うるう秒の闇

 みなさんはうるう秒というものを知っていますか?
 時間というのは、地球が1回自転する時間、つまり1日を基準にして決められました。
 1日を24時間、1時間を60分、そして1分が60秒です。
 ところがこれだと、1秒なら1秒を測ることがとても難しいのですね。1日という時間があってから、分けていかなくてはならない。そこで1秒という時間を別の基準で定義して、それの積み上げで1日という時間を作っていったわけです。この基準は極めて安定して振動するセシウムの原子です。

 ところがちきゅうは生きていますから、日によって回転が速かったり、遅くなったりします。全体としては徐々に遅くなっています。潮の満ち干きによる摩擦、などが関係します。すると、セシウム原子の振動から作られた秒の基準と徐々にずれてくるようになります。そこで時々余分な1秒を入れて地球の自転の開始と1日の開始を合わせるように工夫されています。これがうるう秒です。

 ところが、これを廃止しようという話が持ち上がりました。国際電気通信連合で2012年1月の総会で閏秒を廃止するという提案がされたのですね。今後、地球の自転は更に遅くなり、うるう秒を挟む周期が増えることを考えると、自然現象に逆行しているように思われます。コンピュータシステムへの負荷、などという理由付けがなされていますが、西暦2000年問題とは違い、従来から「既知のものとして」十分に対処されてきましたから、後付の理由、という印象は否めません。しかし裏には恐ろしい理由があったのです。原子の振動を基準とする時計が狂ってきたのです。

 1秒を物理的に決定する基準はセシウム原子だと先ほど言いました。自然界にはセシウムは133の分子量を持つ、ただ一種類の原子核を持つものしかありませんので、きわめて安定していたというのがセシウムが選ばれた理由の一つです。ところがうるう秒廃止の提案がなされる直前、福島原発事故で人工的に作られた放射性セシウム134、137が環境中に放出されたのです。これが原子時計をつくるセシウムに無視できない量で混じるようになった。そして134、137は自然界の133よりも若干重いですから、振動する周期はわずかとはいえ長くなります。どういうことかというと、従来セシウム原子が9,192,631,770回振動すると1秒、というふうに定められていましたが、同じ回数振動したときの時間は、セシウムが重くなったためにわずかに長くなってしまうことになったのです。
 つまり世界の原子時計が、ほんの少しではありますが、狂い始めたわけです。
 するとどうなるか、今後作られ/メンテされる放射性セシウムの混じった原子時計を基準にした1日の時間は、逆に短くなることとなりました。  実はこの現象、今までも起こっておりました。うるう秒の制度が導入された1972年から1985年までの14年間でうるう秒が挟まれたことは13回/12年と年数にして86%(1972年は2回導入)に達していますが、1986年から福島原発事故までの26年のうち、うるう秒が挟まれたのは11年(42%)と明らかに頻度が減りました。1986年には何があったか。そう、チェルノブイリ原発事故です。これに福島原発事故の生み出した放射性セシウムが加わると、原子時計で測った1日の長さはさらに短くなるのです。

 このために、いままで8時59分60秒、という形で、1秒増やされていたうるう秒ではなくて、8時59分58秒の1秒後が9時00分となるというマイナスのうるう秒が発生する可能性が出てきました。
 たしかにこれならコンピュータシステムへの影響は甚大です。国際電気通信連合の懸念も分からなくはありません。しかし、問題は別のところにもあります。われわれが基準としている1秒の長さが変わってしまった。それも原発事故の影響で。これが「マイナスのうるう秒」の導入で、世界中に知れ渡ってしまうのです。どれくらいの社会不安を引き起こすことになるか、想像もつきません。原子力で利権をむさぼってきた、政府や大企業にとっては決して人々に気づかせてはいけないことです。うるう秒廃止動議は原発事故の世界的影響の隠蔽工作の一部だったのです。

 科学者たちの良心でしょうか、うるう秒の廃止は見送られました。しかし、いつ次の動きがあるか分かりません。私たちは、こういう隠蔽工作が行われないよう、政府の動きを引き続き注視してゆく必要がありそうです。


 くれぐれも言っておきますがエープリルフールです。妙なリアリティがあるのでさすがの僕も去年は書けなかった。うるう秒廃止の動機が唐突だった印象は否めないしね。途上国の「そんなの聞いてないぞ」で継続審議になったそうです。日米が賛成、英独が反対というのもなんかそれっぽい。
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