選挙は無効だが当選は有効だ

 一票の格差は違憲だが選挙自体は有効。
 不思議な判決だが、そうせざるを得ないのは理解できた。何も社会的影響が大きいからではない。現在の司法制度ではさらに踏み込んだことはいえないのだ。

 ついに「昨年末の選挙は無効」の判決がでた。やっと出たか、という感想であった。がニュースで裁判の対象となった広島一区と二区で選ばれた議員にマイクが向けられるのを見て違和感を覚えた。この人たちの当選が無効?それはないでしょう。だって地域の代表に足る十分な数の票を集めているのだ。選挙は無効でも当選したことを恥じいる必要はない。もし当選が無効としたらそれは「一票が軽いから」という理由しか考えられない。つまり有権者が多すぎるからその人たちの一票は無効ってことになる。これほど人をバカにした話もない。

 そこで気がついた、選挙無効の判決は「一票が軽い」選挙区で出されたものだ。もしこれが「重い」選挙区で行われたとして「無効」の判断がでたときは選ばれた議員さんにマイクを向けるのもいいかもしれない。一票の重みが同じだった場合、あなたは議員として選ばれるに足る票数を集めていない。そしてその選挙が無効とされた。つまりあなたは議員の資格がない、とストレートに導き出せる。広島一区の議員さんは必要な得票数を集めているのだ。なぜ議員の地位が脅かされねばならん。

 かくして、一票の重い地域で「選挙無効」の訴えを起こさないと、裁判官としても「無効」とは言いにくいわけだ。軽い地域だと「選挙は無効だが当選は有効」ということになってしまう。しかし重い地域でこんな訴訟は起こらない(起こしてんのかな)。当たり前だ。訴訟を起こした方が損をする。更には原告的確の要件を満たしているかどうかすら怪しいものだ。門前払いされても文句は言えない。
 ここで思考実験。全選挙区で(つまり全高裁で)「この選挙は無効」と訴えを起こしたとする。軽い地域で「違憲・無効」重い地域で「違憲状態・有効」と色分けされたらおもしろいな。

 しかし広島の「無効判決」の影響は小さくない。つまり前回の選挙で次点だった人の中で、得票数が十分だった人が「自分は当選」と訴訟を起こす余地が出てくるのだ。なんかものすごく断りにくい。議員定数の問題があるから却下せざるを得ないが、選挙区ごとの議員配分を理由には断れないのだ。だってその定数配分違憲だから。かくして次点落選議員、得票数そこそこが集団で訴訟を起こして、最高裁まで行くと・・・裁判所が逃げなければ、誰は当選に足る/ここの選挙区は有権者少なすぎという判断ができて「そこで区割り勧告が作られてしまう」ということになる。裁判は長期化するのが常だが、国会審議よりはスムーズに進むと思うぞ。
 裁判所にしては出過ぎているかなあ。でも、三権分立なんだ。それくらいはしてもいいんじゃないか?政策を提言しているわけじゃないんだし。

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