わずかな金額だったが、ジェットのヘソクリを持って、レッドテイルに乗り込もうとした、その時に、
「おでかけさん、どこへいくの?」
いつものように、エドがヒョコッと顔を出した。
「決まってるでしょ?タバスコを買いに、スーパーに行くって」
「『ロケットだん』についてのじょうほう、にゅうしゅできたよ」
「それ、ほんと?だったら、いいもの買ってあげるから、教えてよ」
エドをゆらしながら、アタシは猫撫で声で言った。
それからエドをレッドテイルの上に縛りつけて、スーパーまで突進した。
そこでタバスコとミネラルウォーターと、プリングルズのポテトチップスを買ってきた。
エドが徹夜がかりで、入手した情報は次の通り。
被害にあっている場所は、火星に限定されてあって、しかも半径1キロメートルの範囲でしか及んでいないところからみれば、犯人は子供と断定できる。まあ、昨日の事件の手口は何て子供だましなんだろうと思っていたことだし、それに引っ掛かるアタシを含む大人達も大人達だよね。火星の警察での家出人の捜索願のデータもアクセスを試みた結果、それらしきデータがわかった。
1カ月前に、動物サーカスの花形スターが今年の公演直前に失踪していて、そのまま行方知らずになってしまった。その花形スターは、何と人間の言葉を話せる天才猫だった。
そういえば、あのガキンチョのもとにいるあの猫も、確かに人間の言葉を話していたっけ?
エドがアクセスしたデータが本当だとすれば、あの動物サーカスの評判はガタオチ同然のダメージを受けるに違いない。だから、ISSPが1カ月間も事件に関しては非公開になっていたのよね。警察もコスいこと。
「おかわり!」
エドがポテトチップスを空にしてしまうと、すぐにおかわりを要求する。
「金はないわよ」
アタシが冷たく言い放すと、エドが風船のようにふくれた。
「そんなことより、もしアンタが『ロケット団』の一員だったら、どんな行動を起こす?」
「エドはね〜、へんそう!」
「変装って、あの子供だましバレバレの変装?」
アタシが右の親指で後ろの方向に動かすと、変なパフォーマンスが行われていた。
「できたて飲むか?フジワラノリカ」
フェロモンムンムンの女が水しぶきを浴びながら、カンチューハイ片手に街を練り歩いている。その後ろには、黒子の格好で水しぶきを出している。
また、あのガキンチョねとアタシは確信した。というより、どっからみても子供だましバレバレじゃない?アタシはガキンチョが練り歩こうとする方向の途中に、わざと右足を前に出した。
案の定、ガキンチョたちがステンと転んだ。
「何してんの、オバサン!」
相手が叫ぶと、
「何だかんだと聞かれたら・・・」
アタシがそういうと、
「何だかんだと聞かれたら・・・」
「答えてあげるが世の情け」
ガキンチョがつい、立ち上がってきた。
「世界の破壊を防ぐため・・・」
「世界の平和を守るため」
「愛と真実の悪を貫く・・・」
「ラブリー・チャーミーな敵役」
「ムサシ!」
「コジロウ!」
「銀河をかける『ロケット団』の2人には・・・」
「ホワイトホール、白い明日が待っているぜ!」
そして、ガキンチョの足元で猫がポーズをとって、
「ニャニャ〜ンてニャ!」
アタシは呆れ返った。本当にノリやすいガキンチョだわ。
そんな場合じゃない!
アタシはガキンチョに銃をつきつけた。
作/平安調美人