この覺書について

經緯

このサイトでは當初,CSSだけを解説し,HTMLについては他所の優れた資料を參照してもらふ積りでゐました。つまり,いまさら二番煎じで解説しても,どうせ半端になるだらうと,自身で高を括つてゐた訣です。しかし最近になつて,自分なりにHTMLを解説したくなりました。

それは,ウェブ技術解説のコミュニティが,HTMLの本來の在り方・メリットを無視した,あまりにもデタラメなもので溢れてゐる事に,しばしば落膽するからです。この覺書は,HTMLの理想とする在り方への理解を推進し,HTMLにおける陷りがちな誤りを是正する意圖があります。

この覺書ではHTML 4について,より理想的なStrictな文書について,そのアクセシビリティについて,その基礎を概説します。

用語

この覺書では,一般に用ゐられる,初心者向けの解説で用ゐられる,俗語・造語を使用しません。また,ある用語を言ひ換へれば,分かり易くなるとも考へません。各用語は,規範的・概念的に正しい用法に從ひます。したがつて讀者は,まづ用語定義から讀み始めてください。

これはHTMLの技術解説における眞意を正確に傳へるためのポリシーであつて,初心者を蔑視してゐる訣ではありません。俗語といふものは,たとひそれが馴染みやすくとも,特定のコミュニティでしか通用しなかつたり,曖昧であつたり,本質を捉へてゐなかつたり,するものです。

ただし各語の定義は,本質的な事柄を簡潔に説明してゐるに過ぎません。更なる詳細について各自で調べる必要があります。

參考

規範的な資料については,當然HTML 4.01 Specificationおよび,その邦譯を參照してゐます。この覺書では,仕樣書で述べられる「しなければならない/必須(must, required, shall)」「してはならない/禁止(must not, shall not)」「すべきである/推奬(should, recommended)」「すべきでない/非推奬(should not)」「してもよい/可能(may, optional)」といつた表現には,必ずしも一致しません。

mustなどは當然「しなければならない」などと表現しますが,shouldなどは,獨斷でmust扱ひにする事があります。

この文書の概説における根本的な理念は,附録:ウェブデザイン關聯リンク集で紹介するサイトに大きく影響されてゐます。

内容

この覺書では,HTML文書の書き方をこれから覺えたいと考へてゐる人,あるいは覺え直したいと考へてゐる人が,最初に學ぶべき基礎的な事柄だけを,概説します。つまり,HTML 4仕樣で提供されるすべての事柄について,網羅的に説明してゐる訣ではありません。

覺書には,アクセシビリティ――讀者の環境や能力を問はず誰もが利用しやすい樣にする――技術の説明も含まれますが,それだけを實践すればよい訣ではありません。ほかにも樣々な工夫が必要です。また,統一的な使ひやすさ,ユーザビリティ技術については,概説してゐません。

更なるHTMLの知識,そのほかのウェブ技術を習得したい人は,附録:ウェブデザイン關聯リンク集を參照してください。

漢字と假名遣

一身上のポリシーから近ごろは,正漢字(大體はJIS第1・第2水準の範圍内)および歴史的假名遣を用ゐてをります。現今「常用漢字」および「現代仮名遣い」は人口に膾炙されてをりますが,私はその "質" といふ面で,疑問を呈して居るのであります。

しかし世人から見れば,讀みづらくなつた,あるいは讀めなくなつた,と嘆いてをられるかもしれません。

特に正漢字を讀めないかたは相當いらつしやるでせうから,略字體に置換するJavaScriptの仕組を用意してをります。これの實行には,各文書にアクセスする際にそのURL末尾に ?jyouyou とクエリーを附けます。(參考:さっぱり風「IEコンテキストメニューセット」

また,リンクを辿つても繼續させるには ?jyouyou_l を用ゐてください。何れも舊い環境では動作しません。

假名遣も置換しますが,かなり好い加減に機械的處理してゐるので,部分的にをかしくなるかもしれません。

參考

FAQ

なぜ流行のXHTMLを解説しないのか?

巷では,XHTMLに移行する人が増えてゐるやうですが,XHTMLは本來,XML應用としての恩惠を受けられなければ,その意味がありません。しかし實際にXML應用として活用できる人は,色々な制約があつたり,スキル上の問題があつて,ごく僅かしかゐません。

たとへば,實裝上の問題としてMSIE 6などがapplication/xhtml+xmlのコンテントタイプに未對應だつたり,あるリソースをXML應用として送出しようと思つてもサーヴァのHTTP應答ヘッダを設定するための權限が與へられてゐなかつたり,様々な問題があります。

一般のエンドユーザは,HTML 4で充分です。文法が整つてゐれば,後からでも容易にXHTML文書へ移行できます。

なぜStrictな作成術を解説するのか?

多くの初心者向けの解説では,直裁的な視覺效果が期待される「タグ」から敎へようとします。たとへば「FONTタグ」や「BRタグ」の類です。しかしこれらはHTMLの本質からすれば,本來,もつとも後囘しに解説すべき類であり,覺えなくてもなんら困りません。

慥かにこれらを用ゐれば,なにも考へずに,從來のワープロ的な發想で文書を作れはします。多くの人は,これを疑ひもなく,簡單で便利であると信じてゐます。しかしHTMLは元來,視覺表現を設計しやすいやうに考へられてはをらず,實際には不便きはまりないのです。

HTML 4 Transitionalの前身であるHTML 3.2仕樣は,ヴェンダの擴張に齒止めをかけるために,その場凌ぎの互換性のために,妥協的に勸告されたものです。つまり,ヴェンダによる身勝手な「目先の便利さ」と「シェアの獲得」を目的としてた慣例をベースにしてゐるのです。

これからHTMLを學ばうとする人は,わざわざ煩しい慣例であるTransitional文書型をあへて選擇する必要はありません。

スタイルシートを使はねばならないのか?

構造化されたStrictな文書は,アクセシビリティなり,SEOなりに有效ですが,なによりも書き手のメンテナンスを少くします。また著者は,視覺表現をスタイルシートに任せておく事によつて,文章の本質を意識するやうになり,結果として文書の完成度を高められます。

著者が自身の文書にスタイルシートを適用してゐる積りがなくとも,HTML適合のウェブブラウザであれば,豫め少なくとも一つのスタイルシートを内藏してゐます。そして,かならず人間が知覺できる表現で情報が傳へられます。これをデフォルト-スタイルシートと呼びます。

したがつてユーザは,適切に構造化されたHTML文書である限りには,著者によるプレゼンテーションの指定が一切なくても,特に困りません。たとひ貧弱なデフォルト-スタイルに不滿があるにしても,ユーザ-スタイルシートの仕組で讀みやすさを向上できる餘地があります。

また著者は,デフォルトに滿足するなら,もしくはプレゼンテーションの一切をユーザに任せるなら,著者スタイルシートを用意する必要はありません。より情報を傳はりやすく,豐かに表現したいと考へるなら,CSSを學んでスタイルシートを設計し,文書に適用して構ひません。

眞面なStrict文書なら,著者とユーザの雙方は,頒布されてゐるスタイルシートを使はせて貰ふ,といふ手段も享受されます。