露呈してしまった。つまり2007年夏の新潟中越地震で柏崎原発が停止したときには、計画の見直しすら行ってなかった、ということを示している。見直しをしてないもんだからどの地域がどの計画停電エリアに入るのか実は東京電力でも「わからない」わけだ。そこは職務怠慢であったと指摘されるべきだろう。

 で、東京都23区の殆どは計画停止の対象外。事情として理解できなくはない。が、ここまでいい加減だと、当然次のことは考えていないはずだ。「一律計画停電ならともかく、これだけ差をつけた以上、当然電気料金(基本料)は割り戻すんですよね。」というお客様の声である。
 例えばさいたま市は3つのエリアに含まれている。18時間停電だっけ?で、先ほども言ったようにどの家が何時間停電したかは東京電力には分からないわけだ。割戻し請求やり放題だぞ。ついでに「発表が遅れたので、備蓄用として買いだめておいた冷凍食品がみんな駄目になってしまった、損害を賠償せよ」というのもつけようか。
 それを少額訴訟で回収する。腕利き弁護士よ、前例を作ってくれ。すげーことになるぞ。水に落ちた犬を棒でたたくのは趣味に反するが、相手が意識して悪いことをやっている場合はこの限りではない。逆にやることが一罰百戒になる。むしろ正義だという考え方もある。
 中越地震のときに見直すべきであったにもかかわらず、そのときのコストをケチっている東京電力だ。その分の金は金庫にあるはずだから別にどうということはなかろう。更に言えば、原子力発電所を「低コストだから」と建設したわけだから、事故が起こってもナントカするくらいの資金は電力会社は溜め込んでいるはずである。今回の事故だって1984年にゴルゴ13「2万5千年の荒野」で克明に予測されている。今読み返すと、ニュース解説よりよほど事情が良く分かる。

 あ、振替乗車表を出さない鉄道会社も、少額訴訟で訴えられる可能性はあるよ。地震当日なら分かる。でも前例がない計画停電時がどう判断されるかは分からない。特に自家発電設備を持っているJRの判断は適切だったか?信号が一般電源だから確認に手間取ったって?分かるよ。じゃあ踏切が一つもない総武線(千葉まで)、京葉線を最初に動かすと決めるはずじゃないかな。やはり怠慢だったと言うことだ。だから総武線を止めたために例えば京成線の利用を余儀なくされた利用者としては、賠償を請求するきちんとした理由があるはずなのだ。

 が、少額訴訟、裁判所が忙しくなるのは仕方ないとして、東電、JR東日本の事務が滞るのは、この時期はよくない。被災地の復旧が最優先だ。そこで提案。「利用者に迷惑をかけたと想定される額を、復興費用として寄付する。」数億円単位ですぐに支出可能だ。いわば電車停止の「経済効果」を復興に役立てるのだ。鉄道会社については間引き運転によるコストダウン、計画停止による電気代の節約もあるからもっと払えるかもしれない。もちろん、電力網の復旧や鉄道網の復旧以外に宛てるのよ。
 それを堂々と宣言してくれ、だったら、こちらも損害賠償請求の権利を放棄しよう。

 僕らの、通勤や停電時の苦労は、そのまま被災地の復旧に役立っている。辛くなんかない。

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