一昨年くらいまで、電力量はワット時で表される一方、節電量はCO2に換算されていた。社会問題ネタ、目次へ
なぜか去年からそれが無くなった。一つは地球温暖化がCO2とあまり関係がないということが何となく分かってきたから(今は太陽活動とリンクしているという認識に変わってきた)、そしてもう一つは火力発電所で天然ガスを燃やしまくる必要に駆られてCO2は考えないようになったからである。背に腹は代えられん、である。かくして節電は「CO2を削減するため」ではなく「原発を稼働させる必要をなくすため」に行うものとなった。それなら節電量をCO2に換算してもピンと来ないよな。だから節電量の単位として時代にあったものを提案しよう。ベクレルである。「○○ベクレル節電!」節電した電力分を原発で発電するとどれくらいの「死の灰」が出てしまうかと考えるのだ。心に刺さるだろう。これはもはや「ちきゅうにやさしい」ではない「いのちをまもる」である。
では計算。データの収集が難しい。というのは原発が絡むとどうも数字が恣意的になるからだ。東京電力が正直な数字を出さないのは言うまでもないが反対派の出す数字も信頼性に乏しい。極力元々の物理現象に立ち返って数字を出す。
100万キロワットの原子力発電所を1年間動かす場合に必要なウラン235は1トン。
1年間が8760時間だから、87億6千万キロワット時の電力量になる。
では、これがどれだけの死の灰を生み出すことになるかと、wikipediaの「核分裂反応」を参照。こーゆー物質がこんな割合でできるのね、量子の問題だから何ができるかは確率でしかわからないというのは一応納得。合計が44%にしからならないのは、燃え残りが出るんだろうと解釈。核物質の半減期が分かっているので、グラムあたりの放射能量は公式で算出できる。すると発電した電力量あたり何ベクレルの放射性物質ができるか分かりますな。
アボガドロ定数なんて何年ぶりだろう。1秒間に壊れる原子の数(つまりベクレル)は0.683を半減期(秒)で割ると出るのね。
1kw時あたり9.6。。。ざっと10ギガベクレル。つまり100億ベクレル。
生成物
収率
半減期
半減期(秒)
死の灰10kg内の放射能量
セシウム133
6.79%
安定
-
0
ヨウ素135
6.33%
6.57h
23,652
8.27E+019
ジルコニウム93
6.30%
1.53My
48,250,080,000,000
58592732702.34
セシウム137
6.09%
30.17y
951,441,120
1.95E+015
テクネチウム99
6.05%
211ky
6,654,096,000,000
383279250141.57
ストロンチウム90
5.75%
28.9y
911,390,400
2.93E+015
ヨウ素131
2.83%
8.02d
692,928
1.30E+018
プロメチウム147
2.27%
2.62y
82,624,320
7.80E+015
サマリウム149
1.09%
安定
-
0
ヨウ素129
0.66%
15.7My
495,115,200,000,000
431253026.82
8.40E+019
原子力発電1kw時あたりの生成放射能
9,594,543,825
ここまでデカイ数字になると桁を間違えていそうだが・・・というか間違えていてほしい。でもとんでもなくでかい数字になることは確実なんだろうなあ。あまりのインパクトにクラッと来た方、僕以外におられますでしょうか。食品に含まれる100ベクレルで騒いでいる人も多いというのに余りに桁違いの量に、電気を使うこと自体が犯罪のような気になってくると思います。もちろん異論はあるでしょう。原発反対派は、原子炉の中だけを問題にしていると反論をするでしょう。ウランを濃縮した残りのウラン238、あるいはウラン精錬・採掘の時に出されるおびただしい放射性残土これらも入れるべきだろう、と。電力会社は今や原発は一基も動いていないのだから、ベクレルで量るのはおかしい、というだろう。
でもね。原発が動いていたとき、節電量は火力発電の割合を掛けてからCO2に換算していたのかな?それに原発が動いていたときは、本当にこれだけの死の灰を出していたわけだしぃ。
でもまあ、原発が止まり続けていてくれれて「全廃」に持ち込めるなら確かにベクレルで量る必要はもう無くなるかもね。だから国策が原発廃止に向かうよう、今は節電量をベクレルで量ろうや。それでも「原発は動いてないんだから」という言い訳はしたいだろう。これは反対派だって同じことだ。インパクトがありすぎる。ところが大飯原発、急遽稼働が決まってしまった。つまりこれは「大飯原発の稼働を不要とするだけの節電を反対派すらできなかった」ということだ。
典型的には大阪市長。関西電力が出してきた数字を疑うだけで実はなにもしてなかった。交渉としてしていないふりをしながら、本当はいろいろ考えていて、関西電力が電力不足を理由に稼働を強行しようとした瞬間に「大阪市役所では次の施策で20%削減を実現する」とカウンターパンチ。このくらいの交渉はしないと説得力というものがまるでない。実は何も考えていなかった。結果的には自分たちがなにもしなかったが故に、何ペタベクレルという死の灰の生産に合意したわけだ。大阪市長は政府が絶対にのめない条件を思いついたもんだから、言いっぱなしで済ませられると思っていたんじゃないかな?でないと、入れ墨がどうの、国政参加がどうの、なんて言っている暇があるわけがない。確かによく思いついた。100キロ以内の自治体の合意をとれ、と要求したところで、政府は絶対に同意できない。だから滋賀県知事、京都府知事と連携すれば政府は折れざるを得ない。考えてみてよ。九州電力玄海原発から80キロにある長崎市長の同意は決して得られない。島根原発から半径100キロの円を書くと広島県が入る。
解決責任を放り投げて免罪だったつもりが電気の大消費地としての責任は残っていた。これを果たそうともしていない以上、今度は自治体が折れるしかない。そして関西電力の筆頭株主としての責任はまだ手つかずなのだ。関電が供給力上積をしなかったのは株主にも責任の一端がある、とされたって文句は言えないぞ。