香川のゲーム条例は好成績を上げるだろうか?

 香川県の「ネット・ゲーム依存症対策条例」つまりゲームは1日60分、という奴。
 個人的には「そーだろーな」である。横断歩道を渡っている最中でさえ、スマホから目を離さない大人が当たり前のようにうろうろしているのだ、子供ならすぐに依存症になってしまうだろう。
 むしろこれに反対する人の気持ちが「ネット課金が減って儲からなくなる」という理由を除いてわからない。「現代に蘇った焚書である」と言っている人がいると「ネットに依存するとここまでおかしくなるのか。絶対に規制しないといけないなあ」と確信するに至る程度である。

が、本当にネット依存症防止の効果があるのだろうか。
これは検証しないといけないだろう。
えっとー、総務省が情報通信白書で「ネット依存傾向の国際比較」というのは出しているのね。これの県別比較があれば、年齢別があればなおよいのだが、みつからんなあ。というわけで「都道府県別ネット依存」あたりで見てみると、  こんなのがあった。都道府県別 1日の「ネット使用3時間以上」かつ「SNS使用30分以上」比率。よし、これで考えようと思ったらなんだ、全部女性が対象か。確かに「ネット使用3時間以上」という基準だとクラウドなんか使ってSlackあたりでコミュニケーションとっていたらすぐに達成してしまうなあ。

というわけで「スマホ・携帯を1日3時間以上使用している人の割合」ストレスオフ・アライアンスというところがとっている統計だそうだが、元データが一般公開されていないので、ダイヤモンドオンラインの記事から孫引き。男女別かい。うわっ、県によっては男女で倍以上の差があったりします。びっくりです。県外からの大学生が多い県がヘビーユーザーの割合が多いということもないなあ、男女別人口比率をかけようかと思ったけど高齢者で差がつくのは分かり切っているので、とりあえず「足して2で割ります」。香川県18位です。相対的に見て、ですが全然大変ってことはありません。

 なんで手間のかかることをしたかというと、この条例案「インターネットやコンピュータゲームの過剰な使用は、子どもの学力や体力の低下のみならず睡眠障害やひきこもりといった問題まで引き起こすことなどが指摘されており」なんて書いてくれている。
 さて、ほんとにそうかいな、というのを実証しようとしたわけよ。

 全国学力・学習状況調査の得点と相関を見ると「無関係」。県別、というだけで全年齢層のスマホ依存と小中学生だけの学力を比較するのはあまりにもおおざっぱですが、ここまでくるとこれ以上細かい調査をしても無駄でしょう、感が広がります。ここは使用時間だけの統計であって、依存症の統計ではないだろう、という反論には「だって条例は1時間と制限しているんでしょ。それを考えると時間だけで十分です」と応えられるのですが。
 全国体力・運動能力、運動習慣等調査との相関を見る気がなくなるほどでした。
(とはいうもののストレスオフ・アライアンスから年齢別データを有償ででも購入して相関を見る必要があるかもしれない。というか香川県、当然やってんだろうなあ。)

 まあ、中学生ディベートの定番「スマホ利用は是か非か」の資料には使えそうですね。
「学力低下との顕著な相関は見られない」。
 ちなみに算出した相関係数は-0.27。確かに「強いて言えばスマホ見ているほうが成績が悪い」。なので、ここで香川県が学力を多少伸ばしたくらいでは「従来の観測の範囲」にとどまる。「想定の範囲」にするには「グン」と伸ばさないといけない。(逆に言うと香川県のゲーム大好き小中学生の場合、全国学力調査の際、気力が充実しなくて点が下がると、条例を引っ込めろという潮流が起こる可能性があるってことだ。さすがに組織的にはやらないだろうが、、、でも現代にはSNSがあるなあ。)

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