レコードレビューで写真が付いている項目はCDが再発されてます。(しかも大半が紙ジャケ)ファンは急げ!
富樫雅彦のページへ戻るにはtogasi.htmlです。
富樫雅彦といえばこのアルバムです。(そりゃ、中には銀パリセッションという人もいるでしょうが(^^;)このアルバムは全5曲の組曲構成でライブ録音です(1974年のコンサート)。つまり、二度と聞く事が出来ない。ジャズの一般的なライブと同じく、アドリブが炸裂しまくりですから。面子は富樫雅彦、田中昇、中山正治、豊住芳三郎(perc)、池田芳夫、翠川敬基(b)、佐藤允彦(p)、中川昌三、渡辺貞夫、鈴木重男(fl,bfl)と非常に豪華。これで傑作にならない訳がないだろう、ってなもんで。
少なくとも、アルバムの最初の曲「THE BEGINING」の荘厳なイントロを聞いて次の「MOVING」のオスティナートを伴うオープニング自体は音楽を愛する人なら、非常に楽しく聞けるとおもいます。さながら、ちょっと現代音楽っぽい室内楽のような趣があると思います。
問題はMOVEINGのオープニング以降の「フリージャズ」のメソッドによる展開部ですね。これがヒットするかどうかであなたの「富樫雅彦」耐性度が決まります。できれば「耐性度」が有ってほしい。さすがに最初は苦しいと思いますがBGMで掛けていれば3回目位で慣れると思うのですが・・・
そして、「MOVING」の最後は最初のオープニングのリフで終わります。これが感動的なんだ。一応田園地帯の一日を描写した組曲、という構成をとっているらしくて、「THE BEGINING」で1日が始まり「MOVEING」で、動物が動き出す、というモチーフという事です。
さて次の曲「ON THE FOOTPATH」(畦道にて)でウォーキングベースのオステナートをかいくぐるように、富樫のパーカッションソロが炸裂!これも非常に禁欲的にパーカッションソロがもりあげます。問題は何故か途中でフェイドアウトすること。何で?
さて、このアルバムの最大の眼目「SPIRTUAL NATURE」が次の曲です。これまた、オープニングはメロディアスでロマンチックで素晴らしいです。問題は展開部のプレイヤーの「アドリブ」部分ですね。オープニングのメロディアスなオステナートをバックに、メンバーが「フリー」でアドリブしまくり。最初はクラシック畑の中川昌三さんのフルートです。いやー鳴いておりますねぃ。この辺(最初の10分)は抵抗なく聞けると思います。次は、巨匠「渡辺貞夫」のソプラノサックスのアドリブが炸裂。そして、この当時の盟友、ベース、セロ担当の翠川敬基さんのセロワークが炸裂。本当に炸裂という感じです。アニメの「セロ弾きのゴーシュ」のインドの虎刈りにくらべるとよっぽどメロディアスですが初めて聞く人はココでかなり辛いのでは(^^;)そして、ベースのオスティナートをバックに富樫さんのアドリブが来て、最後にコーダという感じですね。
最後は別途スタジオ録音の「EPILOGUE」です。これまたメロディアスなオープニングメロディの再現で、10人構成のライブではなく、3人で禁欲的に素晴らしく美しく奏でます。
個人的にはこの路線を突っ走って欲しかったんですけど、富樫さんはこれ以降「ギルド・フォー・ヒューマンミュージック」で少し手を変えた後、アドリブ主体で、構造的な構成は取らない少人数のグループという形を取り続けます。一ファンとしては、このアルバムのような構成は二度とない、と分かっていても、聞きたいのですよ。こういう構成的なアンサンブルを。
日本ジャズ界の屈指の名ベーシスト鈴木勲さんとのコラボレートアルバムであります。フリージャズの富樫テイストでもなく、ファンキーな鈴木テイストでもなく、不思議な味のアルバムです。しいていえば高橋勇二とのコラボレートアルバム「トワイライト」に似ている(知らないって。そんなアルバム。比喩としてつかえないぞ。)これ、富樫ファンとしては、逆に面白くないアルバムなのかもしれませんが初心者にはけっこうイケてるんじゃないでしょうか:-)
