ホトトギス・フィールド

 愛媛県松山市の坊ちゃんスタジアム。2002年のオールスター戦が行われたところであるが、ここの命名権を得たので改称した。
 「ホトトギス・フィールド」である。

 オールスター戦で「坊ちゃんスタジアム」というけったいな名前を聞いたときから名前を変えたくてしょうがなかったのだ。松山市の団子を「坊ちゃん団子」と呼ぶのは分かる。小説の中に出てくるからね。しかし夏目漱石は坊ちゃんが野球をやっているシーンを描写しているわけではない。他に候補とするような名前がないというなら仕方がない。が、あるじゃないか。
 というわけで、改名時のスピーチを。

 明治時代、アメリカ合衆国からベースボールが伝わったとき、日本語ではそれを直訳して「塁球」と呼ばれました。ところが松山市出身の正岡子規門下の歌人が、それを「野球」と訳しました。子規自身、大変な野球好きで「野」「球」と自分の本名「のぼる」を掛けて「の、ボール」という号を使っていたこともあるほどです。では、なぜ「塁球」ではなく「野球」と訳したのでしょう。

 みなさん、子どもに戻って、バッターボックスに立ってみてください。とにかく遠くに飛ばそう、と思いませんでしたか?子どもの頃、野球は遠くに飛ばせば飛ばすほどヒーローになれるスポーツでした。投げる時は打たれまいと思い切り速い球を投げ込みました。そして打たれればボールを追って一直線に全力で走ったのを覚えているはずです。ベースボールを塁球と訳したのでは、塁に縛られたゲームの名前になってしまう。しかし「野球」訳したとき、それは野原でボールを追って走り回る、おおらかなゲームになったのです。
 正岡子規自身、そんな野球をやっていたのでしょう。そんな野球が大好きだったから、ベースボールを野球と呼んだのでしょう。俳句仲間でチームを作り、土手に寝っ転がってボールを追っている。と、声がする「おーい、正岡ぁ!おまえの打順だぞぅ」「よーし、一発大きいの打ってくるか。」

 そんな野球がやりたくて、そんな野球が見たいという願いを込めて、我々はこのグラウンドを「ホトトギス・フィールド」と名付けました。ホトトギスは子規のペンネームであり、門下の同人誌の名前でもあります。ひょっとしたら子規の野球チームの名前だったかもしれません。

 みなさん。このグラウンドで、力一杯投げてください。思い切り打ってください。そしてどこまでも走ってください。
 そんな野球をする場所として、我々はいわば野球のふるさとに野球のための野原を作りました。
 そんな野球を思い出したとき、そんな野球をやりたくなったとき、いつでもここに帰ってきてください。

 もー、おおうけ。残念なのはオールスター戦の前にこれを言えなかったこと。その時にスピーチする機会があれば、各プロ野球団も年1〜2試合はここで公式戦をやってくれたかも。また、このグラウンドならではのおおらかなプレーが特色となって全国のファンが期待してくれていたかもしれない。ちょっと残念。

 え、そういうおおらかスピーチをしたくせに始球式で変化球投げるなって?いや、打って欲しかったのよ。投げて/空振りなんて不文律に縛られた始球式したくなかったの。はじめから空振りねらいの打者に当てて貰うためには、こちらからバットをねらわないと駄目。ならば真ん中高めのボール球ならタイミングを合わせて、真ん中高めのストライクのコースでバット振ってくれるだろうと思ったの。だから真ん中高め、ボールからストライクになるパームボールを投げ込んだわけよ。おかげでピッチャーゴロ。そこまでは狙い通りだったんだけどね。一塁暴投は、恥ずかしかったなあ。(バックアップに走っていてくれたライトに感謝。)

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