世界一安全な原発を持つ世界一安全な国の話

 どうやら原子炉は止まっていなかったようだ。
 あまりにも温度が高すぎるので、不審に思っていたのだが、ついに証拠が出てきた。
 2号機で検出された放射性物質に、半減期53分のヨウ素134が含まれていたのである。
 震災から2週間、原子炉が停止していれば、殆どゼロになっていたはずだ。
 まあ、東京電力にも言い分があるだろう。「計器が全部ゼロを指していたので止まっていると判断しました。」

 役員は株主代表訴訟で天文学的な賠償を要求されるだろう。それは子孫にまで影響するが(特例で相続放棄できないらしい)、そんなことは知るかである。放射能の影響は子孫に及ぶ。だからこれは同情の余地無く怒っていいことだ。というわけで、彼らの言い訳を一つ潰しておく。
 「自身と津波のダブルパンチを想定していませんでした。」
 ダブルパンチではない、ワンツーパンチだ。一発目と二発目にタイムラグがある。
 その間に、原子炉停止をかけておかなければならなかったのだ。思い切り腹をくくらなければならないが、分かるだろう。津波が来るかに拘わらず、地震だけで十分緊急停止に値する。バッテリーは動いていたはずなんだから東芝設計の2,3,4号機だけでも何とかなったんじゃ。
 気持ちは分かる。止めておけば大惨事は防げるが、評価されることはない。後からやってきたお偉いさんは「勝手に止めた」と思い切り文句を言うだろう。よくやった!と誉めてしまうと「ほっとけば大惨事になった」と認めることになるからだ。
 どうせ文句を言われるならば、自分が責任を取らない形にしたい。当然の判断だと思う。その気持ち、僕には誰よりも分かる。「何事もなく収めているというのがどんなに大変なことか、一回爆発させることによって分からせたい」という気持ちすら理解する。が、影響が大きすぎるのだ。腹くくってくれ。その代わり私は福島二号原発で「原子炉封鎖」を指示した人、あるいは独断でボタンを押した人を救世主として賛美するから。
 その代わり、原子炉の廃棄手段を考えずに建設を強行した皆さんには、決死隊となって復旧に当たってもらわなければ。線香一本あげてやる気は無いが責任は果たしてくれ。
 個人的には「しんがり」を受け持つのは大変な手柄だと思っているが、これまでのところ、しんがりのことを考えなかった人たちがしんがりを勤めても誉めてやる気にはならない。

 こんなときに不謹慎と言われるかもしれないが、地震をビジネスチャンスとして生かすやり方をいくつか考えた。残念ながら資本主義社会では、ビジネスチャンスということで なければ人は動かないということになっている。

 まず、東京都23区のオフィスビル需要が高まる。理由は「計画停電の対象外だから」。恐らく関東一円の銀行は、不動産情報と取引先情報をリンクさせて「停電しない23区に本社を移転しませんか?費用はこちらで融資します」と持ちかけまくっているに違いない。信用保証はもちろん東京電力。ただしみずほ銀行についてはそんなセールスをする余裕はなかろう。

 福島県浜通りは大部分「放棄」だろう。部分的にはチェルノブイリ周辺を越える汚染地域もあるらしい。では恒久的受け入れ先をどうするか。名乗りを上げるべきなのは普天間。移転後の米軍基地跡地にあなたたちの町を作ります。ただし雇用を創出する必要があるので新規産業を育成する必要があります。というわけで特区にしてね。できれば自由貿易地区。ところで米軍は何時出て行ってくれるの?
 福島原発の復旧作業、米軍に相当お世話になっている。早くしないと「米軍受け入れやむなし。沖縄県よろしく。」の世論が強大になる。

 特定石油製品輸入暫定措置法の廃止以来、ガソリン輸入が自由化されたはずだが、許認可の壁は大きいようだ。さあ、強行輸入で壁を破るんだ。気仙沼港に向かうタンカーを、止められる奴はどこにもいない。

 夏はこれが流行る。空調服だ。赤外線/紫外線カットのためにチタン加工をしているが、これが放射線を遮るのに役立つ。ベータ線までなら十分だ。元々冷房が無くても涼しくなるように作っているし。品切れになる前に買っとこう!

 あ、株は今期来期の好決算で材料出尽くしになるので下がります。オイルショックの1973年は買占め・売り惜しみで在庫投資が急増、経済成長は続いたらしい。が、翌年どーんと反動が来た。
 この日本人の買占めムードを外国人投資家は読むことが出来るか。緊迫ですねえ。

 しかしだねえ。買占めムードがあるとはいえ、特に略奪も起こらない。節電と言われればしっかり節電する。この不景気の中ボランティアの手が続々挙がる。日本人ってやっぱりすごい。で、これほどのすばらしい国民がいてくれながら、戦時下を除けば歴史上類を見ない破綻寸前の財政と、外国からつつかれればおろおろするしかない外交、放射能が漏れ出しているのに先送りを続ける政治(含む公益企業)を生んでしまったのはなあぜ?

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