子供に英語の前置詞を教えていた時に思い出した中3の定期テストの問題。社会問題ネタ、目次へ
私は迷わず by を入れたが×にされた。正解は in だそうだ。
「なんでbyが間違い!」と丁寧に職員室に質問に行くと。街の横を川が流れていることはないだろうから×だとか。!?
「in」が正しいとすると水源から河口まで一つの町の中で完結していないといけないはずだ。そんな場合があるのでしょうかと丁寧に反論。先生、そこで辞書を引いてくれて「through」が使われた例文を発見し、「throughなら問題なかったんだな」と説明してくれた。「なら、答案回収して in をまちがいにしてくれ」と要求。当然それは無理だからということで「by」は無事、正解になった。この話をしながら前置詞を説明したのだが、これは川と都市の位置関係の問題に留まらない、歴史的な問題ということに気が付いた。日本に by は少ないのである。だいたい都市の中を縦貫している。大阪の淀川だって、東京の隅田川だってそうだ。川の片方だけに建物が集中していたために「片町」と名付けられた例から分かるように「川の片方」はかなり特殊な例である。
ではなんで私が by としたかというと、中2の終わりまで住んでいたところがドイツのデュッセルドルフ市だったからというのと関係があろう。デュッセルドルフはライン川の右岸。左岸はノイスという別の町。街の風景はまるで違う。デュッセルドルフはあちこちにこんもりとした木があって、プリンツ=ゲオルグ通りなんかは分離帯が殆ど森だが、ノイスは空が広い。後から知ったがライン川はローマ帝国の国境であってつまり古い都市は川の左岸だけ、右岸だけにしか広がれなかったわけだ。つまり川は街の横を(by)流れているのが普通なのである。ドナウ川はあまりなじみがないがこれもローマ帝国の国境で、現在でもルーマニアの長い国境線をなしている。ハンガリーの首都ブダペストはドナウ川の両岸にまたがっているが、もともとは西岸のブダと東岸のペストが合併してできた町である。
もちろんヨーロッパにも市街地の中央を川が貫通している例は多く、ロンドンのテムズ川、パリのセーヌ川、まちがいなく都市を throughして流れている。前置詞を教えるだけに留まっていてはおもしろくないので、ちょっと問題をだした。
さーて、子供よ。日本にも by がなじむ都市がいくつかあるぞ。一つくらい挙げられないかなあア?
銚子。利根川河口の町であるが、県境なので都市が両岸に渡って発展していることは考えにくい。そもそも川幅広くて渡るのが大変。では他に川が県境になっているところは?東京/埼玉とか愛知/三重に見られるけども案外少ないんだよね。多摩川は連接都市の中を流れているみたいなもんだし。ならば東海道の難所、大井川の両岸の宿場町なんてどうかな。しらべてみる?さて「in」を正解にした先生はいったいどこを想定して「in」にしたのだろう。全くの謎であった。いまならありうる。平成の大合併で市域が広くなったため、水源から河口までひとつの市の中、というのそこまで珍しくは無くなったことだろう。あるいは本流にそそぐまでをひとつの川、としてみると、世の中には全長13.5メートルしかない「ぶつぶつ川」なんてのもあるからそれなのかな?