おれとエドが、金星の町に降り立った時の出来事だ。
ターバンを巻いた男(おそらくインディアン、つまりインド系)の店の前でエドは叫んだんだ。
「あ〜あ〜あ〜!!」
「おいおい、なんだ?」
「ナンだ〜!」
「ん?それ、なんなんだ?」
「これは、ナンなんだ〜!」
「いや、だから、それはなんなんだって聞いてんだよ。」
「だ〜か〜ら〜、これ、ナンなんだってば〜!」
「だから、なんなんだよ!」
………
「なるほど…これはナンと言うのか。」
おれがようやくわかりかけてきたところにスパイクが両手をいつものさえない洋服のズボンの2つの穴に突っ込みながら、ふてくされたような、妙な猫背でこっちにやって来た。
「ん?なんだそれ?」
「ん?これはナンだ。」
「おい、おれはなんだって聞いてんだよ。」
「だからナンなんだって!」
………
「へぇ、ナンっつーのかぁ。」
スパイクがようやくわかりかけてきたところに、フェイが腰の両側に手をあて、がに股で、便秘が1ヶ月以上続いているかのようなものすごい顔でこっちにやって来た。どうやら負けたらしい。「悪銭身につかず」だ、まったく。
「ん?なにそれ。なんなの?」
おれらは、ため息をついてこう言ってやった。
「お前のゆー通りだよ」
作/りゅういち