横浜が優勝し、大魔神佐々木が「史上最高のリリーフピッチャー」と讃えられたとき、NHKは「スポーツスペシャル、江夏の21球」を再放送した。9回の頭、ランナーなしの状態から出てきて押さえる佐々木もたいしたものではあるが、ランナーを背負った場面でコールされるストッパーを忘れてはならないというメッセージが伝わってきた。なお、広島ファンの私はこの21球の場面をリアルタイムで見ていた。7回一死、「今から江夏を出して大丈夫?30球程度しか投げられないはずなのに」とスポーツネタ、目次へ心配興奮し、9回一死のスクイズ外しのカーブはボールがバットの中を通り抜けたのだと信じている口である。
そんなわけで、同じNHKがプロジェクトX「史上最大の集金作戦 広島カープ」〜市民とナインの熱い日々〜を再放送してくれるのではないかと待っているんだが、あんな余裕はもうプロ野球にないみたいね。プロ野球、近鉄とオリックスが合併する、と言い始めると、実はウチも・・・と言い始めた球団がいくつかあると噂になっている。プロ野球界の構造不況はかなり深刻なようだ。
これに対して東京読売巨人軍オーナーが「企業努力が足りない」と文句を言ったらしい。カネで4番打者をかっさらってゆくあんたに言われたくないわい!という意見も多かろうが、FAや逆指名制度を導入し、人気選手を集めてきたという点で企業努力をしていることは間違いない。(少なくともカネは出した。)しかし、この企業努力は間違っていたようだ。そこで何が間違っていたかを説明しておく。でないとまた同じことをやる可能性があるからだ。
要するに読売の企業努力は「新聞社の企業努力」をそのまま当てはめたものであって、「プロスポーツとして望ましい企業努力」ではなかった、ということだ。新聞のように、世帯毎に最低一部かならず購読、という超成熟市場の場合、企業の業績を伸ばす努力とは要するに「他社からシェアを奪う」ことになる。これをプロ野球に当てはめると「人気選手を獲得する」のが有効な手段となる。非常に分かりやすい。
ところが新聞と例えばテレビは並立するが、プロ野球は他のプロスポーツやエンターテインメントと競合する(テレビ中継の視聴率なんかまさにその結果だ)。他球団のシェアを奪うことだけを考え、プロ野球全体を発展に配慮しなければ、ジリ貧になっても、それはありうることなのだ。それどころか引き抜きによってシェアを奪うということは他球団の弱体化を招くということでもあるわけだから業界全体の衰退に繋がるのはむしろ当然のことである。
かくして、プロ野球衰退の最大の内部要因は、読売巨人軍による他球団いじめであることが明らかとなった。少なくとも、他球団の4番打者(当然人気選手)が、読売では控えに回ることも多いのだ。人気選手の露出を減らせば、当然全体の人気は下がるわなあ。
ところで「御社の企業努力が業界全体の衰退を招いた」と言われた場合の経営者の心中は普通はどんなものになるのだろうか。いずれにせよ「近鉄バッファローズ」は今年で終わりになるようだ。ここで野茂が帰ってきてくれないかな。トレード可能な期間はもう終わっているだろうから、サッカーのように期限付きレンタル移籍ってのはできないだろうか。野茂は大リーグに行くために日本球界と絶縁したと言われているが、「近鉄に最後の恩返しをしたい」と頭を下げれば拒む人はどこにもおるまい。
野茂としてもあと十数勝に迫った日米通算200勝を達成するためには日本に帰ってくるしかないのだ。いい口実だと思うんだが、どうだろう。もちろん来期は巨人に行くんだろうけど。