まずは、アルバムタイトルの「陽光」。これ、朝、昼、夕方をモチーフにした曲らしいんですが、確かに曲想ががらっと変わります。静かでメロディアスな、朝の部分から、躍動的なサンバっぽい昼、そして夕方にまた、朝の部分を思わせるメロディアスな曲想となります。鈴木さんのベースは凄いよ。基本的にサンバの部分はサンバっぽい富樫さんのドラムをバックに鈴木さんのベースが来るんですが、やっぱ上手いですね。
「東洋の黄色いたまご」これはお得意の富樫さんのドラムのオスティナートをバックに、鈴木さんのピッコロベースの弓とピッキングで鳴きまくり、という感じですね。で、音程も、リズムも意識的に微妙にずらしているそうです。お二人のチューニングが狂っている訳でも、リズム音痴とかのせいでもないぞ(笑い)。で、このずらしている、というこの感じが「東洋」なんだそうです。たしかに西洋音階の世界にはない「美」があふれていますね。
「ロンリー・ブルー」オープニングの「孤独を慰めるような」フレーズの後、富樫さんのドラム(ブラシですね)をバックに鈴木さんのチェロが泣いています。いやー、いいですねー。富樫さんのブラシも非常にきまってます。二人のコラボレートをバックにソリーナがいい味で微かに鳴り響いているのがまたグッドです。
「深海生物の歌」基本的に富樫さんのタムタムで歌っている、というスタイルなんですが、微かに後ろでソリーナが鳴っていて、それがいつもの味とは全く違った雰囲気を醸し出しています。タムタム、というかドラムは深海に住む孤独な、しかし確固として生きている「命」を表現しているそうです。
「シルヴァリー・フラッシュ」多重録音した軽快なベースとドラムをバックに、スピード感あふれる(といっても実際のテンポはそんなに早くない)ベースのソロが炸裂します。これ、メロディアスなフリーっぽいイメージでいい感じです。
「芽ばえ」やわらかい暖かさ。光のなかで植物が息づくように東洋的な色彩のオステナート(ドラムとベース)にピッコロベースが絡んでくるのです。当然、オステナートもスパークして、アドリブに走ります。
このアルバム全体に言える事ですが、通常の富樫さんと比べると、やっぱ分かりやすいですね。ポップス入ってます、って感じです。
傑作、スピリチュアルネイチャーの影に隠れがちでありますが、これだって凄い傑作であることはいうまでもありません。日本ジャズ界を代表するお三方とのコラボレーションと、ソロ演奏。どれも屈指の演奏だと思います。
「渡辺貞夫」とのコラボレイト曲「HAZE(朝もや)」「佐藤允彦」とのコラボレイト「FAIRY-TALE」、独演の「SONG FOR MYSELF」、「菊地雅章」とのコラボレイト曲「SONG FOR MY FRIENDS」どれも屈指の名曲でしょう。私的にはこの時期が一番波長があいます。
特にフリー系のファンの人には評判は良くないですが、朝もやをイメージしたという「HAZE」は東洋的な音階にチューニングした旋律とドラムの中で(本来パーカッションが裏方的な筈ですが)バックに回ったパーカッションが歌いまくるのが凄いです。勿論ナベサダ様も頑張っているんですが、表情が割りと同じなので、変化付けまくりの富樫さんに食われています。ま、意識してやっているのかもしれませんが。
一方、フリーで走りまくる「FAIRY-TALE」は、表情がパーカッション、ピアノ共にあまり変わらなく、高度な演奏ではあるのですが、いまひとつ食い足りない感じなんですね。
「SONG FOR MYSELF」は独演で、やはり東洋的なチューニングの太鼓で歌いまくっています。「陽光」の「深海生物の歌」にちょっと似ていますね。(逆だっつーの)
