●ダービー二着馬の法則●

2005年10月31日 加筆修正 2007年9月13日
(これはディープが3冠になった直後に書きました。ハーツはこの時点でまだまだドバイも有馬を勝っていないんですよね;)



 東京優駿…サラブレッドはより速く強い馬を求めて、長い年月にわたり淘汰改良され、人間によって造り出された最高の芸術品とも言われている。競争によって厳しい選択は不断に繰り返されており、世代のチャンピョンを選定するため三歳馬競走の最高峰に位置するのが5大クラシックレースである。わが国のクラシックレースは近代競馬発祥の国イギリスに範をとり、優秀な繁殖用馬の選定のための競走という趣旨からせん馬(去勢馬)の出走を認めていない。(中略)東京優駿競争は、イギリスのダービーに範をとったレースであり、昭和7年4月24日に「東京優駿大競争」のレース名で第一回が、目黒の東京競馬場で施行された。サラブレッドの生産を伴う競馬先進国には必ずダービーに当たる競争が設定されており、ヨーロッパにおける英仏愛ダービー、北米のケンタッキーダービーなどが国際的にも重要な競争として目されている。(引用:JRA レーシングプログラム2004 5 30)


  早速長々と引用しましたが、これが日本ダービーのJRAによる説明です。距離は2400Mで、優先出走権が得られるレースは4つ、「青葉賞」「京都新聞杯」「プリンシパルステークス」「皐月賞」。ダービーは勝つことはおろか、出ることすら名誉とされているレースです。このレースはほかのどのレースよりも重みがあります。ダービーをはじめ、クラシックは馬にとって一生に一度…しかも限られたときにしか挑戦することが許されないレースなのです。それはダービー以外もどれも同じだと思うかもしれませんが、ダービーは何故だか重みが違います。ダービーになると、ファンから生産者、馬主や調教師に騎手まで…競馬関係者目の色が変わるのです。何故でしょう?それはダービーという名が持つ魔力なのかもしれません。

 そのようなダービー馬を2005年から順番に追っていくと「ディープインパクト」「キングカメハメハ」「ネオユニヴァース」…といった名前が挙がります。彼らは間違いなく最高の栄誉を手にしました。
 しかし、光あるところに影がある。それはダービーの栄誉に及ばなかった2着馬の存在です。栄冠までわずかハナだけ及ばないこともあれば、栄誉に果てしなく何馬身も及ばぬ…歯がゆい思いもすれば、果てしなく遠い壁を感じる、それが2位の馬の存在です。
 あなたはダービー2着の馬の名前が思い浮かぶでしょうか?ちょっと考えてみてください…


 ダービーでミホノブルボンの2着に迫ると、菊花賞で三冠の夢を砕き、メジロマックイーンの春天三連覇を阻んだ「ヒットマン」ことライスシャワー。

 調子が上向いてきたと思ったらをチャンスをつかみきれない芦毛馬、「ミスターダービ2着」ことスダホーク。

 マイネルの岡田総帥の思いが詰まった馬、グランパズドリーム。

 これらのダービー二着の馬を調べたところ、それぞれがそれぞれのアツい物語を持つ素晴らしい馬です。しかし、彼らダービー2着馬はある法則の下に生きて、あるカテゴリにそれぞれ分類できることにワタシは気がついてしまったのです。以下にその分類を表で示しましょう。(スダホークからハーツクライまで) なお、名前が太字になっている馬は、GTの勝ち鞍あり。

泣かず飛ばず
名前 主な成績
サニースワロー なし
ボールドエンペラー デイリー杯3才S
悲哀
メジロアルダン 高松宮記念:天皇賞(春)3着 天皇賞(秋)2着
スダホーク 弥生賞 AJCC 京都記念 阪神大賞典 菊花賞2着 天皇賞(春)3着 宝塚記念3着
エアダブリン 青葉賞 ダイヤモンドS ステイヤーズS 宝塚記念3着 菊花賞3着
ナリタトップロード 菊花賞 京都大賞典 阪神大賞典2回 京都記念 弥生賞 きさらぎ賞 天皇賞(秋)2着 天皇賞(春)3着2回 JC3着 皐月賞2着
グランパズドリーム なし
成就
メジロライアン 宝塚記念 弥生賞 日経賞 京都新聞杯:有馬記念2着 菊花賞3着 皐月賞3着
レオダーバン 菊花賞(備考:トーカイテイオー不在) 
エアシャカール 菊花賞 皐月賞
シルクジャスティス 有馬記念 京都4歳特別 京都大賞典
ダンツフレーム 宝塚記念 アーリントンC 新潟大賞典 皐月賞2着 安田記念2着
ジェニュイン 皐月賞 マイルCS 安田記念2着 天皇賞(秋)2着3着 
伝説の名馬
ライスシャワー 天皇賞(春)2回 菊花賞 日経賞 有馬記念3着
ビワハヤヒデ 宝塚記念 天皇賞(春) 菊花賞 オールカマー 京都記念 神戸新聞杯 デイリー3歳S 有馬記念2着 皐月賞2着 朝日杯2着
ダンスインザダーク 菊花賞 京都新聞杯 弥生賞(どこまで強いかわからないので伝説に分類)
シンボリクリスエス 有馬記念2回 天皇賞(秋)2回 青葉賞 神戸新聞杯 JC3着(2回)
ゼンノロブロイ 天皇賞(秋) JC 有馬記念 青葉賞 神戸新聞杯 天皇賞(秋)2着 天皇賞(春)2着 英インターナショナル2着 宝塚記念3着
ハーツクライ ドバイシーマクラシック 有馬記念 京都新聞杯 宝塚記念2着 JC2着

