リビングに入ると、スパイクとジェットがマジマジとアタシの顔を見つめる。
「ひゃにょ、しょにょめひゃ?!(何よ、その目は?!)」
洗濯バサミで挟まれたような口調でアタシが問うと、2人はププププッと吹き出して、
「わ〜はははははははははっ」
お腹を抱えて笑った。
「こりゃ、面白い」
スパイクが涙を浮かべて笑い、
「これじゃまるで妖怪だ」
ジェットも大口を開けて笑った。
確かに、アタシの顔はガキンチョが投げつけたタバスコ入りのボールで、両目どころか、唇までも腫れ上がって、まるでタラコ唇のお岩さんのようだった。
翌日、いつもの時間帯に『BIG SHOT』が流れる。
「アミーゴ!太陽系30万の賞金稼ぎのみんな、『BIG SHOT』の時間だ。昨日放送の賞金首の最新情報だ」
「え〜、なになにパンチ?」
「昨日、火星のチャイナタウンにあるコンドウ宝石店で突如現れ、店内の宝石をゴッソリ盗んだそうだ。被害総額は2億6000万ウーロン」
「すっご〜い!」
「しかも賞金首は自ら『ロケット団』と名乗っているそうだ」
「うっそ〜、まるで『ポケモン』みたい!」
「そこでBIG CHANCE!コンドウ宝石店から懸賞金を出してくれるそうだ」
「で、いくらなの?」
「開けてビックリ、聞いてビックリの5000万ウーロン!」
「すっご〜い!」
「というわけで、今日の放送はここまで!」
「みんな〜、がんばってね」
「冗談じゃないわ!」
アタシはテーブルをたたきつけた。スパイクとジェットが目を丸くした。
「そんなにあの賞金首が気になるのか?」
ジェットが問うと、
「あったりまえでしょう?あのガキンチョからオバサンよばりされた上に、この美しいお顔にタバスコをかけたんだもの。こうなったら、ガキンチョを取っ捕まえて、お尻ペンペンしてやるわよ!」
「よく言うよ。見た目より長生きしているくせに・・・」
スパイクがサラリと言うと、アタシはハッとした。そりゃアタシ、見た目は23才なんだけど、実際は・・・。「あっ、ジェット。ヘソクリ貸してくんない?」
「そんなのあるわけねえだろう?」
「部屋の一番の奥の盆栽の下」
ジェットがハッとして、
「おい、何で知ってるんだ?!」
「こうなったら目には目を、歯には歯をよ!」
作/平安調美人