「SONG FOR MY FRIENDS」これはこのアルバムの白眉じゃないでしょうか。「菊地雅章」さんが、「富樫は会うと喧嘩ばっかりしているけど、やはり凄い。ありもしないベースの音が聞こえる」と述懐しているのですが、いやー、本当に聞こえますよ、ありもしないベースが:-)
そういえば「FAIRY-TALE」と同じ構成でありながら、ここまで変わる物か。同じような旋律でありながら、凄い表情の変化が。タメ、が有効に使われています。
浜松を根城にするスタジオEMACという有限会社が、自主製作で出しているレーベル、「Trial Record」からの第4段で、多分もう在庫切れと思われますが、店頭ではまだ見かけます。なお、トライアルレコードでは通販もしていますから、ファンの人は覗いてみてもよろしいかと思いますね。
面子は非常に豪華で富樫雅彦 (perc)、井野信義(b)、峰厚介(t.sax),佐藤允彦(p)、山下洋輔(p)、日野皓正(tp)ですもん。
で、演奏内容はといいますと、これフリーという感じではないですね。とはいえ、スタンダードでもないし、うーん、スタンダードの進行をベースに、ストイックにアドリブが出てくる、って感じですけど、説明しにくいです。これまたファンとしてはゲットしてもいいんでしょうけど、このノリは非常に苦しいですね。音楽的に非常に高度な事はやっているのは分かりますが、なんというか、そう、私が聞いたことの無い種類の音楽で、自分がどう反応していいのか分からないので、評価が出来なかったのです。
さすがに山下さんのパートはもう「ヤマシタ」って感じなんで問題ナッシングなんです。「ヴァレンシア」なんて2台のピアノでフリーしまくりで良いんですが、スタンダード系の皆さまをフィーチャーする曲の場合なんか、なまじっかJ.J.Spritsのスタンダードを聞いていると、「なんでこの面子でスタンダード(ビバップ)でスパークしてくれないのかなぁ」と思うからなんでしょうか・・・・
ただ、富樫さんとしては、これ間違いなくスピリチュアル・ネイチャーの感動を再度得たいというのが動機なのではないかという感じなんです。テイストとしては、ギルド・フォー・ヒューマンミュージックの後期に味が似ている、と不意にこれ書いてて気が付きました。:-)
そうだよ、そうだったんだー。そうすると、今までのCD化されているアルバムでいまいち、って感じのある奴もうなずけるなぁ。そうだあの感じですね。つまり、沈黙も音楽の一部、というのか、やたらリズムが崩れるんですが、リズムが崩れるのもリズムの内、みたいな。
そういえばあちこちで書いてますけど、DENON時代のLPが続々とCD化されるので、これから聞き直すにちょうど良いですね。
例の45周年コンサートに合わせて再版されるCDです。同名のアルバムはゲーリーピーコックとの版とスティーブレイシーの版と2枚ありますが、今度再版されるのは、スティーブレイシーとの版の奴であります。面子は富樫雅彦(perc),スティーブ・レイシー(ss),J.J.Avenel(b)です。
ここで、ああっ、と思ったのは、スティーブレイシーや富樫さん、キャリアが30年以上あるので、当然スタンダードの洗礼を受けているので、フリーをやっていても、根底のリズムがスタンダードなんですね。特に、このアルバムのベース担当はJ.J.Avenelという割りと若い人で、かなりバリバリベースを弾くのですが、さすがにレイシーのユニットで働いている人らしくて、同じフリーでもジョンゾーンなんかの奴とは違って、かなりリズムにスタンダード入ってます。で、当然、メロディとか、コード進行はフリーなんですが、根底のリズムがスタンダードじゃないか、って感じです。ですから受ける感じがなかなかいい感じに聞こえるのです。同じフリーでも、スタンダードのパラダイムで感動出来るというのか・・・・?
