AIが野球の審判になるためには

 プロ野球のストライク・ボールの判定
 機械化したらどうか、という意見が常時くすぶっている。

 たまにきっかけがあると表に出ることがあるようで、佐々木投手の顔が気に入らなかったのか、マウンドに詰め寄った白井球審の行動が引き金になったのかな?今年も意見を表明する人が出てきた。
(津波で父と祖父母を失ったんだ。笑うのが苦手になったとしても責められるわけがない。)

 ただ今回が今までと違うのは
「AIで判定」
という主張が加わっていることである。
 でも違和感感じるよね「AIがいるかぁ!?」

 普通に考えて、ボールがストライクゾーンに入ったかの判定は、センサーを使えば十分である。ただし今までセンサーで実現しなかったのは、(政治的な問題の他に)機構的な問題があるのではないかと推測して、不完全なところをAIで補完、という考えはあるだろうが、みなさんそこまで考えていってらっしゃいますか?

 それにAIで補完するにしても問題が多い。投手の球が恐ろしく速くなった今、従来の常識では考えられない変化量が生じてきたのだ。160kmで無回転に近いボールであれば、ボール表面の部分的な空気抵抗の違いでとんでもない変化を起こすようになるらしい。
 だとすればAIにストライク/ボールの判定を任せるのは不安が多い。AIは従来の常識を基準とするからだ。

 しかし、AIでストライクかどうかの判定、をすることができそうな例を見つけた。「ハーフスイング」の判断である。これは打者のフォームをいくつも撮影して「これはスイング/これはバットが止まった」の判断とセットでコンピュータに取り込み、これで判定させることができそうだ。
 わたしの理解が確かなら、かつ、かいつまんだ説明を提示したのでよしとするならば、AIとははっきりした判断のロジックがない場合、実例を積み上げて規則性を見出してゆくこと、である。この声質はAIが「エキスパートシステム」と呼ばれていたときから変わらないし、また例えば幼児が言葉を覚えてゆくときの脳の理解の形成過程を模したものである。

 先日、会社で優秀なベテラン社員が辞めるというのでぼやいていたひとがいた。「あの人に引き継ぎ資料作ってくれと頼んだんだけど出来ないって言うんだよな。あのシステムには一番詳しいし、実際質問すれば、なんだってスラスラ答えてくれるんだけどきちんとまとめることは出来ないっていうんだ。」
 かのベテラン、別に嫌がらせをしているわけでゃないし、めんどくさいから作らないわけでもないと思う。ただ「実例の積み上げ」しか意識していないものだから、規則性をあえて言葉に出来ないだけなのだろう。そうであれば、いろいろインタビューして、そこから引き継ぎ資料を作ってはどうか。現実問題可能かどうかは分からないが、それがAIというものだろう。

 しかしながら、ここでAIの欠点が見つかる。資料ができたとして、システムの構造から体系的に説明したものではないから、つまり
「システムに修正が入れば使い物にならなくなる(正確にはどこが使えてどこが使えないか誰にもわからなくなる)」。
AIってそんなものだろう。

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