七段階SD法が生まれた日

 アンケートの設問で、そう感じる程度を区間を区切った数字で回答させる方法がある。
 「SD法」というらしく、個人的には「なんで誰でも考えつくようなやり方に名前つけるんだろう」と訝しく思っている。
 コトバンクによると「早い?遅い、明るい?暗い、重い?軽いなどの対立する形容詞の対を用いて、商品、銘柄などの与える感情的なイメージを、5段階あるいは7段階の尺度を用い、判定する方法」なのだそうだが、SD法そのものは数値を回答させることそのものを指す。七段階の尺度を用いる、というのは比較的新しく、私はそれが生まれた日のことをはっきりとおぼうえている。

 当時大学に入ったばかりの私は確か英語の時間、大学院生の「心理テスト」に参加するはめになった。出題は「次の単語について、丁寧か、丁寧でないかを−10〜+10の間で回答してください。」
 注意事項として「あまり深く考えず、直感的に」。随分と「直感的に」が強調されるので私は怒った。「直感的というなら、どうしてー10から+10まで21段階の細かさで答えさせるんだ。人間が直感的に感知できるのは4までだろう。」
 大学院生はその時、今までの研究を捨ててでも私の話をじっくりと聞くべきであった。きっとこう言ったと思うから。

 「でも4段階しかないというのは寂しいよね。それはわかる。じゃあプラスとマイナスに分けて−4から+4でやってみようか。ちょっとまってね、想像するから。あ、駄目だ、プラスかマイナスかを一度ゼロで分けるっていうワンクッションが入るわ。じゃあ−3から0、0から+3でやってみよう。ゼロを含めて4段階ね。(再び想像)。うん、これならうまくいきそうだ。」
 その大学院生は「七段階SD法の提唱者」として、そこそこ有名になれたと思う。(当時SD法はあったが七段階はなかった。)
 実際には大学院生(群)は自分が何を言われたのか全くわからないような顔をしていた。私も仕方なくアンケートに回答してその場は終わった。私が「七段階」に気がついたのはその日部屋に戻ってからである。
 大学院生は私の文句を真摯に受け止めて、この21段階のうちどの数字が選択される確率が高かったか、これを調べてみるべきだったろう(やってるわけないけど)。比較実験として11段階とか7段階とかと比べてみてはどうだろう。ところで公式に七段階SD法を提唱した人は、特定の数値に回答が集中しない、あるいは回答が出される時間が短い、選択の幅が大きくて数値処理で有意な結果が出やすい、このへんのバランスがとれているのは七段階、って実証してるんだろうなあ。

 従業員の意識調査もそういや七段階が多い。この問題作った人は世界で初めて七段階SD法を思いついた人間に出題するという大それたことを自分がやっているなんて意識はまったくないのだろうなあ。

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