ゴールデンサークル6もこのCDのこのレビューページを開かなければ聞く事もなかったかもしれないと思うと、やはりWebページを作って、人に伝える努力というのは無駄にはならないなぁ、という感じであります。
このアルバムの基本的な感じとしては、ベース、ドラム、サックス、全てあるオスティナートを構成していて、それぞれ自分の担当でアドリブしまくっている感じなんですが、自分のキープしているリズムが非常にタイトで、しかも美しい。しかも機械的にキープしているのではなく、非常にスイングしているというのか、有機的に揺らいでいます。その揺らぎが非常に気持良い。ちょっとかなり地味ですが、自分にはヒットしました。:-)
達者です、J.F.Jenny-Clark(bass)
はっきり言ってそれに尽きるのですが、やはり上手いです。このJenny-Clarkというベーシスト。富樫さんのアルバムで、自分が一番ヒットするのはベースラインが強力な時ですね。で、このJenny-Clarkすごいいい感じです。J.J.Spritsのラインの井野さんとか、DENON時代の翠川さんとかも達者ですがなんというか、「まるで鈴木勲のようだ」というのかなんというか・・・
「風紋」なんて凄いですよ。(いや、その他の曲もグッドですが)これ、佐藤允彦さんの曲だから、スピリチュアルネイチャーを佐藤さんがアレンジして再演ってのは非常に引かれるものがあるんですがね。
全般にわたって「ソング・フォー・マイセルフ」とは違って、非常にフリー的にスイングしている佐藤/富樫のラインをクラークが支えている、って感じですが、良いですね。山下洋輔のピアノとはまた違った構造のスイングするピアノに、富樫さんもばりばりタイコ叩いています。
こういう元気なタイコが欲しかったんだよ、俺は。
個人的に悔やんでも悔やみきれないのは、同じJ.F.Jenny-Clarkをフィーチャーした、「Autum In Pari」というアルバムを
子供が齧って聞けないのだー!(号泣)
皆さま、子供にはご注意を(号泣)
リッチー・バイラーク(p)と富樫雅彦(prec)とのディオで、ゴールデン・サークル6を作ったスタジオEMACのレコード部門TrialRecordの第1作め。恐ろしいことに、trialレコードって富樫さんのアルバムしか出していない、正にすんばらしいレーベルであります。通販もしているので是非:-)
またリッチー・バイラーク自体は大変優れたピアニストなんですが、(20年ほど前に日本に来て、富樫さんとDUOをやった事がある)富樫さんと合うくらいのフリーなピアニストがアメリカで20年間生活出来るのかという疑問もあり、そういう下世話な興味もあり、楽しく聞きました。
結論。まったく変わってないぞ、リッチー・バイラーク。
最近WEB評で見た限りだと、ちょっとポップスに振ったスタイルになった風なんですが、ここでは非常に達者にコラボレートしてますね。
ただ、元々20年前のDUOではリッチーの作曲の方が「甘美」でポップスよりの分かりやすいスタイルだったのですが、今は同じでスナァ。だから、カーラ・ブレイの「Ida Lupino」とかいい感じですね。あと、やはりその他のアルバムでも傑作プレイの続出の「Waltz Step」も良いです。(ほんと、Waltz Stepは当たりが多い。本人も意識しているのか、ラストに持ってくる時が多い)アンコール曲と思われる「Sunday Song」も良いですね。
正直、その他の曲は曲想が似ていることもあって、何聞いてもおなじじゃん等と思ったりもするのである。良いプレイですが。:-)
とうとう、再版されました、DENON時代の奴。うれしいなあ。という訳で20年前にさんざん聞いた懐かしの恋人に再会するかのような気持で聞きました。(そう、昔大好きだったのに、再開してがっかり、ってのが恐かった訳ですが)
でも、やはり良いものはいいのだ。うん。
「ターニング・ポイント」の2本のフルート(中川昌三/鈴木重男)の絡みをベースに富樫(perc)、佐藤允彦(p)、豊住(マリンバ)が、かなり押さえた感じで歌います。このフルートの微妙なズレと東洋的な音階はこの当時の富樫さんの作品群で特長的な技ですね。
「ミラー」は正直、あまり良いとは思えなかったですね。というのもあまり表情に変化がなくて一本調子なんで、song for myselfの「フェアリーテイル」みたい、です。
