( 永遠のリング )
「お願いします!!」
ほら、また’ソレ’がきた…。
何故だろう、もしかして「不二周助の幼馴染・のラブレター転送率は100%」とでも
ファンクラブ鉄則にでも載っているのか…乾君のノートじゃあるまいし。
そう、’ソレ’って言うのは’ラブレター’だ。
信じられないかもしれないが、私の下駄箱には至極当然に’不二周助宛’のラブレターが入ってたりする。
登下校時は渡されない方が珍しいぐらいだ…
まぁ奴と言ったら、何でも卒なく笑顔でこなすテニスの天才。
顔は…世間的に見れば良い方なのだと思う。
ほぼ家族のような付き合いなので、見慣れたそれがどうなのかはよくわからない。
「ダメ…ですか?」
「ダメに決まってんじゃん」
か弱い声で聞いてくるその女に即答する。
「で、でも…だって先輩はただの幼馴染なんですよね!? それともやっぱり…」
ただの幼馴染、それは確かに私の言葉だ。
そう言わなければ、所有物の紛失率が下がらなかったし、
事実、そうだ。
おかげでファンクラブを始めとしたイヤガラセはなくなったが、
今度は「ラブレター転送願い」の発生率が上がってしまったのだ…。
「やっぱり…そうなんですね…グス…」
私が遠い目をしているうちに、その子は涙を浮かべ始めた…
ああ、泣かれたって何も出ないよ!!
「あーのさ、なんて言うか、周助は家族みたいなもんだし、だから―」
「か、家族!?」
身体をビクっとさせて叫ぶ彼女…
しまった、もうちょっと言葉を選ぶべきだった…
てか、なんで私はこんな寒い時間に足止めをくらっているのか…
さっさと帰らないと、オカンに怒鳴られ飯抜きでヒカ5も見れないよ!!
「つーわけで、じゃね」
自己完結させ立ち去ろうとする私、しかし彼女が私の腕をぐいっと掴んだ。
…その根性があるなら本人とこ行ってくれ…
「酷いじゃないですか! それでも不二先輩の婚約者なんですか!?」
ヒステリー起こし気味な彼女…
…おひ、待て。
「な、なんで私が周助の――」
「そうやって名前で呼ぶのも実はそういう理由だったですね!! やっぱりただの幼馴染じゃなかったんだ!!」
うわーんっ、と、バカみたいに泣き出す彼女…今日は随分激しい奴に捕まってしまった。
ああ、こんな事ならすんなり受け取ってメモ用紙にでも使っとけば良かった…(極悪)
「あぁ…」
「先輩! 私、誰にも言いませんからッ本当のこと言って下さい!!」
本当のこと、と言われても…(-_-;)
「お願いします!!」
そうしてまた泣き出す彼女…まばらにすれ違っていく人達の目線が痛い…
あぁ…もぅ帰らねばマジやばい…
頭の隅を、ガラスのリングが掠めていった。
失くしてしまった大切なものは、いつだって私を泣かそうとする。たぶん、きっと、永遠に。
それを皮肉るように、私はそれを合理的に利用することにした。
私は先のことなんて考えていなかった…まぁいつもそうなんだけど。
若い子はどうも反発されるとわめき出す、よって今取るべき行動はただ一つ…
相手の望む言葉を言ってやること!!
「ええそうよ!! 実はそうなの!! 周助が誰と付き合おうと関係ないけど! 貴方達に未来はないのよ!!」
言ってやった…私はそう言って彼女の横を走り去った。
そのときは、ただ、夜ご飯とヒカ5のことしか頭になかった…
いつものことですが、短編のつもりが続いてしまいました…不二様出てきてないし(-_-;)。
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