自由研究:藤原の風子

 台風の多い夏だ。こういうときは自由研究を早く片付けやすい。
 台風をネタにすると実験をしなくて済むからだ。かといって適当に検索してコピペなんてみっともないことをしてはいけない。今年の場合台風19号と20号が良いネタになる。
 こんな感じで盛り付ければ「実験をやっていない」と怒るような先生は自分が恥ずかしくなるだろう。

 ドラえもんの話の中で好きなものがある。のび太が実験用の人工台風を育ててフー子と名付ける話だ。フー子は東京を目指して一直線に進んでくる大型台風からのび太たちを守るために太平洋上で台風と対峙し、やがて双方とも消えるという結末だ。
 もちろん突っ込みどころ満載だ。意思を持つ台風を人工的に作りだせたとして、それが大型台風と張り合えるほどに東京湾上で発達できるか、台風が衝突したらともに消えるのかどうか、最初に読んだ時から疑問であった。東京湾上の発達は置いておこう。ひょっとしたら石油コンビナートが火災を起こしたのかもしれない。であればかなりの上昇気流をフー子は取り込むことができる。しかし2つの台風が衝突したときに何が起こるのだろうか。
 2つの台風が接近したときに何が起こるか、これは「藤原の効果」という言葉で表されるらしい。ところが、藤原の効果の結果、何が起こるかは全く持って不明、その時々で決まるということだ。「2つ以上の台風が接近して存在する場合に、それらが互いの進路に影響を及ぼすこと。その結果、相対的に低気圧性の回転運動をするなど、特徴的な動きをする」としか定義されていない。ようするに「相互作用で何かが起こる」というだけのことだ。これに名前を付けるなどなんと売名行為の好きな目立ちたがり屋かと思ったが、「藤原」という日本史で有名な姓だけに妙に収まりが良いのも事実である。
 それでも一応分類はあるらしい。

相寄り型
勢力が弱い台風が、勢力の強い台風に吸収されてしまう。
指向型 追従型
片方の台風が移動すると、その後ろをもう片方の台風が追いかける。
時間待ち型
東側の台風が北上し、その後西側の台風が北上していく。
同行型
2つの台風が並行して移動する。
離反型
東側の台風は加速して北東へ移動、西側の台風は西へ移動する。
この6つのパターンだ。

 さびしいことに両方が消える「フー子型」はない。しかしながら、朝鮮半島を回って日本海に抜ける台風19号と、日本列島を横断する20号が日本海で出合うように天気予報が出ているので「ではこの2つはどう動くことになるのだろう」と興味を惹かれた。そこで天気図や衛星写真を元にどのパターンになるかを自分なりに予想することとした。

 まずこの2つの台風のデータを見てみよう。http://www.tenkinoarekore.comによると。
 台風19号は8月20日の予報で23日に中心気圧950hPa、暴風警戒域350km
 台風20号は8月23日の実績で中心気圧950hPa、暴風警戒域も半径250kmと拮抗している。

 藤原の効果、6つのパターンのどれかを自分なりに予測してみた。
 まず、出会うのが日本海上と比較的高緯度な点から考えて、もう北方向にはいかないであろうと予測でき、つまり「時間待ち型」は起らない。
 また既にジェット気流のコースにあることから、片方が西方向に進路を変えることは考えにくく「離反型」はありえないだろう。
 出合った時、ともに進路は東を向いているが、台風19号が西、20号が東と位置関係がはっきりしていることから「同行型」も考えにくい。
 双方の勢力に大きな差がないことから「相寄り型」「指向型」の可能性も低いのではないか。
 消去法的に「追従型」になると思われる。しかしこれって「効果」という程のものなのだろうか。台風が2つある。台風は自力では動けないので周囲の同じような力に押されて同じように動く、だけである。低気圧なので風が中心に向かって吹き込んでいることから、多少なりとも中心の距離は近づきそうであるが。

 実際の位置については衛星写真を高知大学が公開してくれているのでこれをみて確認した。やはり追従型と言えるだろう。

2018年8月13日 10時26分
2018年8月13日 14時26分

 藤原の効果に「両方とも消える」はない。しかしなんとかフー子のような「ともに消える」事象が起らないか最後に考えてみた。台風の風の回転が同じ左回りであれば、吸い寄せられこそすれ打ち消し合うことはない。であれば一方が右回り、もう一方が左回りであれば消えることが考えられる。これが現実に起るとすれば一つは南半球で発生し、もう一つが北半球で発生する場合だ。この2つが衝突することはありうるのだろうか?赤道には「貿易風」という一定の風が吹いている。これに乗って赤道に引き寄せられることは考えられなくはない。
 しかし残念ながら、赤道においては、台風の渦を作るコリオリ力が働かない。つまりは台風はいずれにせよ回転エネルギーを失って消えるのだ。しかしそれを見た私は間違いなく声援を送るだろう。
「フー子がたたかっているんだ。」「がんばれフー子」。


どうしても実験を入れたければ、風呂に水をはって、同方向の渦巻きを二つ作った場合、逆方向の渦巻きを一対作った場合、で渦の消え方を確認する、だろうか。

 ちなみに今回台風19号、20号で検索した結果、藤原の効果を検証した動画らしきものが見つかった。多分上記と言ってることは違っているだろう。それでいいのだ。先生からツッコまれたら「ならそういった他人の記事をコピペしたのを自由研究とした方がよいのですか?」と質問すれば問題はなくなる。

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