「伝説」では、一転して、速いテンポの富樫さんをバックに、翠川(cell)と中川/鈴木(fl)がフリーで歌ってます。得意なパターンかな。でもこのcellの音は非常に懐かしい。(最近、翠川さん、聞いてないもんですから(^^;)
「香」これで英語題がエッセンスってのは、ちょっと納得いかないなぁ。中川さんのフルートと富樫さんのpercの対話ですね。song for myselfのヘイズの様な味のある作品です。やはり、中川さん、達者ですねぇ。
「風向き」これは富樫夫人の三枝子さんが、ワイングラスに水を入れてそれを撫でて音を出す(これ、たしか楽器名があったと思うのですが、誰か教えて下さい)ちょっとソリーナぽい音をバックに、富樫、豊住、横山のパーカッションが対話しています。ストイックないい作品だと思います。
「焚火」アルトサックスの鈴木/中川とパーカッション軍団、佐藤のピアノとまるで、ターニングポイントの対称となる曲のように激しくアグレッシブに展開していきます。
スピリチュアルネイチャーの興奮醒めやらぬ直後、富樫さんはDENONレーベルと独占契約を結んで後、その第1段としてリリースされました。面子は、スピリチュアルネイチャーとほぼ同じで、宮田英夫という方が、ナベサダの代わりに入っているだけです。当然、スピリチュアルネイチャーと同じ方向性で、禁欲的に(つまりあまりフリーな即興は影を潜めて)コード進行の元、進んでいきます。
ここでも富樫さんの作曲家として、指揮者として、手腕を遺憾なく発揮しています。フルート三本のメロディラインにベースとパーカッションが彩りを添えてオスティナートを構成して、セロと富樫さんのパーカッションが歌いまくるという感じですね。そして、それぞれのパートで、フリーな即興が入るという感じで、スピリチャルネイチャーのファンであれば、難なく楽しめると思います。最近ようやくCD化されて、ようやくお進めしやすくなりました。:-)
当時、これを聞いていたのは高校生位の時でありましたが、(トシガバレル:-)結構聞くのが辛かったのですが、今聞くと非常に聞きやすいですね。:-)いやー、この当時の記憶力は凄い。殆ど覚えてます:-)
ただ、スピリチュアルネイチャーが色彩的には春、または、明るい夏だとするとこのアルバムはやはり、色彩的に寒色系という感じでありまして、これがスピリチャルネイチャーと比べ、殆ど同じメンバーであるにもかかわらず、このアルバムの知名度が低い源泉ではないでしょうか。むしろエッセンスの方が演奏としては緊迫感が無い分気楽に聞けるような気がしないでもない。こちらはむしろ正座して聞かないと音楽に負けてしまうような気迫があります。
富樫雅彦(ds)/中川昌三(fl,s.sax)/翠川敬基(cell,bass)のトリオの構成。スピリチュアルネイチャーの大成功によって、ビッグバンド(但しフリージャズ)のコンダクター的な評価が固まりつつあった、当時の富樫さんにとって、これはインプロバイザーとしての自己に立ち返るようなアルバムでしょう。トリオで、基本的な構造を決めた後、自由に3者が即興をするスタイルで翠川さんのベースがバリバリ歌っています。富樫さんも楽しそうにタイコ叩いてますね。第1曲目の「ワンダーバード」なんて、凄いっすよ。この当時構成的な(結構かっちりとした台本の中で、フリーの即興部分も時間が決まっているような)スタイルから、よりインプロバイズ中心のスタイルへの回帰があります。でも、今のスタイルからみると、皆さま随分かっちりとしたアドリブですねぇ。なんか凄く聞きやすいのですが、どうしたんだろう。昔は非常に聞くのがしんどかったんですけどねぇ。
2曲目が「パッシング」で、ベースのオスティナートをバックにフルートがメロディアスに歌っています。富樫さんのパーカッションもバックに専念しているかのように、タムタムッぽい音でオスティナート風に叩いています。
3曲目が「バラード」で、中川さんのサックスを全面的にフィーチャーした作品。どうでもいいけど、俺、中川さんって元々クラシック畑の人のはずと信じていて、なのに、なぜフリージャズを吹いているのか不思議なんです。やっぱ現代音楽の流れから来ているんでしょうか。スローテンポでちょっとヘイズぽい感じです。個人的には水準以上だし、不満はないが、他の3曲がバリバリする曲なんで、ちょっとそぐわない気もしますが。でもこれだけ取り出したら、いい感じなんですが
