里山の崩壊がホットスポットを招いた

 初めに断っておくが、私はフリーのジャーナリストではない。
 いかにも彼ら(彼女ら)っぽいタイトルは意識してつけただけである。

 落ち葉のセシウム 完全除去法を開発なんて楽しそうな記事があった。以前揶揄した「微生物に吸着させる」なんかよりずっとまともだとおもう。(揶揄の理由は「微生物が放射性物質食べても微生物自身の健康に問題はないと良く分かったな」。)
 元東大医科学研究所教授と工務店専務が共同で開発という落ち着きの悪い組み合わせにくらっときたが、言っている事は正しいようだ。葉や茎に含まれる「プラントオパール」(植物石)と呼ばれる粒子がセシウムを集める性質を利用する。要するに雑草についたセシウムはプラントオパールに固まるから、それだけを濾せば残りは無害、だそうだ。
 で、かの元東大教授が言っている。「本来なら論文にして発表するところですが、被災地のために実用化を優先します」。あなたの判断は正しい。論文にすると気がつかずに済ますことはできまい。そうでなくとも読んだ人が気づいてはいけないことに気がついてしまう。

 雑草の中で「プラントオパール」にセシウムがたまる、だからプラントオパールを分離すれば残りは安全。まあこういう趣旨で実験も成功。よく考えてくれました。でもね。一つの植物の中でセシウムがたまるところとそうでないところがあるという問題にはとどまらないの。環境全体とその中のプラントオパールを比較してみないと。

 つまり、原発から放出されたセシウム、ふわふわ空気中を漂っているうちに「プラントオパール」に吸着されることを考える。現象としては「プラントオパールを持つ植物」に吸着される。で、プラントオパール君は単子葉植物にできるらしいね。代表的な植物は「イネ」。つまり、田んぼの稲が積極的にセシウムを吸着してくれることになる。納得がいった。コメから多くのセシウムが検出されるのには理由があるのである。だから「こんなに沢山出るなんて」に対して「国が情報を隠していた」というのは当たらないかもしれない。イネがセシウムを集めるなんてちょっと知られてなかったんでしょ、である。(かくして「予想外の高濃度」は弁護されるが、それでも「出て当たり前じゃない」は弁護されると思わない。)
 謙虚に捉えるなら「危ないところで単子葉植物の作物を育てることのリスクが予測できるようになったので、コメの作付けは止めよう」という結論になる。

 ここで「セシウム拡散を少しでも防ぐため、プラントオパールを多量に含む植物を原発敷地内および原発周辺に植えよう」という対策をとるくらいは考えてみた。案外前向きでしょ。(というか僕はいつも前向きだ。現実的に効果のあることを提唱している。)
 が、単子葉植物って、大木になるようなのないんだよね。稲の類だと背が低すぎて、空気中から落ちてくる奴しか吸着できない。椰子の木ってのがあるが、福島では寒すぎて育つまい。
 しかし理想に近い植物が見つかった。「竹」である。繁殖力の強さ、成長の速さを考えるとこれ以上のものはちょっと見あたらない。しかもプラントオパールをとりわけ多量に生成するようなのだ。さらに原発が竹林に囲まれると、セシウムの拡散を抑えるだけでなく、地盤の強化にもつながる。気がついた私は救世主?いや「地震が起こったら竹林に逃げろ」という先人の教えを守っただけだ。
 が、またもや気がつくとまずいことに気がついた。竹林はどこにでもある。そいつらは、既にセシウムを選択的に吸収している。だから、「竹林がホットスポットになっている」のだ。これをときどきTVとかで放送されていた「里山の崩壊」なんぞといったキーワードと組み合わせると大変だ。人間の手が入らなくなった森が徐々に竹林になっていってるそうなので。つまりですね。簡単に言うと「荒廃した里山がホットスポットになっている」わけだ。いやあフリーのジャーナリストが突っ込みたくなりそうなところだ。確かにさあ、昔は風呂を沸かす薪をとるために手を入れていた林で、今は竹林になっているというもの、私だって心当たりはある。

 ここまでは竹林にスポットを当ててみたが、もうちょっと一般化して考えてみよう。緑の多いところ、例えば大規模な公園、がホットスポットと数えられているのは、単子葉植物の持つプラントオパールのせいだったと説明できる。なるほど、元東大教授が論文を書きたくないはずだ。南東北・関東の植生が破壊されるきっかけになってもおかしくない。「緑を守ろう」と主張したところで「健康のため放射能を集めるものを排除する」という大義名分の前には無力である。

 ここで「お茶は双子葉植物であるが、例外的にプラントオパールに化学式が似たものが生成される」「キノコは菌糸であるが・・・」なんてのがあれば納得感ありまくりなのだが、どうだろう。
(プラントオパールによる吸着説を使うと「放射性物質を含む瓦礫や焼却灰も、他のと混ぜて薄めれば全国で処理可能」という主張に対抗することもできる。生体濃縮が一部なりとも説明できたわけだから、「薄めたってまた濃縮されるからやはり全国で分散処理するのは良くない」と言える。)

 さて、来春は「筍」の放射線量チェックがブームになるぞ。

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