塵劫記(じんこうき)

 「塵劫記」は、江戸時代はじめのころにかかれ、そのときの最高の内容をかんたんに説明した算数のはじめに学ぶ教科書だった。
 吉田光由 (1598〜1672)という人がかき,寛永4年(かんえい4ねん) [西暦1627年]に世に出した。今から、およそ370年前のことだ。
 塵劫記には、
 「第六 九九の数の事」
という話もある。
 二年生で学ぶかけ算九九のことだ。
 一のだんから九のだんまで、ぜんぶ出てくるわけではない。
 へー。じゃあ、ない九九もあるの?
 「二二 四」からはじまって、
 2×3=6、3×2=6のようなかける数とかけられる数を入れかえたものは、はぶいてある。
 最後は、「九九 八十一」で終わるのじゃ。
 一のだんはないの?
 そうじゃ。でも、一のだんが書いてあることもあったのだよ。  えっ。『書いてあることもあった。』って、どういうこと。
 実は、塵劫記は、何度も書きかえられたり、○○塵劫記という本が出たりしているんだ。
 寛永4年の本には、一のだんがあったんじゃ。
 さっき話した本は、寛永20年に出された本じゃ。
 寛永20年の本は、いろいろな内容を集めて作られた。
 そして、その後のもとになった本なんだ。
 君たちが、使っている算数の教科書は、いくつかの会社が作っている。それと少しにているかな。
 さて、塵劫記の名前の由来を話してみようか。
 仏教のことばに「塵点劫 (じんてんごう)」とのがある。とてつもなく長い時間のたとえだ。
 たとえば、塵点劫は、わたしたちの世界を10億集めて、これをぜんぶ粉(こな)にして、その粉の一つぶずつを別の世界の一つずつにつけていく。この粉がなくなったとき、その世界をまた粉にして、その粉一つぶずつを一劫として数えたものが塵点劫である。
 塵劫は、塵点劫をかんたんに言った言い方じゃ。だから、塵劫記という名前は、塵劫たっても変わらない真理の書ほんとうの本という意味なんじゃ。
塵劫って、なんかよく分からないけれど、とにかく大変な長い時間なのね。そんな長い時間変わらない算数の教科書が、塵劫記というわけね。
※ 参考、引用文献 塵劫記 吉田光由著 大矢真一校注岩波文庫 吉田光由という人が、とにかく自信を持って書いた本だということがよく分かる。

はじめにもどる  もどる  つぎへ

Copyright (c) 2000 Hideo-Maruyama All Rights Reserved