最後に「プレイング・ビート」サックス、ベースの順に明るくフリーにインプロバイズして行きます。うーむ。こんなに明るかった?なんか不思議に明るい気がするな。凄い激しくビートが刻まれて、凄いいい感じ。聞く人は選ぶけど、いいですね、これ。
鈴木勲(b)市川秀男(p)と組んだスタンダード集をメインに奏でる(奏でるっていう表現がぴったりな)「the trinity」というユニットでの第2集です。残念ながら、第1集はCD化されていない様ですが、例の2000/06/30のコンサートに合わせて再発されたようです、こっちだけ。多分第1集はオリジナルが結構多くていまいち万人受けしない、という事からCD化されなかったのか(^^;)
ベースを奏でるのがあの陽光の鈴木勲さんですから、スタンダードをやっていても、アルコ奏法のベースの鳴きが微妙に東洋的にずれていて、一瞬「これチューニングが合って無いんじゃ」と思うのですがちょっと聞き込むとこのずれが気持ちよい、不思議なセンスであります。
一曲目は「smile」モダンタイムズの愛のテーマっすね。これがアルコのベースラインにさざ波の様にピアノとマレットがからみます。とってもロマンチックですよー。
2曲目の「オール・シングス・ユー・アー」は出だしこそ1曲目と曲想は同じなんですが、中盤から見事にスイングするピアノをリズムセクションがサポートしてますぜ、旦那。しかもやたらめったらリズムセクションが自己主張している(笑い)これが非常に気持いいんですね。
3曲目の「エブリシング・ハップンズ・トゥ・ミー」はごくスタンダードにブラシなハイハットのパーカッションとベースをバックに、リリカルにピアノが歌います。非常にスタンダードな印象の1曲。
4曲目「ウィロー・ウィープ・フォー・ミー」はいきなりピッコロ・ベースのピッキングで始まり、ブラシなハイハットをバックに、ピッコロベースとピアノが歌いまくってますぜ。
5曲目は「プア・バタフライ」で蝶々夫人ですな。軽快に軽く歌ってます。
6曲目は「TRUE LOVE」で、これはとうとうスタンダードで我慢できなかったらしくて、フリーにとうとう走ってますなぁ。別に悪い作品じゃないけど別にびっくりするほど凄い訳でもないし、結構浮いてます。正直言って。鈴木さんのベースは 結構イケてますけど。
7曲目は「イッツマジック」最後に「マイ・シップ」と続きます。この辺はやはりスタンダードに走っていますね。
富樫さん、本来の味とはちょっと違いますが、素直に聞ける素晴らしいアルバムだと思います。
ゲーリーピーコック(b),佐藤允彦(p)、富樫雅彦(perc)の三者でユニットを組んだWAVE三部作、の第一作め、「WAVE」です。(ややこしい?)
ゲイリー・ピーコック自体もともと優れたオールラウンドなベーシシストですけれど、ここでは日本を代表するフリージャズのベテラン(正直フリーオンリーな人は富樫さんだけで、よく食っていけるよなぁ。)と非常にハイレベルな演奏を繰り広げます。印象をひと言で言うと「清洌」って感じでしょうか。フリーな演奏の筈なのに、なぜかキッチリしている感触です。これはやっぱりベースのリズムがキッチリとキープしているからななんでしょうか?識者の見解を待つ。
富樫さんが非常にゲイリー・ピーコックを敬愛しているのが分かるのが「ハロー・ドン・チェリー」と「スピリチュアル・ネイチャー」を持ってきているのがその証拠。これ、本人にも大切な曲らしくて、殆ど、ドン・チェリーとゲイリー・ピーコック以外に演奏してないんじゃないでしょうか。きっと本人も愛着のあるナンバーなんでしょうね。この他には私の記憶が確かなら、後、「ブラ・ブラ」でドン・チェリーと演奏した位じゃないでしょうか?後、今もレパートリーに入れている、「2.5サイクル」もこれが最初かな。
この「スピリチュアル・ネイチャー」も必見でしょう、ファンとしては。確かにこれも名演奏ですぜ。歌ってます。ベースが。
ところで、「スピリチュアル・ネイチャー」の作曲は1974年にドン・チェリーが来日した時に生まれた、と富樫さんがライナーでいっていますケド、この辺の経緯を知っている人いませんか?
