一点を取りに行く

 ワールドカップ、決勝トーナメント1回戦、パラグアイvs日本。延長&PK戦になったため、今やTBSの看板番組である「けいおん!!」の開始時刻がずれてしまい、迷惑を被った。まあWalkmanX1000でワンセグを録画しておるのだが、こいつは操作が手動なので予約変更が簡単でよかったが。
 まあ、今迄で一番面白くない回だったので、アニメ自体もワールドカップで視聴率が落ち込むことを前提に作っていたのかもしれない。中野梓の居間が出てきたが、父親の所有と思われるレスポールゴールドトップ、エピフォンの57年モデルが再確認できなかったのが個人的には残念。この機種特定が正しいとすると、発売時期から考えて、梓がギターを始めてから購入したことになる。それまで使っていたレスポールを娘に弾かせた父親が、重い、ネック太いと文句を言われ、仕方がないかなと思いながら、それでも娘に自分のギターを弾いてほしいと考えて、歴代レスポールの中で(Jrを除く)ネックが特に細いといわれる57年型ゴールドトップのコピーモデルを購入したのであろう。なんといじらしい親心。ワンカットでこれを示すとは、京都アニメーション、恐るべき表現力。
(ただし、梓は「レスポール」でなく「ギブソン」全体に「重い・ネック太い」の偏見を持ってしまったようだ。でなければ、さわ子先生のギブソンSGビンテージを見つけたとき「売る前に貸してください」と頼んでいるはず。あ、私はこういうことをよく言いますが、決して無理してひねり出しているのではなくて、当たり前のように思い浮かんでくるのです。自作の傲慢な台詞集「適切な問いかけが設定できれば、回答は7秒で作れる」のとおりである。もちろん膨大な無駄知識がある分野に限られるが。)

 それはそうとして、パラグアイ戦、岡田監督の計算どおりの試合で非常に納得。計算不足があるとすれば、GK川島の経験不足。Jリーグでプレイしただけでは「南米一流選手のPKのボールがあんなに速いなんて」は分かってなかったろう。ボールが来る方向の予測が当たっても止められなかったのはこれが理由と思われる。
 計算どおりと思うのは、98年フランス大会のときからそうだったが、岡田監督はフォワードに点を取ってもらうことを期待していなかったから。フォワードは最前線でプレッシャーを与える守備要員と見ている。だからミッドフィールダーを形式的にフォワードに置く。点を取るのはセットプレーか自殺点。それを守りきる。だからたまたま点が取れれば勝つし、取れない場合でも引分けに持ち込めればOK。今回はポリシーとして一貫しており、「90分もあったら1点くらいなんとかなるでしょ、実際グループリーグは勝ち上がったし」と主張されれば反論の余地はない。1勝2分けでも突破できるから戦略としては間違いではない。決勝トーナメントでは通用しないだけだ。だから私は岡田監督を褒めはしない。フランス大会の目標達成方法を実現したことはえらいと思う。ただしベスト4という目標とは全くリンクしていない。

 ただし、こういう発想が蔓延すると日本サッカーは確実に廃れる。日本人はやはり野球なのである。「一点を取りに行く攻撃」これが好きなのだ。足を絡め、犠打を積んで貴重な1点をもぎ取る。思い切り薀蓄を絡ませられる。あるいは野球W杯、イチローの決勝の一打。
 1点の価値はサッカーの方が上だと思うのだが、なかなかこれがない。相手の隙を待つ、守備を崩す、という言い方はするが、ボールを回しながら運よく1点とれる機会を待つだけだ。理路整然と道筋をつける、という発想がない。少なくとも今の日本代表にはない。せめて無茶してゴールラインをめがけて走りこみ、ギリギリのところで相手にぶつけ、コーナーキックを貰うくらいのことはやれよ。

 サッカーでは1点が重過ぎるゆえに「1点を取りに行く攻撃」が難しいのは認める。想像すらつかないかもしれない。しかし、ドイツvsイングランドのクローゼの1点目。これはそうじゃないか。
 高地ゆえゴールキックのボールがいつもより伸びる、なんとなく相手の最終ラインは油断している。ならばキーパーが蹴り、クローゼが走る。もちろんボール1個分空いたシュートコースを確実に突けるクローゼだからできたことではある。しかしこれは敵を知り 己を知り 地の利を知って、ゴールを割るための手順を積み上げて、そうして取った1点じゃないか?
 「そして最後にドイツが勝つ」理由はこの1点をとるサッカーが出来るからではないかと思った。それが最初に出来たのは、ひょっとしたら1972年の欧州選手権、イングランド戦じゃなかろうか?主力6人が出場停止、戦わずして大ピンチ。前日、ネッツアーが監督室を訪れる。たぶんこういうことを言ったんだろう。「私かベッケンバウアーが責任を持ってシュートの打てるところまでボールを持って上がります。ペナルティエリアに持ち込めば、あとはミューラーがいます。ベッケンバウアーが上がったときは私が守備に下がります。」

 岡田監督も延長で森本を出しておけば、点を取りに行っている、という気にさせてもらえるのだが。特に南米の国がやっているように「点は個人技で取る」というメッセージだけは伝わってくるから。前半のFKをラッキーボーイの本田に蹴らせなかったのは、何か秘策があったのかね。本田が蹴ればあせって自殺点はあったかもしれないのに。
 日本が「あ、負けるな」と思ったのは、開始早々大久保のシュート。相手はまだエンジンがかかってなかったし、一緒に上がってきた味方もいたから、パスを出すか、キーパー正面でいいから枠内にシュートするべき。キーパーがはじけば1点の可能性は高かった。ところが大きく枠を外したところで「この時間にシュートをするのが大事と言うのは分かるが、点を取る気はないんだな」と思った。

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