●泣かず飛ばずはそのとおりで、ダービー後に重賞のひとつも勝てない馬です。ダービーはフロックだったのでしょう。ダービー2着にはなってしまったゆえに…「とにかく重賞レースには出るけど…。」程度です。最後はローカルまわりになることも珍しくありません。しかし、この十数年のダービー2着馬を見ても、このような状態に陥る馬は珍しいほうであることにきがつきます。ダービー2着馬はそれなりの実力があるからこそなる!ということがいえるでしょうね。

●悲哀は重賞レースで善戦はする、けれども「強力なライバルがいる(ナリタトップロードに対するオペラオー)」ことや、力が本当に後一歩及ばない。といったことで、トライアルで力を十二分に発揮するけれど本番では強力なライバル馬によって封じ込まれる。そういうタイプが多いです。
 ここにグランパズドリームを入れましたが、これはラフィアンの岡田総帥のエピソードに感動を感じるからです。それは、総帥の父がまだまだご存命中、総帥がどの馬を買っても彼の父は褒めませんでした。ところが当時560万で売りに出されていた馬…後のグランパズドリームを総帥が買ってきたのを見てはじめて相場眼を褒めた。というエピソードが残っています。残念なことにダービーを前に父は没してしまい、父の遺影を持って挑んだダービーはダイナガリバーの2着となりました。ダービーを勝てると確信するも…残念ながらダービー後に故障引退してしまったので、その真の強さはストーリーの中に永遠に生きます。

●成就は大舞台に再び返り咲く、もしくは雪辱を果たすというタイプです。この中で一番象徴的なのが「ライアンが一番強い!」と横山騎手をして言わしめたメジロライアンでしょう。図をみていただければわかるように、ライアンは非常にステップレースには強いのです。しかし、クラシックはことごとく惜敗。有馬記念もオグリキャップに食らいつくも2着が限界。その有馬記念の直線では大川慶次郎氏をして「ライアン!ライアン」と叫ばせました(その声がマイクに拾われているため、レースによっては大川氏の声が入っている)。
 そんなメジロライアンはメジロマックイーンを下してとうとう宝塚記念で勝利します。善戦を繰り返し、とうとう古馬になってノーザンテースト系という晩成の血を開花させて栄冠を手にしました。成就タイプは「距離延長して吉」「成長して吉」というタイプが多いように感じますが…しかしどうも一歩及ばずに善戦で止まっています。
 ジュニュインやエアシャカールのように輝き再びというタイプもいます。また、ダービー二着の後に菊花賞にマイルCSといった距離の幅の広いレースを勝つ傾向にあります。
 クラシックディスタンス、しかも厳しいダービーで実績を残せるということは、長距離でも短距離でもいける底力を持っているということをよく示しています。

●伝説の名馬は連ねる名前を見れば一目瞭然のようにダービーのときは「なぜか負けた」もしくは「成長力不足」「距離が伸びて吉となる」というものです。ゼンノロブロイとシンボリクリスエスは面白い馬で、惜敗癖がついている妙な馬です。しかし、勝てるレースをすれば強いんです(笑)。ロブロイにしろクリスエスにしろ「負けたのは何故?」といわれた馬です。しかしハマれば無類の強さを発揮します。G1勝利を続けるその力は伝説の名馬といっても過言ではありません。ライスシャワーとダンスインザダークは距離が伸びて吉・成長して吉だったといえます。
 ハーツはルメールという名手の登場によって力を100%発揮させられましたね。サイレンススズカと豊の出会い、戸川師とミホノブルボンの出会いのように、運命のめぐりあわせってあるもんですねぇ。

 ご覧になったでしょうか?ダービー二着にはこのような秘密が隠されていたのです。2005年ののダービー二着はインティライミです。このインティライミ、これからどうなるか…これから予想してみるのも楽しいでしょうね。私は…「成就」になると思います。根拠は以下のとおりです。
@スペシャルウイーク産駒で晩成の可能性である。
Aディープインパクトはきっと海外に行く
B世代の交代がある

と、これだけなのですが。ダービー二着馬の行く末を考えるのもよいでしょう。彼らはかなり息の長い活躍をしているのです。みんなからかえって愛される馬たちなのかもしれませんね。


 参考程度に、2006年ダービー2着馬はドリームパスポートは現在歯がゆい成績を残しており、2007年ダービー2着馬アサクサキングスもなかなかの善戦をしています。いまだ現役のインティライミとあわせて、どこまでがんばれるか楽しみですね。


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