どうなるの?2005年のプロ野球

 ヘーゲルの「すべての世界史的な大事件や大人物はいわば二度あらわれるものだ」という言葉に付け加えてマルクスは「一度目は悲劇として、二度目は茶番として」と言っている。
 ところがこれは世界史的な事件でなくともそれなりにあてはまるようで、プロ野球、パ・リーグの再編問題などはこの言葉を思い出させてくれるに十分であった。近鉄・オリックスの合併に端を発する一連の動きは悲劇の香りがしたかもしれないが、ダイエー・西武の身売りをどうしようと考えると茶番でしかなくなる。

 2005年のプロ野球は仙台の新球団にかかっている、そのためにはよい選手をそろえることが必要で、これは各球団の選手会長がストの責任を取って新球団に参加すれば解決できる、と私は主張したが、いまんところ賛同者は一人もいない(さっさとFA宣言した真中、あんたはエライ)。新規参入が認められた楽天から、球団の非常勤顧問に年俸200万円でこないかという話もない。(なぜ、非常勤顧問で年俸200万円か、私がもっとも感動した「メッツ買います」からとってきた。「ワンアウトでおまえが二塁にいた時じゃ、ファウルフライをサードとショートとレフトが追っかけたろ。結局サードが取ったがあのとき三塁ベースはがら空きになった、投手がベースカバーを怠ったためにな。ゲームに集中しとればあの一瞬を見逃すはずはない。タッチアップして三塁にすすんどる。」)

 子どもたちに夢を、とか言ってストという契約違反に踏み切る根性もなかなかだが、たまには「子どもたちに責任を取ることを教える」こともやってほしいと思ったのだが、そうはならなかった。結局は「たかが選手」と言われても仕方がないレベルということだろう。文句言うだけ言って、弁当屋やファンに迷惑をかけて職場放棄してそれっきりなのね。人件費がかさんで経営がうまくいっていないのは分かっているんだから一律の賃下げに応じる、というのが一般社会の話なんだがナア。

 で、ストまでやってどうなったかというと新球団の参入は認められたが、一方ではダイエー、西武の身売り話が持ち上がった。しかしここで選手会は何も言っていない。要するに「たかが選手」たちは無力だった。シーズン中をいいことにストやって迷惑かけたくせに、なにかないのかね。オフシーズンだってテレビ出演のストならできるぞ。日テレに対して出演拒否するくらいのことはやってもいいと思うんだが。
 では、何であれば選手会にもできるかというと、実は何もできないのよね。でも、ダイエーの経営危機ならなんとかしたいという根性くらいは見せてほしかった。例えば選手会が自費でダイエーのコマーシャルを作って流す。主婦の店ダイエーのCMを主婦に大人気の古田が主婦の格好をして出演するというのはアリだと思うし、何かをやったということにはなる。古田がカツラをかぶってエプロンをして買い物かごを下げた、ややアナクロな主婦ポーズで「お買い物はダイエーね」と言っている姿、結構はまると思うのですが。

 でも有価証券報告書虚偽記載のとばっちりで、西武が身売りという問題になると、もう何と形容して良いか分からない。これだけの問題になると選手に対応できるわけがなかろう。かわいそうはかわいそうでもトップの不祥事で組織の末端までが苦労するというのはいろいろな企業でよくある話。同じ虚偽記載の問題なのに西武の選手がかわいそうで日テレの社員は仕方ないという理屈も通るまい。
 結局何のためのストだったんだ。子どもたちに冷徹な資本主義の原理の前には夢なんか何の役にも立たないということを教えるためだったのかね。まあ、落合も「子どもたちに夢を与えるため」という大義名分で自分の年俸を上げさせていたからナア、で選手の年俸が上がりすぎた結果、球団経営が破綻、分かりやすい因果関係だがあまりにも暗い。

 要するに中途半端に「子どもたちに夢」なんて言うからこういう資本主義の論理に対抗できないのだ。徹底的に資本主義化しましょう。要するにサッカーのようにやろうと言うことだ。ユニフォームに広告をバンバン貼り、トレードはまずは金銭。2軍なんて持たず、独立採算の二部リーグとする。

 でもこの選手を商品と割り切る、広告媒体として割り切るという考え方が理想的な教育システムを作り上げることに成功したという例もある。
 良い選手が高値で「売れる」ということは、イタリアやスペインのトップリーグでなくとも、二部リーグ・各国リーグのチームにもよい選手を育てる誘因が十分に働く。それらのチームによい素材を売るために、才能ある少年を探すスカウトが世界中でがんばる。結果として、よほどの奥地や鎖国した国でもない限り、サッカーの才能ある少年は見いだされて、能力にふさわしい教育を受け、努力次第でトップリーグで活躍する道が開かれることになった。
 生まれに拘わらず、個人の才能にふさわしい教育を受けられ、才能と努力にふさわしい舞台と収入がもたらされるという理想的な教育システムが、資本主義の徹底によってサッカー界では確立しているのです。これってすごいことじゃない?

 かくして、野球界ももっと徹底して資本主義化を図りましょう。こうなると野球という市場の狭さがネックになるかもしれませんが。世はインターネット時代です。インターネットによって爆発的に市場を広げれば・・・広がるとはとても思えませんが。

 現実問題として心配なことが一つ。新球団楽天ゴールデンイーグルス(「イーグルス」の商標はライブドアが押さえているので略称といえど使ってはいけないハズ)、ものすごく弱いのでプロ野球記録を歪めてしまうかもしれない。相手が楽天の場合、一試合最多得点や最多安打の記録は簡単に塗り替えられてしまうだろうし、最多勝・最優秀防御率などの記録を狙わせたい投手は楽天戦で沢山投げてもらう方が良かろう。
 それで本当に楽しいですか?
 負けても魅力ある球団だったらいい、と言ってもらえるのは多分阪神だけですよ。

 ええい、徹底した商業主義に走っちゃえ、選手から金を取るのだ!プロ野球でプレーする夢を持っていた元野球少年を試合に出す代わりに金を取る。これも夢を与えることには違いない。まあロス五輪で聖火リレーのランナーを募集して金を取ったようなものだ。
 選手会の大義名分とも決して矛盾はしないと思うんですが。

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