プリン賛歌(その6)

 何故、ジェットが怒っているかといえば、次の通り。
 スパイクがV・Tと共に連れてきたマリアンナを自室に寝かせから、台所に移った。
 肉なしチンジャオロースーを作り、皿を盛りつけてからリビングに置いた。
 それから、カップにインスタントスープの素を開けて、熱湯に注いでから、自室に向かうと、
「きゃああああ!」
 目が覚めたマリアンナが悲鳴を上げて、
「ハゲはいや、ハゲはいや!」
 足をふらついたままで、逃げていく。
 ジェットが追い掛けると、それでもマリアンナは逃げ続ける。
 それで、とうとうジェットは激怒した。
 台所に向かって、ブリキのバケツに水を張り始めたという訳である。

「じゃ、毎日毎日おまえが作って持ってくる弁当は、あの父親が作ってきたやつというのか?」
「パパが作ったもののどこが悪いのよ、このバイキン!」
 リビングではレオナルドとマリアンナとの痴話ゲンカが続いている。
 時間がたつにつれて、次第に激しさが増していく
 その時までにいたエドは、ブリッジでアインを枕にして寝ている。
 都合が悪い時はこのような行動が一番と考えているのかは知らないけど、枕にされたアインは迷惑そう。

「ねえ、あの二人、何してるの?」
 フェイが診療所から帰ってきて、台所の前にいるスパイクとV・Tに声を掛けた。
「あっ!」
 フェイが目の前の二人を見て、
「あの二人って、もしかして?」
「そのもしかしてなんだぜ」
 スパイクが口を開いた。その様子はかなり呆れているようだ。V・Tも無表情を装っているし、ゼロスは飼い主の足元でしっぽを横にパタパタしながら寝ている。
 その時、
「フギャー!!」
 怒ったジェットが台所からやってきて、ゼロスのしっぼを踏みつけた。
 ゼロスが悲鳴を上げた。

「どうして、あなたがこんなボロくてダサい船にいるのよ?!」
「俺は助けてくれと頼んだ覚えはないのに、あの親父が勝手に…」
 熱くなっている痴話ゲンカの最中に、

バッチャーン!!!

 怒り心頭のジェットがバケツの水をぶっかけて、
「お前ら、いい加減にしろっ!!!」
「何なんだよ、水ぶっかけやがって?!」
「ちょームカツくーっ!!」
 ぶっかけられた二人には感謝の一片も見られない。
「どうする、みんな?」
 ジェットの呼び掛けに、スパイクたちは指をポキポキと折り始めた。

 それからスパイクたちは、賞金首の二人を警察を突き付けて、6500万ウーロンを受け取るはずだった。
 しかし、両方の親たちが子供の釈放を交換条件に、賞金を取り下げるようにISSPに要請した為に、受け取れなかった。
 結局獲得した賞金は、スパイクが受け取った9万8000万ウーロンだけだった。
 V・Tは隣室の窓ガラスの弁償金を払い、翌日元の生活に戻った。
「まったく、あの二人につける薬はなかったな。なぁ、ゼロス?」
「ニャーオ」
 V・Tの問いに、ゼロスは「その通りだ」という意味で一言返事した。
 カーステからヘヴィメタルが流れている。
 今日もV・Tは太陽系を駆け抜けていくのであった。

 今日もビバップの食事は粗末なものだった。
 エドのリクエストで、白いご飯に乗っかったしょうゆがけプリンだった。
 スパィクとフェイは落胆して、箸をつけなかった。
「お前らな、自分達が稼いだ金で喰えるだけでも感謝しろよ」
 ジェットはそんな二人に論すると、
「だいたい、プリンにしょうゆをかけて喰う奴はいるか?」
 スパイクが反論する。
「少しはエドを見習え。文句言う奴は出ていけ!」
「けっ」
 スパイクは吐き捨てた。
 そして、エドが空になった茶碗を差し出して、
「おかわり!」
 とみんなを呆れさせた。

  SEE YOU SPACE OKAWARI GIRL...

作/平安調美人

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