ゲーリーピーコック(b),佐藤允彦(p)、富樫雅彦(perc)で組むユニットWAVEの2作目、「WAVE2」です。本作はWAVE1のディレクターが富樫雅彦であるように、ゲーリー・ピーコックがディレクターです。(作曲も、ですね。)
一曲目の「FEISTY-WON」から軽快に割と軽い色調でスタートして皆さんでフリーしまくってます:-)思うに、この色調は正しくピーコックが作ったもので、明らかに富樫/佐藤の作り出す色調と違います。多分ピーコック自体はアメリカ系だと思いますけど「フランス」っぽい感じでしょうか。なんか佐藤さんのピアノが非常に「イイ」感じで奏でてますね。一転して「sync」はなんかしんみりとして緊迫感のあるタイトな演奏。
しかし、以後の3曲「BOOGIE WOO」「NO NOH」「SONG FOR PEDRO」なんてメロディは確かにフリーっぽいですが、アドリブの質は間違いなくスタンダード。このノリが後日「GOLDEN CIRCLE6」あたりに引き継がれている感じではありますなぁ。
「MACH BAWP」「FUTRUE THIS」も基本線はスタンダードでしょう。そういう意味ではゲーリー・ピーコックも富樫さんも佐藤さんもスタンダードのイディオムをしっかりと理解した上でのフリーなんですね。
ゲーリーピーコック(b),佐藤允彦(p)、富樫雅彦(perc)で組むユニットWAVEの3作目、「WAVE3」ディレクターは佐藤允彦。1988年の東京ミュージックジョイでのオーケストラとのライブ演奏を核にしております。
勿論3者のみのコラボレートもあり。この3者のみのコラボレートは東京ミュージックジョイでのものかどうか、よくわからんちんなんであります。
最初の3曲は三人のコラボレートで「WINDWORD」「NAGI」「WHITE CAPS」とちょっと現代音楽っぽいピアノに確たるベースがからんで、富樫さんはサポートに徹している、っていう感じでしょうか。特に控えめにタイトにベースが核を刻んでいますね。何度も言っていますが、音程・ハーモニーとしてはフリーなんですが、なんかノリがスタンダードというかビバップっぽいんですよね。そういえばむかーし、エリックドルフィーが難解だーなんて思っていましたけど、今聞くと別になんて事はないんですよね。フツーのジャズに聞こえたりする。そういう意味で、あんまり(高校生の時に思っていたほど)フリーって感じじゃないですねぇ・・・
で、問題の4曲目、新日本フィルハーモニーとのコラボレート「コンチェルト・フォー・ザ・ウェイブ3&オーケストラ」(そのままやん)ですけど、これはスコアを真面目に書ける佐藤さんならではの作品ではないでしょうか。いや、別に他の2人が書けない訳じゃないでしょうけど10人以上の規模でのスコアを書けるのはやはり佐藤さん以外にできないでしょうね。一度富樫さん、N響とのコラボレートをやったことがあるから書けない、って事はないんでしょうけど。
で、でだしはフツーの現代音楽っす。で、テーマに沿ってちょっとづつ3人がからんでから、アドリブ、テーマ再臨、アドリブって感じでどうしてもオーケストラがアドリブ出来ませんから、あるテーマを軸にオーケストラがオスティナートを担当して、という構成になってしまうのです。という訳であんまりドライブ感が強いとは言えません。ただ、オーケストラは合奏ですから、どうしても軽い感じが出にくい訳ですが、ここではよく曲の構成を考えてスピード感を出していると思うのです。なかなかいい感じでは無いでしょうか。意外にマッチしています。
ただ作品としては全く文句が付けようが無いのですが、Jazz作品としてみるとどうなのかなぁ。アドリブであんまり爆走出来ない作品ってのは音楽作品として上でもJazzとしてはどうなんじゃい、とへそまがりんな私としては思うのでありますよ。
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