高校球児を投球過多から守りたい

 春の甲子園、済美の安楽投手が投球数過多で沈んだ。
 投手生命に影響が出ないか、多くの人が心配した。
 とりあえず夏の地区予選で自己最速を更新したようで一安心であるが、当時はあまりにも酷い沈み方に、何とかしなければ、という問題意識を多くの人が持ったようだ。確かに甲子園優勝投手は、酷使のためか大成しないのが通常のようで、桑田、松坂くらいではないかな。ハンカチ王子もあの通りだし(さすが野村再生工場に最初からいたマー君は違う)、済美の前の優勝投手、福井もドラ1ながら広島で鳴かず飛ばずである。

 しかし、具体的にどうすればよいか、についてはいい解決策がない。投球数で規制を設ける?第2投手が大したことがない場合、相手チームは徹底した待球戦法をとれば勝てる可能性が上がりますな。連投規制なんてのも案としてでたね。でも高校球児に敗戦処理をやらせるのは酷すぎる。ダルビッシュの尻拭い、真壁君はルックスもいいし、横手から140キロ台の速球を投げ込むし、なかなかだったが。普通は「僕の投げる試合は負け試合」って思うことも少なくなかろう。そういえば、春、済美高校が紹介されるビデオで必ず映されたのが対東北戦の逆転3ラン。ぼーっと見送っていたのは「背中が痛い」と最後まで登板拒否でレフトを守ったダルビッシュ。さぞや恥ずかしかっただろう。もう見たくない、済美負けろ、の呪いにエネルギーを使いすぎたか27人目に打たれてパーフェクトを逃してました。

 というわけで「規制」によって選手を守ることは出来るかもしれないが、犠牲にするものも大きく、あまり「教育上」よろしくない。それこそいい投手を複数、「特待生」制度かなんかでかき集めてこられる「強豪校」有利になってしまいます。
 日程延長が一番でしょうが、これは費用がかかるので朝日、毎日がやらないでしょう。ライブドアあたりがスポンサーとして参入すれば別ですが、高校球児をキャラクター化してゲームにするのは無理がございます。
 というわけで「規制緩和」。彼らは「県代表」として甲子園に行くところに立ち返りましょう。
 「同じ県大会に出場した投手1名の甲子園への帯同を許可する。」
 これで解決できそうだ。

 「同じ高校のチーム」というのと「投手の健康」とどちらを優先するか、の問題だ。県外から有望選手を連れてくるのがたり前、になっている以上、同じ高校の人間でかためるのにこだわり続けるのはいかがなものか、と言えるまでになったわけだ。
 それは「完全な混成チーム」で県代表を作ると「単に強ければいい」ことになり、日常的に共に学び、努力することの尊さを教える教育的観点は抜け落ちる。が、どうしても負担が大きくなる投手に限れば、即座に却下されることにはなるまい。少なくとも、同じ県大会で、同じ目標に向かって、切磋琢磨してきた相手なのだ。
 複数校での合同練習を悪いという人はおるまい。試合でも部分的には認めたい、ということだ。それで有望な投手の選手生命が守れるのなら、検討に値することではないかな。

 ちょっとずれるがオリンピックサッカー代表のオーバーエイジ枠。吹奏楽部がない学校の友情応援、みたいなものと見てほしい。もちろん枠は使わなくても構わない。でも県で1校しか出られなかったはずのところ、1名とはいえ別の高校からも出場できるというのは、教育の機会均等という観点からも望ましいのではないかと思う。夢破れて落胆した投手のもとに依頼がくる。「甲子園で僕らを助けてくれ。」照れか興奮か、真っ赤な顔をしてその学校のグランドにユニフォームを着て駆けつける。気がついた相手が早速声をかける。「来てくれてありがとう。味方になればお前ほど心強い奴もいないよ。」

 が、この「ユニフォーム」が問題となるような気がする。それは自分の属している高校のユニフォームで出たいだろう。が、識別が難しくなるのは困る。結局は地のデザインは出場校に合わせ、胸のマークだけ所属校というあたりに落ち着くのではないかな。
 他にも、登板イニングの規制〜例えば出場校所属投手の合計イニングを超えない、とか考慮しないといけないし、「投手は足りているが1番打者がほしい」なんて声も上がった時の調整も今後必要になるだろう。また高校野球ではよくあることだが、呼んだ投手が強打者だった場合、サヨナラホームランなんか打っちゃうと、負けた方は割り切れないかもしれないな。だからと言ってDHも違和感がある。確かにすんなり行く話ではない。

 しかし、それでも、今年みたいに夏が極端に暑いと、なんとかならないかな、の感が強くなる。夏の太陽に潰されたエースは沢山いるからね。

 他校投手が登板したときのアナウンサーのセリフは、きっとこうなるだろう。
「本当はみんなと来たかった。
その思いを胸に、母校の誇りを一人背負って、今、甲子園のマウンドに上がりました。」

 僕は無条件に応援したい。みんなもそうじゃないか?

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