次はあなたが死ぬ番よ

 気持ち悪かった。
 あんな気持ち悪いニュースはじめて見た。
 悪趣味にもほどがある。作っている人間は悪趣味と思わなかったのだろうか。

 シリアで山本美香という記者が流れ弾に当たって死んだことは知っていたが、妙に皆さん美化するのだな。で、中学生が追悼に励んでいるのがニュースで出ていた。
「シリアの悲惨な現実を現地の人は言えないからわれわれが伝えるしかない。」
くらいの使命感だと、特に実害はない。シリアで内戦が起こっていることについてどう思っているかマイクを向けられると普通の人は次のような当たり障りのない感想を述べるだろう。
「あらいやだわ。やめたらいいのにねえ。」(瀬戸内寂聴さんだと同じことを言っても重みがあるそうだが。)
 今のところ山本さんがシリアで内戦をやめるように署名運動をしたということは聞かないから、多分こういう感想で終わって欲しくないのだろう。では彼女には何ができる?実は何も出来ないのだ。何もしないならよかったが、とんでもないことをやっている連中がいた。

 彼女の遺志を誰かに継がせたいらしいのだ。多分彼女の母校だが、彼女の講演のビデオを流して有志に見せている。(新聞部か?放送部か?)更に気持ち悪いことに、彼女の言ったことを、皆さんに暗記させて唱和させている。
 で、その中の一人の女生徒がインタビューに答えて「山本さんに、次はあなたよ、と言われているような気がして・・・がんばります。」

 あゝおとうとよ、君を泣く君死にたまふことなかれ。
 つまりこの女性徒は次は自分が戦地に赴き、自分が死ぬ番だと覚悟したようなのだ。(すくなくとも命を賭ける気にはなっているのだろう。)
 まずはシリアに行く前に手ならしに竹島を取材してきて欲しいと思ったのは皮肉が過ぎるかもしれないが、つまりはそういうことだ。そういう教育をこの中学校はしているのだ。いつでもこの国は軍国主義に傾けるようで、気を引き締めねばと思い、うちの下のガキに説教した。気持ち悪いという感覚は伝わったらしい。

 なぜこのような気持ち悪い発想にいくのだろう。山本さんと彼女を美化するみなさんの問題意識の浅さである。悲惨な現実を伝えればそれで満足してしまう。ついでに殉死を美化する。ここに「どうすれば止められるか」という発想はない。もっとも止めるだけならそんなに大変ではなく・・・オバマ大統領の言うとおり空爆して戦いそうな奴は殺してしまえばいいのである。(なんかあったら「こどもたち」を引き合いに出す連中が、空爆反対に「こどもたち」を盾にしないのは逆に違和感があるなあ。)
 ひどい言い方だって?僕もそう思う。でも殉死を美化し、新たな殉死志願者を養成する方々はこの程度の「止め方」も考えていないんだよ。

 ところでさあ、なんでシリアで内戦なんて起こっているの?
 シリアにとっての外国人に伝えるならどういう実感を持って内戦に踏み切っているのかを伝えて欲しいし、単に悲惨さを見せ付ける相手は、内戦している主体だろう、と思うのだがどうだろう。でもそれが出来ないから、自分の母国に持ち帰っているだけなんじゃないかい?嫌な言い方をすればこうなるのだ。あなたのやり方を全否定するわけではないが、中学生に殉死を覚悟するような美意識は持たせないで欲しいと思うがいかがだろう。

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