あの人だからやれた「総力戦」

 2023年8月27日、広島カープはベンチ入りすべての選手を使い切った。
 これについては異論が多い。もし選手にハプニングがあったらどうするんだ。
 しかし、新井監督は意識して全選手を使ったのだと思っている。でなければ延長12回、中村奨成を代走に出す理由がない。ベンチの全選手を使うことにより、チームとしての一体感を高めるとともに、文字通りの「総力戦」を体験させることにより、今後経験するであろう修羅場を乗り切る精神力をつける意図だったのだろう。

 その意図はさっそく次の試合で発揮された。
 リリーフ陣を休ませないと!と先発九里が踏ん張る。
 もう後には誰もいない場面で零封したアドゥアが今こそアピールだと投げ切る。
 そして末包が代打逆転スリーラン。
 最後は戻ってきたリリーフエースが締める。
 首位阪神のマジックが消えた。

 新井さん、どのツラ下げて帰って来たんですか。と温かく迎え入れられた四番打者は、メトリクスでは測れない「強さ」を植え付けるのに長けているようだ。ぜひ、自由契約にしてくれた阪神に恩返しするところを見てみたい。

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