暗い。目の前が真っ暗だ。
ここは天国か?地獄か?それとも夢なのか?
そうだ。俺は醒めない夢に迷い込んでしまった。
だけどもういい。俺は一度死んだ。女に殺されて・・・。
「ジュリア、この仕事(ヤマ)を終えたら、俺は組織を抜ける。一緒についていくか?」
「あなた、殺されるわ」
「死んだことにするのさ」
「私は・・・一緒には、行けない」
「この世界から抜け出すんだ」
それでもためらうジュリアに俺はチケットを差し出した。
「そしてどうするの?」
「どっかで自由に暮らすだけさ。夢でも見るようにな・・・」
しかし、待ち合わせに指定していたあの場所、あの時間に、ジュリアはこなかった。そのかわりに、長老の使いか、ビシャスの差し金か、どちらもわからないが、追っ手が迫ってきた。
だが、相手は女だけに、手加減してしまった。それが甘かった。相手は容赦なく俺を打ちのめす。俺はとっさに銃を撃つ。相手の心臓に直撃して、倒れる。
「これで・・・自由になれると・・・思うな・・・」
女は事切れた。
体が動かない・・・。こんな時に、ジュリアが唄っていた子守歌を思い浮かべながら。
もう一度、唄ってくれ・・・。
目が醒めた。体が包帯で巻かれて全然動かない。目の前には跳ねっ返りの女が唄っていた。
そうだ、あの時、ビシャスと対決して、大怪我を負っていたっけ。
「アンタが負傷して、三日三晩も眠り続けて、心配してやったんだからありがたいと思いなさいよ」
よくいうよ。原因の半分はアンタだ。
俺は一言つぶやいた。女はわからなかったのか、耳を傾く。
「オンチ」
女は怒って、羽根枕でぶつけた。
やっぱり夢じゃない。ってことは、俺はまた死に損ねたんだ。
ヒラヒラと舞う羽根を気遣いながら、額に何かが乗せてあるのを気付いて、手を取った。
スペードのエースのカードだった。その時のカードが悪魔に見えた。
俺って、何て悪運が強いのか。
作/平安調美人