事業継続プランをまじめに考える

 3.11帰宅できず会社に残った人間のリストを作った人も多かろう。僕もそうだ。  当初は社員の安全確認のことを考えて作ったんだが、本当は物凄く大事な資料になりうるのだ。

 実はあの地震が平日、しかも金曜日の午後であったというのは不幸中の幸いだったのだ。何が幸いだ、と怒る人もいるだろう、でもちょっと考えてみて?
 あれが早朝/深夜だったとしたら、もっと多くの人が逃げ送れて津波に飲まれている。休日だったら?そのほうがよかったってことも多かろう。が、多くの児童が組織だって避難できたから助かった、というのは無いんだぞ(大川小は知らん)。そしてあそこで隊列を組んで逃げた子どもたちは危機にたいする対処というのを心底分かってくれたはずだ。だから今の政治家に代表される危機管理ができない大人にはならないだろう。今後、必ずしも楽観できない日本の将来を支える背骨になってくれと期待している。
 で、その危機管理のできない大人たちは翌朝まで会社に残った人間のリストをどう扱っているだろうか。そのまま報告して終わり、かな。

 もし、危機管理しなきゃという意識を持った人間であれば、シミュレーションの資料にしているはずなのだ。あれが金曜日でなかったら、と。

 翌朝が土曜日であったから何も悩まず「みんな家に帰れ」と言えたのだ。コンビニのような小規模商店であれば責任感で「店を開ける」という判断ができた。翌日も営業する会社であれば管理職は会社に残留した社員のリストを見ながら悩まなければならなかった。誰を帰宅させ、誰に残ってもらうか。場合によっては来てもらえる人を呼び出さないといけないかもしれない。帰っちゃった課長には来て欲しいんだが、あの人家どこだっけ?鉄道は通じているか?個人情報がどうのなんて言ってられない時もある。
 君がいないのは辛いが家に帰れ!女性だからと特別視しているんじゃない、お子さんに母親の元気な顔を見せたいと思うのは人として当然のことだ。こういう判断も必要だろう。

 そもそも誰に残ってもらうかの判断根拠となる、何ができればとりあえず翌日の業務が回るか?というのが分かっていない。どんな業務になるかすら分からない。そもそも当日の問題山積状況できちんとした判断ができるわけがない。しかし、少し時間がたって落ち着いてからなら結果論を使って判断ができる。これが事業継続計画(BCP)の取っ掛かりになると思うのだがどうだろう。だから、後からでいいから社内にとどまった社員のリストを見て冷静に悩む機会を作るべきである。

 震災の前後で事業継続計画は当然練り直されるべきだと思うんだな。で、当然練り直しているはずだと思うんだな。ところがこういう中小企業庁のサイトを見ると
何を考えとんじゃこの能天気!と怒鳴りたくなっても許してもらえるだろう。初めの部分をあっさりと要約するとこうだ。
「東日本大震災のような緊急事態で大変なことになりました。しかしBCPを策定・運用している企業は事業の早期復旧・継続が図れ、そうでない企業は事業縮小・廃業に追い込まれます」
 民間のコンサルティング会社がこう書くならわかる。思慮深くない人を脅して飯のネタにしているだけだ。そんな胡散臭いところに相談しなければいい。が、これ中小企業庁なんだな。確かに言っていることは間違いない。が、緊急事態を経験が反映されてこうしよう、ではなくあおり文句として使われているようだ。これでは「震災のニュースばかりでテレビがつまらないのでDVDを借りましょう」とあおったビデオ屋を怒れない。(彼らも正しいことは言っている。)

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