リンゴのお話
 ぼくんちの冷蔵庫に入っているリンゴは、 若いころとても凄い冒険をしたそうです。

 むかしむかし、あるところにリンゴ男爵という男がいました。
ある朝、リンゴ男爵がいつものように愛人宅から帰っていると、ゴミ捨て場にダンボールに入った白い子犬がいました。 ダンボールには「誰か拾ってください。」と書かれていました。
リンゴ男爵は「まったくもう。今日は燃えないごみの日だろ。」と思い、子犬を預かってあげることにしました。燃えるゴミの日まで。 リンゴ男爵は子犬に「ポチ」と名前を付けて可愛がるフリをしました。形だけ。
そして、やっぱり燃えるゴミの日にはゴミ捨て場にポチを置いてくる始末。
家に帰ったリンゴ男爵が一人でモノポリーで遊んでいると、「トントン」とドアを叩く音がしました。 リンゴ男爵は「誰か来たのかな… まさか、ポチなのか…(ウザイなぁ)」と思ってドアを開けると、 そこには、近所のおばちゃんが立っていました。
「リンゴさん。困るのよ。捨てるんだったらちゃんとゴミ袋に入れて名前を書いて出してね。」 といって、ポチを置いていきました。
こうしてリンゴ男爵は残されたポチを飼うことになりました。モノポリーの相手として。

そんなわけで今日もぼくんちの冷蔵庫にはリンゴが入っています。


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