実はあなたも加害者なんです

MSW311
というガイガーカウンターが発売されたそうな。
 福島製である。以前、私が提唱した「放射能防護関連製品を福島で作れば、ブランドイメージができていいのでは」という意見に賛成してくれそうでうれしい限りである。
MSW311という型番もよい。
Micro
soft
Windows
3.11
からとったように見える。このバージョンは日本語化されなかったが、いわゆるWindows for Workgroupで、Microsoft Windowsに初めてネットワーク機能を標準装備したものである。つまり「つながろう」このイメージがあってバリバリによい。さらに、CPUがさほど高性能でなく、メモリも8MBもあれば動くという、つまり電力をそれほど消費しなくてもいいじゃないかというエコロジー思想、さらには原発推進へのアンチテーゼすら聞こえてくる。ナイスなネーミングだ。

 なんで僕が太鼓持ちしているかと言うと、ただ誉めないといけないからだ。
 日本という国は妙な文化があって、いいとされるものは無条件に称えなければならない。ここで問題点をしっかり把握して改善策などを考えようとすると、問題点を指摘した時点で文句を言われる。
 避難区域で人っ子一人いないのを「死の町」と言うと「大臣を辞めろ」となる。秋篠宮が「天皇公務に定年制を」と言って非難轟々にならないのは例外であろう。(民間人が言ったらどうなるんだろう。)
 問題点を問題点と認識して対応しないと、いつまでたっても対処なんて無理である。汚染地域で米を作ったらセシウムが出た。当たり前だ。現状認識をしないからこういうことになるのだ。最初から作らなければ、検査のコストもそれだけ安くなる。近隣地域の風評被害も軽減できる。そう、あんたが被害者であることは否定しないけどあんたが米を作ったおかげで近隣地域の風評被害は増している。その意味であんたは加害者なんだ。もし作らなかったとする、当然基準値を超えるセシウム米は見つからない。すると「福島の米は安全なのか、じゃあ買って応援しようか」という人も出る。あんたのおかげで「やっぱり危ない」になってしまったのだ。
 分かった?現状認識の大切さが。「知りませんでした」で済まない事があるって言うのは骨身にしみているはずだろう。

 辛いのは分かるが、当面浜通り(および中通りの一部)は放棄しないといけない。だから僕は受け入れ先として「普天間基地の移転後跡地」なんてのをひねり出した。たいしたアイディアではないが、影響を考えずに米を作るよりずっと現実的だ。

 僕がTPPに賛成しなくちゃならなくなったのも福島がらみだ。日本の穀倉地帯の一角を占める福島の農地を一部とはいえ失ったんだ。安定的な供給を確保するために貿易の枠組みを作っておくことは必要なことじゃないかな?
 恐らく、反論は出るだろう。ならば「全国の耕作放棄地で福島のノウハウを生かす」くらいのことは言ってほしい。するとTPP反対運動も変わってくる。日本の農業をよくするための具体的な方法(たとえば穀倉地帯のノウハウを耕作放棄とした地に移植して農業全体の生産性を高める)という観点が入ってくる。今のままではただ「反対」と唱えて、国際価格の数倍(政府補助を算入しないといけないので正確な値が出せない)を必要とする国内農業の問題点を置き去りにしている。であればそれこそ「TPP導入後の条件(つまり補償金)を良くする布石として反対運動をやっている」といわれても仕方あるまい。

 うちのガキの主張の方がよほど説得力があるぞ。「おばあちゃんの作る野菜を食べられなくなるのはヤダ」。もっともそれがいかに美味いか分かっていないようだ。孫においしく食べてもらいたいと物凄く手間をかけている。自分が食べない海外輸出用であれば、この心遣いの百分の一すら期待できまい。
 残念なことに、放射能米を作ってしまった農家の方からも、百分の一の心遣いすら感じ取れなかったんだ。これは僕の感受性が低いからだってことはないだろう。

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