「非常時にこそ、人の"本性"というものは現れる」という言い回し。社会問題ネタ、目次へ
もしそれが本当であれば、日本人は、少なくともその指導者階級は「思慮が浅い」ということが言えそうだ。「8割おじさん」と自称する北海道大学社会医学分野教授、西浦博。
こんな主張に乗って「人との接触機会 8割削減を」と西村経済再生担当大臣が言っている。安倍首相も外出7割減、とか言っているが、なぜ7割かというと、西浦教授本人が「7割でいいんだけどどうせ風俗の皆さんは聞かないから他の人は8割ね」なんて解説をしているので、安部首相が元の値「7割」、西村大臣が風俗を織り込んだ「8割」という言い方をしているのだろう。このへんは「料亭を閉鎖されてはたまらない」という政治家の事情があるのだろう。公園の花見はダメでも安倍首相夫人のレストランでの花見はいいといういつものダブルスタンダードがあるからどうにでもなると思うのだけど。さて、西浦教授の主張の穴は、たとえばアゴラの池田さんが《「基本再生産数2.5」の根拠は何もない》などと指摘してくれている。
うちのニョーボでさえ「この人が減らせといっている『接触』ってどう定義されているの?」と疑問を呈している。私による批判はもっとシンプルだ。外出半減で十分じゃない?
さて接触機会を8割削減するとしよう。とりあえず接触が「外出」に連動して生ずることとして考えてみる。自分がいつも通り行動して8割削減するためには、向こうから歩いてくる人が8割減ることが必要である。しかしながら自分も外出を8割控えるとすれば、
(1−8割)×(1−8割)=0.04=4%
つまり96%削減してしまうわけである。悪いこととは言わない。しかしあまりにも厳しく、不必要と言われてしかるべきである。8割減で済むのならもっと少なくてもいい。その分経済を破壊しないようにするのが西村経済再生担当大臣の考えるべきことであろう。接触を8割減の2割、つまり1/5にすればいいのであれば、外出を√5分の1とすれば実現できるのである。つまり外出を半分に減らし、さらに外出中の接触を減らすために外出時間を都度1割程度減らせばよいのだ。これなら何とかなりそうでしょう。
これに対して西浦教授は具体的にどれだけ制限すればいいか何も言ってない。「絶対8割」という割には、「外出(ここでは鉄道利用者)7割減」でも不十分と主張しているように読める。外出を√5分の1とせず、半分としたのは人数を半分に減らすほうが「今日はA班勤務、明日はB班が会社に出てきてね」と管理しやすいという理由がある。その分出社組は寄り道せずに帰りましょう、ってことだ。何とかなりそうな気がしませんか?
ここで製造業のように多人数が出社せざるを得ない業種があれば、テレワークに適したIT企業と出社枠をバーターして・・・なんかCO2の排出権取引みたいになってきたなあ。小学生でも気が付く子は気が付きそうなはなしである。にもかかわらず、旧帝大の大学教授や大臣、首相が気が付いてないということはありえない。つまり彼らの言いたいことは
「俺たちは今まで通り動くから、自分たち以外の人間だけが外出を自粛しろ」
であるとしか考えられない。人格は信用してないが知能を信用するとこうなった。それとも逆にとらえられたほうがいいのかなぁ?しかしながら「接触」をどう定義するか?という問題は残る。主張している西浦教授が何も言ってない以上、ほかでどう考えられているのかを引っ張ってくるしかない。
そこでまたもや「皆さん健忘症?」と言いたくなる事例なのだが、
感染シミュレーションは、明日にもH5N1インフルエンザが発生すると懸念されていた時にしっかり行われているではないか。国立感染症研究所、感染症情報センターの
「新型インフルエンザに関する拡大伝播モデル」
ここでは半径1メートル以内にいる、と定義。さらには実際の移動データを用いて0.1時間単位に感染確率を計算して、どのくらいの速度で感染者が増加するか、地図上にプロットして視覚化している。なお、基本再生産数だがたぶん西浦教授より小さい1.9で計算しているようだ。
これに対して西浦さんは、学術論文においてすら「接触」を定義していない。
このいい加減さを許すと、西浦教授の予測がいかに事実に反しようと「接触は、ハグやキスのことと考えていた」と後出しで言い逃れできるのだ。これでは科学と言えない。
にもかかわらず西浦教授、《数理モデルの数値が政策として通ることは、今までの感染症対策の歴史上はなかったことです》なんて喜んでいる。でもこれ、数理モデルのつもりなのかなあ。
風俗営業に指示しても守らない、というのを数理モデルに組み込むのは構わないだろう。しかし「政策」という単語を使うならば、風俗営業法を使って「営業中止を指示してでも接触を減らしてください」という提言がセットにならなきゃ嘘だろう。そうすれば、一般に要求する接触機会は6割減、としたので済む。外出2割減+早く帰りましょう、だ。
風俗が自粛しないことを認めたうえで「8割」を繰り返すだけでは「このおじさん、ススキノの常連なんだろうなあ」と勘繰られて説得力8割減である。(《若者が飲み会で、ふざけたキスでうつったなんてケースでは、軽症で済みます。》とポロリと言っているし。一か月前なら若者は発症しても軽症、で通じたかもしれないけど。)これならできる!これならやろう!と皆に納得させてこそ提言として有効であるといえよう。
「志望校合格のためなら毎日16時間30分(1日の8割)勉強を!」と指示されれば「それは受からないと言っていることだろう」と受け取られて、まあやったとしても3日かなあ。でも「1日4時間50分」なら誰だって「なんとかやってみよう」にならないかい?もっとも先の感染症情報センターのモデルも正しいとは限らない。
同一のモデルを、新型インフルエンザの拡大に適用した例も発表されているようだが、それによるとウィルスが持ち込まれてから50日目にはほぼ終息しているのだ。
つまり日本で最初に確認された新型コロナの患者が発症した1月28日から計算しても50日後は3月18日である。この時には大体の人がかかってしまい、新規発生がほとんどなくなっているということだ。しかし今でも大騒ぎする程度には患者が発見されている。
しかし、きちんと再計算が可能なように細かい数値を定義して算出法も公開しているわけだからきちんと見直しができる。次のモデルはもっと良いものになっているのは間違いない。このへんが西浦さんとは違うところだ。あるいは今感染しているのは満員電車に乗らない人がほとんどを占めたりしているのかな?しかしこのモデル、正しいのかもしれないよ。北海道独自の緊急事態宣言が終了となったのは3月19日というのがなんとなく合致しているような。
北海道の鈴木知事はやり手だって話だ。なるほど、そういえば元東京都庁の職員だったし、この辺のことが念頭にあったのかな。