ノウハウとハウツー

 似たような意味のある言葉ではあるが、以前から「ノウハウ」のほうが選好されているような気がしている。ちょうど「戦略」と「戦術」で「戦略」が濫用されているようなものである。
 こうなると「性(SAGA)」が出て「ノウハウ」という語をあまり使いたくなくなる。とりあえずは「ハウツー」は体系的に言葉で説明できるもの、「ノウハウ」はできないもの、という使い分けをしてきた。

 ところが、コミケに行った人がブースの配置を熱心に説明してくれたのを聞いてピン!と来た。押し寄せてくる来場者を捌くための工夫を聞いて「なるほどこれがノウハウか」。
 来場者を捌くためのやり方としては、例えば
・列を作る。(最後尾にプラカードを置く)
・整理券を発行する。
・事前抽選制にする。
といったものがある。文章化して説明しやすい「ハウツー」本的内容だ。

 しかるにコミケは東京ビッグサイトの構造や、人気不人気の別を活用して、多くの人を整然と捌いているそうだ。
・角が三角形に切り落とされているがゆえにできる余裕スペースに列を誘導する。
・人気ブースからの列をあまり混みそうもないブースの間に作る。
・最人気ブースは出入り口から外に列が作れるような位置に配置する。(同時にアクセスもしやすい)

 これぞ「ノウハウ」。確実に存在し、伝達もできなくはないが、かといって一般化できない(しかし効果は絶大)。つまりその時々の状況に応じて作られた効果的な手法である。おそらくは今年最大の発見。

 こういう風に分けて認識できると、いろいろと応用が利く。
 自称進学校は偏差値を上げるハウツーはあるが、○○大に合格させるノウハウはない (難関私大に合格させるノウハウのない高校は、偏差値を上げるハウツーで通用しそうな地方国立大を推す。)

 ときどき思うが、自分の設計したプログラム、なぜか拡張するときに「やりやすい」要素を盛り込んでいたりする。ほとんど無意識にだ。自分では教科書通り「ハウツー」しかやってるつもりはないのだけども。潜在意識にはそれなりの「ノウハウ」がたまっているらしい。いや、「潜在」にとどまらず、確かに意識しているなあ。「このプログラム変に動かしても今より事態を悪化させない」。具体的にどう考えて設計しているかはわからない。
 それを考えると「ノウハウを瞬時につくる能力」というもの、存在はしそうだ。さて「コンサルティング会社」というもの、マニュアルに書かれた「ハウツー」をいかにその会社に合わせた表現に変えてレポートとして出していそうなことはわかるが、その会社の状況ならではの「ノウハウ」を作ってちゃんと伝えているのだろうか。ノウハウとハウツーを分けると、コンサルティングに高いカネを払う意味があるのか、判断できるね。

 人の目に見えない多変量解析要素を見つけ出すAIのアルゴリズムは、この辺も網羅しているのかなあ?これができれば人間は勝てないかもという気はする。ただしこれを実現するためにはAIに与える事象をちゃんと選別しなければならないような気がする。少なくとも、例えば文章だと「推敲前/推敲後」を分けて食わせないと並の人間のレベルにも到達できないだろうな。
 逆に言うとこれをAIに与えれば、良さげなものができそうな気はする。今のAIはいきなり完成品〜完成度はまだまだのところがあるが〜しか作れないんでしょ。

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